制作・出演 : スクリャービン
スクリャービンは繊細さとキラキラと輝くような音色を実にうまく対比させている。メトネルは柔らかくしっとりとした音色が忘れがたいし、ストラヴィンスキーでは凛々しく引き締まった表情と精悍さが印象的。円熟した、本当に立派なピアノであると思う。
スクリャービンの娘を妻にしたから、というわけでもないだろうが、ソフロニツキー(1901〜61)は生涯にわたって彼の作品を弾き続けたという。58年モスクワ音楽院でのこのライヴは、ソナタ4曲が聴ける貴重な一枚。集中力と求心力の高い、素晴らしい演奏だ。
あのリヒテルをして“神”と呼ばしめたソフロニツキー。彼のスクリャービン演奏はまさにその証となりうるだろう。テクニックのキレやタッチの強靭さ、アクの強い表現はどこかホロヴィッツを彷彿させる。否、それ以上に悪魔的な魅力を発散させる演奏だ。
スクリャービンのピアノ・ソナタ全曲、24の前奏曲、その他小品を収めた3枚組。2002年から2004年にかけて、彩の国さいたま芸術劇場でのリサイタル・シリーズと並行して、同劇場でレコーディングされた。このスクリャービンでも、小山の演奏は、安定感があり、色彩に富み、ピアノという楽器の魅力を最大限に引き出している。スクリャービンの初期のロマンティックなピアニズムから後期の神秘主義的で官能的な響きまでを見事に表現している。小山実稚恵にとってのモニュメンタルなアルバムといえよう。
日本ではその死後、注目を集めるようになったヴェデルニコフ。ここでは生前の彼のお気に入りの録音だったスクリャービンとプロコフィエフが聴ける。確固たる自信に裏付けされ背筋のピンと伸びた演奏は素晴らしい。彼の編曲したストラヴィンスキーも聴きごたえ十分。
リヒテルとギレリスの師として高名なネイガウスのピアニズムは、プロフェッサー・タイプの手堅いものとは、およそ正反対である。即興的な表情から詩的な味わいが花開くスクリャービン、めまぐるしく気分が変転するプロコフィエフなど、いずれも名演だ。
古雅なピアノの響きとダイナミックな演奏が奇妙な調和を奏でる不思議な音世界であり、AMラジオを聴くような放送録音の音質がそうした雰囲気をさらに助長する。リヒテル、ギレリスからアファナシェフの系譜でピアノ演奏を捉える場合、きわめて示唆に富む。