制作・出演 : 江口玲
円熟期にさしかかった加藤知子による、シューマンに続くヴァイオリン・ソナタ集。広く深い表現力にさらに磨きがかかり、最良のコンビといえる江口玲との見事なコラボレーションを披露している。
南紫音のセカンド・アルバム。芳醇な音楽を奏でるひとだ。冒頭のR.シュトラウスのソナタを聴くだけでも、彼女の薫り高いロマン性やエレガンスがあふれ出ている。ピアノの江口玲の強靭な表現力に負けていないのにも感服。サン=サーンスのソナタもしかり。彼女の今後の輝かしい方向性が見える一点。
前橋汀子らしい個性的な表現が堪能できる。フランクでは自在なフレージングやポルタメント気味の音程の取り方に妖しささえ感じる。ブラームスでも彼女の激しい感情表現やロマンティシズムを聴くことができる。年を重ねたからこそできる演奏に違いない。
いつの間にか“中堅”と呼んでも良い域に達した渡辺玲子の3年ぶりの新録音。「カルメン幻想曲」に代表される技巧的小品の痛快さもさることながら、シマノフスキの作品における繊細多様にして鋭敏な響きへの反応が見事。ピアノの江口も好サポート。
蠱惑的なまでに艶やかな音色、ぴたり逸らさずキメて魅せるワザの身振り、余すところなく音にのせてほとばしるパッション。冒頭のヴィタリから、持てる才と魅力を全開。情の運びは少々直線的だが、迫りくる音の力が圧巻。イキのいい新星の登場である。
なぜか懐かしく、繊細で慈しむような愛情に溢れたエルガー珠玉のヴァイオリン曲。スケールの大きさと独特の色気のある音楽作りで確固とした存在感を放つ加藤知子の定評のあるエルガー。
アメリカの曲を中心にした『エンターテイナー』と同時発売で、こちらは、もう少しクラシカルなアルバムになっている。演奏は非常に丁寧。過剰な表情づけは避け、すーっと耳に馴染む。もっと大胆に、積極的にとは言えるが、これは癒し系クラシックなのだ。