音楽むすび | ウトガルド

ウトガルド

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プログレッシヴさを極め尽くすエクストリーム・メタル・バンド、エンスレイヴドの新作が登場。
さらなるプログレッシヴさの追求とブラック・メタル回帰を両立し、巨人たちの棲む都市『ウトガルド』を描いた本作は、彼らの新たなマイルストーンとなるダークな大傑作!
【日本語解説書封入】

ブラック・メタルの文脈から登場し、その後独自の音楽性を追求していったバンドは少なくない。
ノルウェーのプログレッシヴ・エクストリーム・メタル・バンド、エンスレイヴドもそんな中の1つ。
イヴァー・ビヨルンソン(G)とグリュートレ・チェルソン(Ba,Vo)がエンスレイヴドを
結成したのが91年。
この時イヴァーはわずか13歳だったというのだから、その早熟ぶりには驚かされる。
2本のデモを発表したのち、93年にあのエンペラーとのスプリット作でデビュー。
両バンドの提示したシンフォニックなブラック・メタルというスタイルは、衝撃以外の何物でもなかった。
今、とりあえず「ブラック・メタル」という呼称を用いたが、エンスレイヴドがエンペラーをはじめとした他のバンドと決定的に異なっていたのは、サタニックなイメージを一切使用しなかった点。
彼らはいち早く北欧神話の世界観を取り入れ、スウェーデンのバソリーとともに、現在のヴァイキング・メタルの基礎を築いたのだ。
94年のデビュー・フル・レングス『VikingligrVeldi』からして、5曲中4曲が10分超という長尺志向であった彼ら。
その後作品を重ねるごとに、潜在的には初めからあったプログレッシヴ的要素が、より前面に出てくるようになる。
97年の『Eld』は16分を超える超大作、「793(SlagetomLindisfarne)」で幕をあけるという大胆な作りに。
そして、大きなメンバー・チェンジを経て制作された03年の『BelowtheLight』は、プログレッシヴ方面への飛躍を見せた作品であり、グリュートレ自身が「エンスレイヴドにとってマイルストーンとなった」と認める傑作である。
そんな彼らは、現在ではエクストリーム・メタル、プログレッシヴ・ロック両方面のファンから大きな支持を集めるバンドになっている。

プログレッシヴを極めた前作、『E』から3年。
この度エンスレイヴドは、15枚目となるニュー・アルバム『ウトガルド』をリリースする。
「ウトガルド」とは、北欧神話に登場する巨人たちが棲む都市の名。
だがグリュートレによれば、心理的レベルでは、これは眠り、夢、明晰夢の領域、意識と潜在意識に潜むものの外縁を表現しているという。
恐るべきウトガルドへの旅である本作は、音楽的にも非常にダークなもの。
明らかに初期のエンスレイヴドを思わせるブラック・メタル的要素が復活している一方、プログレッシヴ方面への触手はさらに伸びているという実に意欲的な作品に仕上がっている。
「『Frost』や『BelowtheLight』同様、エンスレイヴドにとってマイルストーンとなりうるアルバムだ」と大きな自信を覗かせるグリュートレ。
それも十分納得。
30年に渡るエンスレイヴドのキャリアを総括する『ウトガルド』は、さらなるプログレッシヴさの追求とブラック・メタル回帰を両立した大傑作である。

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