制作・出演 : ベートーヴェン
後期ロマン派的視点から捉えたスケールの大きい表現である。クレンペラーの指揮する荘厳かつ重厚なオーケストラを相手に、若きバレンボイムも敢然と鍵盤で立ち向かい一歩も引けをとらない。「皇帝」という俗称が実にふさわしい堂々たる威厳に満ちた演奏である。
アルバン・ベルクSQの第1回目の全曲録音のひとつ。初期の作品ながら、後期の作品と同じようなスケール感を持った、力の入った演奏。骨格の太さと緻密さと歌心が絶妙なバランスを保っている。
最初の全集からの1枚。2度目のライヴ録音とは若干違い、高揚感は少し抑えられているが、情と知のバランスは、かえって勝っている。初期作品を、これだけ緊張感と迫力をもって演奏している例は少ない。
室内楽を、それまでのやや近寄り難い通向きの渋いイメージから鮮やかに解き放ったのが、このアルバン・ベルクSQかもしれない。とにかくその演奏は、驚くほどにアグレッシヴであり、技術の冴え、スピード感、大胆な表現意欲など、まさに現代のSQの規範。
日本のオーケストラとは思えない馥郁たる香りの漂う「田園」である。欧州の小都市で地元の音楽家たちの演奏を聴いているような寛いだ雰囲気が素晴らしい。それでいてきびきびとした曲の運びはさすが名手ピヒラーだ。弾けるような愉しさあふれる第8番も見事である。
音楽之友社による楽譜との連動企画だが、ピアニストの人選が功を奏してか、著名曲のみのピアノ名曲集というべき内容で、聴いていて本気で楽しめるレベル。クラシカルな「エナジー・フロー」や、2ヴァージョンの「エンターテイナー」((2)に収録)あたりが良いアクセント。
「悲愴」の冒頭の和音を聴いただけで、独創的! と叫んでしまう。自在なペダリング、思いきり揺らぐテンポ……と書くと、異端的に感じるかもしれないが、音楽の表情はとてもロマンティック。伝統を引きずりながら先端を走る面白さ。そこがフレディの新しさ。
制作・出演
ウタ・プリーヴ / エヴァーハルト・ビュヒナー / オトマール・スウィトナー / ベルリン・シュターツカペレ / ベルリン放送合唱団 / ベートーヴェン / マグダレーナ・ハヨーショヴァー / マンフレート・シェンク発売元
日本コロムビア株式会社デジタル録音による初の全集で、しかも当時の新校訂譜ギュルケ版を使用しているということでも話題となったもの。穏やかで端正な佇まいのなかに、今や失われつつある堅固なドイツ音楽が息づいている。
制作・出演
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 / エーリヒ・クライバー / ケルン放送交響楽団 / ヒルデ・ギューデン / ベートーヴェン / ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 / ロンドン交響楽団えっ。これがミネソタ管? それほど清新で感受性豊かな演奏なのだ。恣意的な表現はなく、あくまでオーソドックス……それなのに音楽の持つ魅力に引きずり込まれてしまう。彼らの全集が完成したとき、新しいベートーヴェン演奏が確立されているに違いない
制作・出演
アルフレーダ・ホジソン / クラウス・テンシュテット / グウィン・ハウエル / ベートーヴェン / マリ・アンネ・ヘガンデル / ロバート・ティアー / ロンドン・フィルハーモニー合唱団 / ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団発売元
キングレコード株式会社喉頭がんの発覚で音楽監督を辞任する直前のテンシュテットとロンドン・フィルのコンビが到達した芸域の高さを痛感する、85年のライヴ録音。むき出しの情動や差し迫った緊張感を持つ最晩年の特徴と異なり、熱い表現のなかに知情意を備えた珠玉の名演である。(彦)★