制作・出演 : ドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメン
度肝を抜かれることはなく落ち着いた「第9」。そこここに小さな驚き満載なのはむしろ当然、聴くほどに引き込まれる。驚くほどに挑発的な「英雄」で始まった全集録音はこれで完結、まとめ役の「第9」が加わって、5枚のディスクは新たな輝きを放つ。★
ハーディングの実力を広く認めさせた快作。速めのテンポで鋭いリズムと重厚な響きとを両立させ、ベートーヴェンの新たな切り口と魅力を提示してみせた。まことに爽快で精悍なベートーヴェンだ。
ハーディングが20代前半で音楽監督に就任したドイツ・カンマーフィルを振ってのブラームス。室内オケながらも重厚なサウンドづくりで、古楽奏法の影響が随所に表われたロマンティックなブラームスを描いている。
ジンマン、ノリントン路線を踏襲した小型、軽量、快速路線のベートーヴェン。細部の追い込み方はこの二者以上とも言えるもので、なかなかにピリリと辛い。オノフリのような自分勝手でもなく、プレトニョフのような思いつきでもない、真摯な演奏だ。
2001年に16歳でシベリウス・コンクール2位となった、グルジア出身のバティアシュヴィリによるベートーヴェン。同郷の作曲家ツィンツァーゼの作ともども、弾き振りでの録音という意欲的なアルバムだ。
実に意欲的で自由な空気のあふれる演奏だ。伝統的なバッハなどまったく眼中にないようで、思いの丈を描き切っている。けれども決して自分勝手でもなく、受けを狙ったものではない。グールドが健康だったら、こんなふうに弾いたかもしれない演奏とも言える。
内奥の微細な響きへの聴き澄ましと巨大に鳴り響く音への驀進。ベートーヴェンが生み出した独自の響きのイマジネーションを、アンデルジェフスキは極限まで突き抜け音化する。騒然と響きがせめぎ合う協奏曲の終楽章。両極が画然と交替するバガテル。快新!★
ハケか何かで皮膚をサッとなでたような超軽量演奏。小編成で古楽器奏法を取り入れ、使用楽譜は最新のもの、この方法はすでにほかの指揮者が試みたことである。違うと言えば違うが、根本的なものではないので指揮者の意図が心の底まで届くかどうか微妙。
パーヴォ・ヤルヴィとドイツ・カンマーフィルが一体となって新たな地平に踏み出した記念碑的企画の第1弾。ベーレンライター版、小編成オケ、古楽器の一部使用などなど、すでにやり尽くされたかにも思える技の総合が、ヤルヴィたちのエネルギーを得て新たに輝く。★