ダンス・アンド・ラフ・アモングスト・ザ・ロッテン
ウィジャ盤で次々と霊を呼び出してしまった少女に襲いかかる恐怖!ホラー・メタル・バンド、カラック・アングレンが戦慄の死の世界へと誘う!
カラック・アングレンは03年に結成されたオランダのシンフォニック・ブラック・メタル・バンド。
08年に『Lammendam』でデビューし、映画音楽や近現代のクラシックから影響を受けたと思われるオーケストレーションが
縦横無尽に飛び回るスタイルは、この時点ですでに完成の域に達しており、本作は大きな話題を呼ぶこととなった。
12年にリリースされたサード・アルバム『Where the Corpses Sink Forever』は、ストリングスにピアノ、
クワイヤが大活躍するシンフォニック・ブラック・メタルの傑作として大反響を呼んだ。翌13年には来日も果たしているので、
そのステージに圧倒された方も少なくないだろう。その後も順調に活動を続け、そして今回リリースとなるのが、
5枚目のフル・レングスとなる『ダンス・アンド・ラフ・アモングスト・ザ・ロッテン』だ。
カラック・アングレンの音楽的ルーツはブラック・メタルにあるが、彼らは自らのスタイルを「ホラー・メタル」と称し、
自分たちの活動をアルバム、あるいはライヴを通じた「ホラー・ストーリーテリング」であるとしている。
音楽的に展開が複雑というより、ホラー映画的な場面転換を思わせるリズム・チェンジや雰囲気の急変が多用され、
まさに「ホラー・メタル」「ホラー・ストーリーテリング」としか形容しようがない世界観が作り上げられている。
扱われるテーマも、ファンタジー、ゴシック色が強い。バンド名はトールキンの指輪物語からとられているし、
「死は幽霊船からやって来た」「死体たちが永遠に沈むところで」というアルバム・タイトルからも、彼らの持つファンタジー性を想像できるだろう。
『ダンス・アンド・ラフ・アモングスト・ザ・ロッテン』では、そのストーリーテリングにさらなる磨きがかかる。
今回は何と、リスナーすらもそのストーリーの中に取り込まれる仕組みになっているのだ!本作のテーマは
「ウィジャ盤で長い時間遊び過ぎてしまった少女」。ウィジャ盤というのは、日本で言えばコックリさんにあたるもの。
アルバム冒頭、ウィジャ盤を使い、チャーリーという霊を呼び出してしまった少女は、恐怖のあまり逃げ出してしまう。
部屋に取り残されたのは、リスナーであるあなた自身。次々と霊は現れつづけ、リスナー自身がそのストーリーの聴き手となるのだ。
アルバム・タイトルである「腐敗したもの中で踊り、笑え」というのは、死者の輪に入り、その世界を体験しろ、ということ。
つまりリスナーである我々へ向けたメッセージなのだ。
音の方も、いつものカラック・アングレンだ。不気味に、そしてゴージャスに、ゴースト・ストーリーを語っていく。
シンセサイザーをふんだんに使いオーケストラやクワイヤを再現、そして彼ら特有のやや特殊なコード進行でその世界観が
盛り立てられていくのだ。ピーター・テクレンの手によるミックスも素晴らしい。
前作『This Is No Fairytale』も、ミックスはピーター・テクレン所有のアビス・スタジオで行われているが、
カラック・アングレンとピーターの関係というのは、単にバンドとエンジニアというだけではない。
ピーターとティル・リンデマンのプロジェクト、Lindemannのデビュー作『Skills in Pills』製作にあたり、
オーケストラ・アレンジメントの助人に任命されたのが、他ならぬカラック・アングレンのキーボード担当、
アルデックだったのだ!『This Is No Fairytale』をミックス中に、そのオーケストレーションのクオリティの高さに
ピーターが驚愕したことが、起用の理由とのこと。つまり『ダンス・アンド・ラフ・アモングスト・ザ・ロッテン』は、
カラック・アングレンとピーター・テクレンが、お互いリスペクトしあう中で生まれた作品なのだ。そのクオリティが高いのも当然である。
本作はシンフォニック・ブラック・メタル・ファンはもちろん、ヘヴィ・メタルの持つドラマティックさが好きな人なら、
誰でもたちまちその世界に引きずり込まれてしまうに違いない。ぜひとも夜、一人でじっくりと聴いてみて欲しい。
【メンバー】
セレガー(ヴォーカル/ギター)
アルデック(キーボード/オーケストラ)
ナムタル(ドラムス)
<収録内容>
01. オープニング
02. チャーリー
03. ブラッドクイーン
04. チャールズ・フランシス・コフラン
05. ソング・フォー・ザ・デッド
06. イン・デ・ナーム・ヴァン・デ・デヴィル
07. ピッチ・ブラック・ボックス
08. ザ・ポゼッション・プロセス
09. スリー・タイムズ・サンダー・ストライクス
《ボーナストラック》
10. チャールズ・フランシス・コフラン(オーケストラver.)