制作・出演 : 竹澤恭子
竹澤恭子のデビュー20周年記念盤。正攻法で、楽器をしなやかに鳴らしながら存分に歌い上げてゆくスタイルは不変だが、以前よりも貫録を感じさせると同時に、微妙なアゴーギクで一段と繊細な表現を可能ならしめている(第2番第1楽章など)あたりに20年の歳月が育んだ円熟が認められる。まさに充実の一枚だ。
岩代太郎プロデュースの、ヒーリング・アルバムと言っときましょう。今回のT'sは、竹澤恭子とユニットを組んだ。テンポをしっかりと落として思い入れたっぷりにうたっている。富田靖子が朗読しているシェイクスピアの詩も入っていて、徹底的に女の子を意識した作り。
竹澤ひさびさの新作は初の小品集。たとえばクライスラーの「愛の悲しみ」のように、気持ちを込めすぎるほどじっくり歌ったり、ブラームスではしなやかさを、そしてバルトークでは大家のような風格を見せる。彼女としてもやり尽くした充実感があっただろう。伴奏&録音も良し。
95年録音の(1)が素晴しい。作品の規模に引けを取らないスケール感や、伸びやかかつ深々と歌い込まれた旋律。もちろん繊細な配慮も忘れていない。音色も瑞々しさと力強さを兼備している。竹澤恭子の魅力を最大限に引き出した会心作だ。(2)は既出の音源。
竹澤恭子のプロコフィエフ・ヴァイオリン・ソナタ全集(無伴奏ソナタまで含む)。竹澤のプロコフィエフは、いい意味で、とても聴きやすい。晦渋になりがちなこれらの曲を、生き生きとモダンに、しかも、確かな技巧で弾きこなしている、魅力的な1枚だ。
素晴らしい演奏で、特に(1)は注目したい。ここには彼女の最後まで衰えない集中力に、しなやかさ、瑞々しさ、激しさなどがあらゆる形で出ている。彼女を多方面から眺められるのと同時に、この曲の新しい魅力をも伝える。(2)はシャープで新鮮な響き。
素晴らしい才能のデビュー。彼女の音色は芯が強く、表面は柔らかく瑞々しい。表情はのびやかで、テクニックの確かさは言うに及ばず。(1)も良いが(2)はさらに上出来。伴奏も重心の低いズシリとした響きで彼女をサポート。要注目の1枚。今後の期待も大。