制作・出演 : グスタフ・レオンハルト
14曲のソナタを収めているが、うち10曲が同じ調性をもつ5組のペアーとして解釈され演奏されているので、トラック数は9になっている。ペアーとして続けて演奏する場合の一貫性ないしは性格の描き分けに、とくにレオンハルトの優れた技量が見出される。
ルイ15世治下の爛熟した宮廷で生まれた、舞曲の形式を借りたキャラクター・ピースを、フランス的な軽みを生かしつつ荘重に弾いている。左右の手のずらしぐあいや微妙に伸縮する拍に、当時45歳の大御所ならではの風格がただよう。鍋島元子の解説も読ませる。
レオンハルトが指揮したクイケン兄弟も加わる古楽合奏団は、先鋭な音楽で知られているけれど、1972年創設の翌年、もっとも初期の録音がリュリだったのはおもしろい。その名称はリュリの率いた楽団の名なのだから。華麗で透き通るほどに美しい演奏だ。
「楽譜を見ただけでは興味深いものと思えない」(G.サドラー)のに音にしてみるとめっぽう面白いのがモンドンヴィル(1711〜72)の特質。存命中はラモーと双璧を成した才人の作をレオンハルトが律義に細心の気配りをもって音にしたら、めっぽう面白い。
レオンハルト40歳前後の録音。1曲を除いて、すべてフランスの作品で構成したアルバムは、のっけのクープランから明るい色彩。フランスではなくオランダのオルガンを使用しながら、フランス風。得意のラモーのクラヴサン曲も溌剌として素晴らしい。
選曲も演奏も、この楽器を知り尽くしたレオンハルトならでは。17世紀ドイツ鍵盤音楽の発展に尽くした二人の作品を、表層的な興味ではなく、音楽的な見地から紡いだヒューマンかつ求心性あふれる演奏だ。時代特有の様式美と舞曲の響きを堪能させる1枚。
テレマン・ファンはもちろん大喜びだろうし、“テレマンは所詮職人さ”などと決めつけているバッハ・ファンにもぜひ聴いていただきたい。クイケン3兄弟&レオンハルトという黄金カルテットのまあ上手いこと。楽しく、そして味わい深い音楽世界だ。
制作・出演
エトヴァルト・ヴィッセンブルク / グスタフ・レオンハルト / シギスヴァルト・クイケン / ルネ・ヤーコプス / ルーシー・ファン・ダール / ローズ / ヴィーラント・クイケン / 佐藤豊彦これは大音量で聴きたい。教会内(アムステルダムのフランス改革派教会)を巻くような音響と、ちょっと野趣味のある音色が特徴のオルガン、そしてレオンハルトの瑞々しい演奏によって、オルガンの醍醐味を十全に引き出した印象。演目が渋いのが多少難。
レオンハルトのソロがすばらしい。高貴な音色と、彼独特の揺れるフレーズとテンポ。バックのオケは名手揃い。(2)は珍曲の部類だが、これはびっくりの佳作で、特に第1楽章と終楽章はこの時代のシュトルム・ウント・ドランク様式の見本のような響きだ。
堅固な構築を持つストイックなバッハ。従来の演奏に比べ、力強いうえに生真面目なので、ちょっと躊躇するかもしれないが、彼らの抜群の集中力には引き込まれてしまう。レオンハルトのバッハに対する深い造詣が見事に結晶化した演奏といえるだろう。
オリジナル楽器を用い、小人数での演奏によるブランデンブルク協奏曲全集。指揮兼チェンバロのレオンハルトをはじめ、クイケン、ビルスマ、ブリュッヘンらの名手が揃い、各々のソロやデュオにも魅力豊かな場面が散見され、優雅で洗練された演奏が続く。