制作・出演 : 岩城宏之
武満徹と札幌交響楽団(以降札響)の蜜月関係の始まりは、1970年代後半の岩城宏之とのコンサートまで遡ります。 オール武満プログラムで大きな話題を呼んだその公演以降、武満・岩城・札響というコンビネーションは多くの歴史的な録音やコンサートを生み出し、 武満自身も「札響は私の音楽と最も調和しているオーケストラだ」と語るほどでした。その中で最も著名な功績のひとつとして、 黒澤明監督による映画『乱』のサウンドトラックが挙げられるでしょう。 当初黒澤がロンドン交響楽団でのレコーディングを希望したところ、武満は札響での録音を主張。 そしてレコーディング・セッション時の札響の音色の美しさに黒澤自身も感銘を受け、オーケストラのメンバーに感謝を述べたというエピソードは有名です。 そしてその録音は武満と札響の名を改めて世界へ知らしめることになりました。 2021年の武満没後25年を記念し企画された今回の作品『1982 武満徹世界初演曲集』は、そのような素晴らしいコンビネーションを 築き上げていた武満・岩城・札響により、1982年6月27日に札幌市民会館で行われたコンサートの録音をパッケージ化したものです。 演奏を手掛けるのが札響ということもあり、武満自身の希望で曲目の全てが世界初演となったこのコンサートは「武満徹世界初演曲 札響特別演奏会」と題され、 「ア・ウェイ・ア・ローンII (弦楽オーケストラのための)」、「海へ II(アルト・フルート、ハープ、弦楽オーケストラのための)」、 「夢の時 (オーケストラのための)」という3曲が披露されました。さらに当日は武満自身が自身の音楽や演奏曲について解説する講演も実施。 当時FM北海道により録音されたこの音源は、1982年と2017年に1度ずつラジオで一部のみオンエアされただけという極めて貴重なもので、 武満の後年のキャリアを振り返るうえで極めて希少な記録ということから、今回はドイツ・グラモフォンからのリリースが実現。 札響のドイツ・グラモフォンからのリリースは史上初となります。
最高の音で楽しむために!
4作はそれぞれ別公演(一柳はリハ?)からのもの。岩城お得意のジャンルというだけでなく、充実したソリスト陣やOEKの高い合奏能力も加わってどれも緻密な仕上がりとなっている。武満らの濃密な世界は細やかに描き分けられ、メシアンでは胸がすくようなドライヴ感も。
2008年6月に亡くなった、日本を代表するホルン奏者、千葉馨の追悼盤。長くN響の首席奏者を務めた彼が同僚たちと残したモーツァルトのホルン協奏曲全集と日本人作曲家の室内楽作品を収める。特にモーツァルトの協奏曲全集は記念碑的な演奏といえる。
発売元
日本伝統文化振興財団岩城宏之の最後のステージとなったコンサートで、彼の指揮によって歌われた4曲と、40年ほど前にLPで発売された4枚のアルバムをまとめた、歌によるメモリアル盤。懐かしい合唱曲の数々に、林光による反戦歌集が挟まる違和感が、そのまま“最後の演奏”の緊張感にリンクする。少人数の男声による「戦友」が、いわく言い難い哀しさを呼び起こして終わるさまは、なんとも胸苦しい感動を呼ぶ。
最高の音で楽しむために!
凄いカップリングである。「曼荼羅交響曲」はモノラル録音によるデットな響きが曲の精悍さを増長している(60年、スイスでのライヴ)。一方の「悲愴」は96年のライヴで、緩急のメリハリを十全につけ、表現も情感たっぷりで濃密。岩城の演奏の変遷が興味深い。
発売元
キングレコード株式会社管弦楽曲は岩城28歳での録音で、(1)(5)はN響の正式名での初録音。ライナーの長田暁二氏の文章は当時の奮闘ぶりを詳細に記し、我が国のクラシック音楽録音史において、岩城がいかに大きな足跡を残したかを再認識させる。若々しい情熱にあふれた貴重な記録。★