著者 : 秋野ひとみ
さまざまな人々の、さまざまな人生をのせ、夜のなかを列車は走る。北へ向かって-。あたし、工藤由香、菊地薫に招待されて、豪華寝台夜行特急で北海道へと向かうことになったあたしたち。波乱の予感を含みながらも、なんとか無事に列車に乗って数時間後-予想以上の「とんでもないこと」が発生-そのうえ、あたふたするしかないあたしたちを尻目に、列車のなかで殺人が!しかも犯人はまだ車中に。
「8年前に失踪した、兄の婚約者を探して下さい-」雨の中、桜崎探偵事務所を訪れた女の人は思いつめた目をして、そう言ったの。婚約したばかり、幸せの絶頂のさなかに、どうして彼女は消えてしまったの!?あたし、工藤由香。婚約者を殺したと思われているお兄さんの無実をはらすため、依頼を受けたのはいいんだけど-はたして、8年前の事件の謎が解けるのかしら。
ある朝、病院の庭で、首を吊って死んでいるひとりの老婦人が発見された。警察は彼女の死を自殺だと判断した。彼女の主治医も、友人知人も、彼女が重い病気を悲観して、死を選んだと考えた。誰もがそれを自殺と信じて疑わなかった。-たった一人の少年を除いては。あたし、工藤由香。少年の依頼を受けて、半信半疑ながらも、調査を始めたあたしたち。ところが、その少年が命を狙われて…。
あたし、工藤由香。その日、桜崎探偵事務所に現れた依頼人は、とある高校の名門演劇部の部長さん。合宿先で部員が凍死した事件について、詳しく調べてほしいというの。亡くなったのは、仮面劇『雪の女王』で、カイ役をやることになっていた2年生。ところが、調査を始めたあたしたちの前に明らかになったのは、この演劇部では一昨年にもカイ役の部員が凍死しているという、奇怪きわまる事実だった…。
ある裕福な大学教授のお宅で、盗難が相次いだ。ちょっとそのへんに置いてあったお財布などから、少しずつ-ほんの少しずつだけど、たしかにお金を抜きとっている人が家の中にいるという。あたし、工藤由香。桜崎探偵事務所で電話番をすることになったあたしは、圭二郎さんと二人で調査を開始。ところがその晩、教授宅のメイドが一人、突然、死んでしまったの!!いったい、あの家でなにが起きているの。
あたし、工藤由香。高3の受験生。雪山で迷子になったあたしとサキは、怪しげな噂のベールに包まれた恐怖館に、泊まる羽目になってしまったの…。館に集う、曰くありげな客人たち、奇怪な言動をとる女主人。謎は深まるばかりで、怯えるあたしたちはなす術もなく、恐ろしい惨劇の夜を迎えることになるのだった。圭一郎さん、圭二郎さん、早く早く、助けにきて。
あたし、工藤由香。高3の受験生。雪の降りしきるクリスマス・イブの午後、あたしとサキと神也警部の3人、という妙な組み合わせで、新宿へ移動中だったあたしたちのバスが、いきなりバス・ジャックされてしまったの。ロマンチックなはずのクリスマス・イブに、なんと人質にされてしまったあたしたち。バス・ジャック犯をやっつけて、無事に新宿に行けるのかしら…。
あたし、工藤由香。高3の受験生。喫茶店で、偶然耳にした隣のカップルの恐ろしい会話-その夫婦は、銀行強盗か何か、大胆な犯罪を計画中だったの。計画を阻止しようと、あたしたちは乗りだしたのだけれど、夫婦を尾行した加川クンが頭を殴られ、ビルの一室に置き去りに。手がかりらしい手がかりもないまま、犯罪計画遂行の日は、着実に近づいてきて…。あたしたち、無事に事件を解決できるの。
「しんだおかあさんが、むかえにくるよ」幼い少女の予知能力は、はっきりと彼女に告げていた。イオお姉ちゃんが、このまま〈敵〉と戦いつづけるならば、それは非常に奇妙な未来をお姉ちゃんに招き寄せることになると。ついに目の前にその姿を現しはじめた、宿敵S・I・M(シム)。奇怪な因縁の歯車は、今、ゆっくりと回りだした-制服のエスパー少女・イオの戦い。第6弾。
あたし、工藤由香。高3。受験生にとっては、1分1秒が大切だというこんな時期に、またまた事件が持ちこまれてしまったの…。うちの高校の文化祭に出る幽霊を退治してほしいっていう、冗談みたいな依頼なんだ。
真夏の日差しは、透明な炎のように、すべてのものを燃えあがらせていた。コンクリートの壁は白く輝き、木々は濃い影を埃っぽい地面に落としていた。そこにふと響いた、かすかな笑い声。(くすくすくす)風のあいだに紛れてしまって、気のせいにしか思えなかったけれど-それは、悪夢の迷宮の門を開く、残酷な笑い声だったのだ。制服のエスパー少女・イオの戦い。第5弾。
あたし工藤由香。高3の受験生。ある日の放課後、あたしたちは見知らぬ人物から、突然、探偵の仕事を依頼されたの。が、仕事の内容を聞かされて、二度びっくり。どんなことが起こったのか、事件そのものがまったくわからない事件を、解決してほしいというの。あたしたちは、謎の人物の指示どおり、手がかりが隠されているらしいバス・ツアーに出かけることになったんだ…。
あたし、横森衣織。高校1年生。あたしの中に眠っているはずの超能力を目覚めさせるため、あたしはクラスメイトの周防くんから、秘密の特訓を受けていたの。ところが、その決定的瞬間を、誰かに盗み撮りされてしまったんだ。やがて脅迫状が手元に舞い込み、時を経ずして、思いもよらなかったような事実が、ゆっくりとその姿を現しはじめる。制服のエスパー少女・イオの戦い。第3弾。
その日。6月最初の月曜日は、1週間くらい降り続いた雨がようやくやんだ日で。授業が終わると、あたしとサキは一目散に教室を駆けだしたものだった。あたし、工藤由香。高3。そのときには、久しぶりの寄り道の楽しさに、今日、お見舞いにいく中野和美ちゃんのことも、すっかり忘れていたほど。もちろん、あたしたちは、それを、ただのお見舞いと思っていたけれど、あたしたちの場合、それじゃすまなかったりするの…。
「おれ、明日が誕生日なんだよ」といったのは、クラスメイトの横館クンだった。あたしとサキは教室の窓際にいて、いつものように、くだらないむだ話をしていたところだった。あたし、工藤由香。高3。事件がようやく大団円を迎えたいま考えてみると、2週間前の昼休みに横館クンがいったひと言が、あの嵐のようなドタバタ騒ぎ“シンデレラ宝石盗難事件”の始まりだった…。
あたし、藍沢左記子。臨時のお手伝いさん(のフリをした、しかし、その実体は、篠田晴明氏の正体を探りに忍びこんだ探偵さん)。あたしはまだ、書斎のワープロの前に、座りこんだまま、茫然としていた。その時、足音と話し声が聞こえ、とっさにあたしは、作りつけの本棚のすぐ前にあるソファーと、本棚のあいだに飛びこんだの…。入ってきた人たちは、一所懸命話しこんでいて。話し声からすると、両方との男の人。誰?誰だろう。
「あなたたちを名探偵に見込んで相談があるの」と、3年生の河井さんはいったの。あたし、工藤由香。高校2年生。あたしとサキは授業が終わったあとも、なんだか帰りそびれて、窓際でぐずぐずしていたところ。河井さんが差し出したのは1通の封筒。その中には、薄いブルーの便箋に書かれた、きれいな文のラブレターが入っていた。でも、それを書いた中平まなみさんは、すでに亡くなっていたの…。