発売元 : 及川音楽事務所
楚々としたナチュラルな歌声に魅了され、伸びやかで率直な表現に心が癒される童謡集である。「あめふりくまのこ」の天真爛漫な歌唱に天性の明るい気質が覗かれて微笑ましい。可愛い坊やの母親ならではの、5月の青空を思わせるさわやかなデビューCDである。★
得意とするフランス音楽に、師である平吉毅州の作品を合わせたアルバム。光彩豊かなピアノの音が作品の魅力をよく引き出している。デュオ演奏の「スペイン狂詩曲」やルトスワフスキはメリハリも利いて、聴き応えも十分だ。ただし、残響過多の録音(一部を除く)は歓迎しない。
一戸敦は読売日本響の首席フルート、一戸哲は元札幌響の首席ファゴット。それにピアノを加えた三重奏作品は実は少なくはないのだが、演奏会などで取り上げられることは滅多にない。歌ものの編曲も素敵だが、ベートーヴェンの作品はカタログとしても貴重だし、とにかく楽しい。
澄んだ透明な声を駆使して一曲ずつ丁寧に歌い繋ぐ松田希世の真摯な歌唱に好感を抱く。中田喜直の「霧と話した」など、慎み深い表現の中から自然と醸し出される抒情的な美しさに心惹かれる。日本歌曲に清新の気を吹き込む初々しいデビュー・アルバムである。
まあ笑うしかないのだが、古今東西、いろいろな作曲家が書いた猫にまつわる音楽を集めた珍盤。探せば結構あるものだ。演奏が玉石混交なのはちょっと惜しいけれど、まずは企画のバカバカしい面白さに拍手を贈ろう。ついでに“犬”もやってくださいませ。
在日朝鮮人ピアニスト、リャンのファースト・アルバム。フランスに留学して、UFAM音楽国際コンクールで3位になっている。可愛い顔をしているが、もう2児の母親だそうだ。うーむ。朝鮮民謡を中心にした作品集だが、編曲は多岐にわたってバラエティがあり、思い切りのいい演奏で気持ちがいい。
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及川音楽事務所歌を聴く歓びを十二分に満喫できる素敵なCDである。イタリアの映画音楽、カンツォーネの名旋律が朗々と響く。日向由子の温かい歌声には人々の心を惹き付け震わせる不思議な魅力がある。「ニュー・シネマ・パラダイス」の感動をぜひ多くの方に味わってほしい。★
ニューヨークのマネス音楽院でチェロと室内楽を学び、ニュージャージーのバーゲン・フィルの副首席奏者を務めた水口貴裕の初のソロ・アルバム。雄々しく骨太なチェロの音色が魅力的。セッション録音にもかかわらず、いささか音程が甘いのが気になる。
溌剌とした音色と晴朗な歌心がこの演奏には宿っている。選曲もいい。クープランの「恋の鶯」、フンメルやクーラウの「ソナタ」など透明感のある颯爽とした演奏が映える。熟練の萩谷の真骨頂である。ドヴォルザークと珍しいブーランジェを興味深く聴いた。
歌謡曲からイタリア歌曲までのレパートリーを、格調の高さと通俗的な歌心のバランスが支えて見事。還暦を越えたバス・バリトンの歌声は、ジャンルは異なれど、上條恒彦の滋味深い歌と一脈通ずるところがある。自作の「元気音頭」は、このアルバムの心そのものの曲だ。
コンポーザー・ピアニストとして、またジャズ・ピアニストとしても活躍している彼女。メモリアル・イヤー(2008年)となった三人の作曲家の作品を、彼女らしい大胆な切り口で取り上げた。遊び心も加えられているが、全体には彼女の豊かな音楽性を感じさせる仕上がり。
ピアノとチェロによる姉弟デュオによるクリスマス・アルバム。互いの楽器の音がグノーの表題曲から、バッハ、ラフマニノフ、カッチーニ……クラシック系の珠玉小品たち全12曲を通じ、姉弟ならではの渾然一体となるような幸福感のなかにキラキラと輝く。
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及川音楽事務所ジャケットの笑顔から受ける印象どおり、すっきりとした軽やかな美声で歌うソプラノ。音域の広い「未来へ?Wedding March」や有名曲5、6、11曲目などでクラシカルな歌唱力も披露しつつ、魅力の本質は1、13曲目などの素直な歌に出ていると思う。過度のリヴァーブを避けたヴォーカル録音も好印象。
和田は78年生まれ、シカゴ音楽院で学んだ才媛。よく書き込まれピアノが豊かに鳴るオリジナル曲をはじめ、2、3、4、6、7、9、12曲目はクラシック作品などを引用しつつ華麗な技巧でまったく別の曲に換骨奪胎、なかなかの力技に感服。随所に聴こえるジャズ風味も新鮮だ。
若い歌手を初めて聴くのは実に楽しい。テノールとなるといっそうである。ナポリ帰りの上本訓久、粗削りながら地中海の青い空を感じさせる声に魅力がある。CD一枚で判断するのは尚早だが、ダイヤモンドの原石を掘り出した思いだ。精進を重ねて大成してほしい。
フェリス女学院大学音楽学部を経てルチアーナ・セッラ・アカデミア(イタリア)で学び、ヴェローナやヴェネツィアのコンサートなどで評価を得た作田麻美のデビュー盤。3、5、10、19曲目のようにむしろ低めの音域で、押し出しの強い個性的な歌唱を聴かせている。
「展覧会の絵」が面白い。オーボエ、オーボエ・ダ・モーレ、イングリッシュ・ホルンと持ち替えて、再構築している。ピアノの方は、ラヴェル編曲版をベースにしたホロヴィッツ版を採用。凝ってる。不思議でユーモラスで可愛い「展覧会の絵」だ。面白がり屋のアナタ向け。
バスからカウンターテナーまで、実に4オクターヴを歌いこなす本岩孝之は、東京学芸大を経て東京藝大、同大学院で学んだ。各声種を歌いこなす技術はたぐいまれなもの。登場人物をC-T、T、Brで歌い分けた「魔王」は歌曲というより演劇的な世界を現出して興味深い。