制作・出演 : 古川展生
クラシカルな響きと叙情性(ヴァイオリン)、ポップな感性とリズム感(ピアノ)、それに和的な風味(尺八)が加わる。まさに現代日本の音楽シーンの合体融合を実現したトリオだ。「翼」などテレビ番組のテーマ曲も収録。“現代のノスタルジー”を痛感させるアルバムである。
メンバーの名前から一文字ずつ取った(しかし豪華な顔ぶれ!)ゴツい名称とは裏腹に、繊細でイマジネーションあふれる演奏を聴かせるユニット。ポジティヴに拡大解釈された“和”は、自己主張・混淆・洒落っ気などの調和の成果。伝統とは別ベクトルの生真面目さが楽しい。
熟練プレイヤーたちによるコラボレーション型ユニット。三人に共通する、音楽的な“揺すり”の力強さが何より印象的で、このユレ感を出すために、ぜひとも尺八の参加が必要だったのではなかろうか。セッション的な録音の「SASUKE」など、精神は完全にジャズ。小気味よい。★
品格のある歌心と上品な音色。オーケストラやアンサンブル活動の中で身に付けた「抑制の美」を、ソロでも実践している彼だ。もっと羽目を外してもいいかなと思いつつ、ギリギリのところで踏み止まるのも彼の魅力なのだろう。ソッリマでは、彼の感性の鋭さも聴ける。
井上鑑や塩入俊哉ら強力な才能によってアレンジされた楽曲は、どれもが違和感なく美しい。その“枠”にはまり込んで、彼らの要求に応えながらも、クラシカルなチェロの魅力を吹き込んでいくのが古川のスタイル。ベスト盤だが、これはこれで完成されたアルバムだ。
2年半ぶりのオリジナル・アルバムは、この2年半の活動を凝縮したものにしたかったという。都響のメンバーとのアンサンブル、他ジャンルとのコラボレーションなど、さまざまな表情を見せてくれる。欲を言えば、もっと古川のソロをたくさん聴きたいところ。
ソリストとして、そして東京都交響楽団の主席チェリストとして、多方面で活躍する古川展生のポピュラー・バラード第2集。現代の名旋律を、若い彼がどのように料理したかを楽しみたい1枚だ。