制作・出演 : 坂本久仁雄
最高の音で楽しむために!
OAKライヴ録音シリーズ7期目の完結編となる本作は、室内オケ編成でありながら、優秀な管楽セクションも有することのデモの趣。名門ギャルドの第9代楽長を務めたブトリーによるオケの委嘱作品を、須川が野太いサウンドで初演した演奏会の貴重なライヴを中心に、小粋な選曲のディスクだ。
アンサンブルの総体、そして弦楽器のみと管楽器のみ。というように、ここにはオーケストラ・アンサンブル金沢を裸にしてしまうような手強い曲が並んでいる。しかしピヒラーの指揮のもと、技術・スタイル・表現のどこをとっても隙がない。好演である。
古楽器的な響きを取り入れているのは従来と同じ。だが、今回はそれがだいぶ板についてきて、音楽がより生き生きと鳴っている。モーツァルトはちょっと不自然な表情が感じられる部分があるが、悪くはない。いっそう覇気があって井上らしいのはハイドンの方。
たっぷりとした響きで沸々と内に向かうロマンに浸るブラ4ではない。各声部がくっきりと明快、鋭敏に動く。相互の関係性がきわめて明瞭に腑に落ちるその音の姿が過激なまでに斬新である。発止と敏捷に響きが立つ3楽章。エモーション直截な4楽章。音楽が熱い。
「イカの哲学」はOEKの委嘱作で、早逝の哲学者・波多野一郎の唯一の著作『烏賊の哲学』を基にした語り付きの協奏曲(台本:中沢新一)。ベートーヴェンは、すっきりとしたオーソドックスな佳演だが、ミッチーらしいサービス精神や、意表を突くアイディアを求めたい気も……。
弾き振りのピアノなど、さすがはピアニスト出身だけあってソツがない(録音がもう少し抜けがあるとさらに良かった)。期待以上に良かったのはエルガー。「ハフナー」は小味で引き締まったものだが、全体的には平均点。マルムステンは気の利いたアンコール。一聴の価値あり。