制作・出演 : イタマール・ゴラン
デュビュニョンの新作を挿入し、曲順にストーリー性を持たせたというコンセプト面もさることながら、演奏そのものこそが当盤を意義あるものとしている。たとえば、ドビュッシーでの弱音やデュナーミク処理、キャラクターの対比など。メシアンもこれほどまでにダイナミックで興奮を呼ぶ演奏はなかなかない。★
竹澤恭子のデビュー20周年記念盤。正攻法で、楽器をしなやかに鳴らしながら存分に歌い上げてゆくスタイルは不変だが、以前よりも貫録を感じさせると同時に、微妙なアゴーギクで一段と繊細な表現を可能ならしめている(第2番第1楽章など)あたりに20年の歳月が育んだ円熟が認められる。まさに充実の一枚だ。
同世代の神尾真由子がチャイコフスキーで優勝して、周囲はますますライバル視するようになった。そんなところでベスト・アルバムのリリースはまさにグッド・タイミング。天才少女から大人へと向かう彼女の足跡をたどることは、彼女のこれからを占うこと。期待は膨らむ。
川久保のセカンド・アルバムは、前作の協奏曲とうって変わって、米・露・仏の小品集。シャープな技術とスキッとした語り口の中にも、ふと熱いものを迸らせ、曲に寄せる愛情の深さを覗かせる。それにしても、当意即妙のゴランのピアノが抜群である。
リトアニアから彗星のごとく現れた天才少年ラクリンもいつの間にか30歳を超えた。ピアノとのスリリングな応酬で手に汗を握らせるベートーヴェンも聴き応え十分だが、ここでは慈しみを持って愛器ガルネリを奏でるショスタコーヴィチの前奏曲に賛辞を呈したい。
いろいろな意味で“若さ”が際立つ録音である。微妙なニュアンスが充分に描出できていない憾みはあるものの、大胆でスケール豊かな演奏が発する若々しい輝きには何物にも替えがたい魅力がある。日本の期待のホープ・樫本大進の若き日の貴重な記録と言えよう。
作品をまっすぐに見つめ、その本質を射抜く凄さ。庄司紗矢香のプロコには、選ばれた女性だけがもつ純粋な視線を感じる。ナウシカやシータのような……。強くて美しい音色、しなやかなフレージング。彼女のいまが、どれほどすばらしいかを証明する演奏だ。★
パガニーニのヴァイオリン協奏曲第1番で衝撃のデビューを飾った庄司紗矢香。2ndアルバムは、なんとパリ・ルーヴル美術館のオーディトリウムでのリサイタルのライヴ録音!
樫本大進の2ndアルバムは室内楽での評価が高いイタマール・ゴランとの共演。名曲フランクのソナタでの伸びやかな演奏のほか、グリーグでの歌心やプーランクでの鮮やかな技巧が楽しめる。
20世紀ポーランド作曲界の代表選手二人。ペンデレッキの近作は音程関係とモチーフ操作のレクチャーが聴こえてきそう。ルトスワフスキ54年の作品は彼の新古典主義時代のもの。後の作品を知っている人には驚きかも。これがなかなか美しい曲。