1997年12月12日発売
最新のベーレンライター・クリティカル・エディションに拠って、ベルギーの古楽演奏の最先端を聴かせてくれる充実のシリーズもこれで完結。シューベルトの交響曲の一つひとつが独自の輝きを放つ充実の内容で、“優しさ”がふわりと加わっている。★
速い速い。ノリントン盤も快速調だったが、インマゼールが採った第1楽章冒頭テンポはほとんどモデラート。シューベルトの前衛性を前面に出した解釈だけに耳慣れないフレージングも頻出し、とても“天国的”になんて聴いちゃいられない。繰り返し励行。
先月のコンチェルトに続いてのシューマン。こちらもやはりその瞬間瞬間の音楽をよく歌っている。その意味では過不足なく満足して聴き終わることができる。ただし、シューマンの複雑さ、暗さ、やるせない情熱が色濃い演奏ではない。ちょっと薄口。
テレマン・ファンはもちろん大喜びだろうし、“テレマンは所詮職人さ”などと決めつけているバッハ・ファンにもぜひ聴いていただきたい。クイケン3兄弟&レオンハルトという黄金カルテットのまあ上手いこと。楽しく、そして味わい深い音楽世界だ。
装飾法を駆使して自在に奏していたバロック期にテレマンは、元の旋律と装飾つきを併記し、音楽的な装飾法を伝えようとした。その「装飾のための12の範例つきソナタ」の初全集盤。ブリュッヘンを中心にバロック演奏の達人たちが清らな澄んだ響きで聴かせる。
これは大音量で聴きたい。教会内(アムステルダムのフランス改革派教会)を巻くような音響と、ちょっと野趣味のある音色が特徴のオルガン、そしてレオンハルトの瑞々しい演奏によって、オルガンの醍醐味を十全に引き出した印象。演目が渋いのが多少難。
レオンハルトのソロがすばらしい。高貴な音色と、彼独特の揺れるフレーズとテンポ。バックのオケは名手揃い。(2)は珍曲の部類だが、これはびっくりの佳作で、特に第1楽章と終楽章はこの時代のシュトルム・ウント・ドランク様式の見本のような響きだ。
堅固な構築を持つストイックなバッハ。従来の演奏に比べ、力強いうえに生真面目なので、ちょっと躊躇するかもしれないが、彼らの抜群の集中力には引き込まれてしまう。レオンハルトのバッハに対する深い造詣が見事に結晶化した演奏といえるだろう。