1989年5月発売
商業ペースにのる人ではないが、原マスミの詩と歌は80年代最大の収穫だ。彼のポジティブなフェティシズムの行き先を見届けたい。1982年当時、私は知らずにライナーに吉本隆明の文を引用したが、後に吉本ばななが原マスミのファンだときいた。
「イマジネーション通信」に続く、1984年の作品。いきなり「部屋に帰ると君が死んでいた」というフレーズで始まる「海で暮らす」はあらゆる意味で衝撃。詩と音楽がここまでうまく融合した例も少ない。できることならこんなイメージで死にたい。
ジャパン移籍第1弾の1983年の名作。ハードな言葉が危うい空気につつまれて風格さえ漂わせている。プロデュースは伊藤銀次。彼の仕事の中でも屈指の作品ということになるだろう。情緒に流されずいたずらにシニカルではない。冷徹な覚悟があるから強い。
83年発表の秀作。タイトルはスペイン語で「大きな歌」という意味。ひとつのハードルを越えたというか、自分自身が作り上げた枠組から抜け出したというか、ふっきれた遑しさを感じさせる歌には、ここまで来る道程を黄金に変換するような力強さがある。
唯一のアルバム『センチメンタル通り』から15年経った88年に発表されたライヴ・アルバム。焼けぼっくいに火がついたようなライヴだが、はちみつぱいだから許せるというところはたしかにある。15年間、思いをたずさえたファン心理を、彼らは熟知しているのだろうが、思い出ライヴに終わらせず、15年後の彼らをみせているのがいい。
5月の初来日公演では、スタンディング・オベイションで讃えられたグラッペリ翁だが、その老成したジャズ・バイオリンの世界は本当に感動的なものだった。本作は73年のイギリス録音。確実な技術と洒落た感性で展開するデュオで、バイオリンの魅力も再認。
このジャンルでは貴重なCDであり、特に全集として意義深い1枚と言えよう。東ドイツの中堅オルガニスト、アルブレヒトは、ドイツのオルガン音楽の伝統をも汲んで、各曲を手堅くまとめ、誠実さを印象づける。ベルリン聖マリア教会のオルガンを使用。