1996年5月22日発売
いささかテンションの強い太めの音で、グイグイ進むスターンとローズ。クルクル廻る指とパワーにモノを言わせて、バリバリ弾きまくるイストミン。そんな3人が、「イイとこのお嬢さん」ふうメンデルスゾーンをバッタバッタとなぎ倒す。おおコワ。
ほう、アイザック・スターンか、と思いつつCDをスタートすると、若きブラームスの情熱がほとばしり始める。いまどき交響曲信仰してるクラシックファンはそんなにいないと思うけど、これは室内楽の中でも魅力的なピアノ三、四重奏という分野の教科書。
ミュージカルの名作「ラ・マンチャの男」がドミンゴを中心とする豪華キャストで録音された。ラ・マンチャの男とは、もちろん、ドン・キホーテのこと。ドミンゴが伸び伸びと歌っている。熱いラテン的な世界が繰り広げられていて、聴いていて気持ちがいい。
何といってもドミンゴの声の魅力。もう歌がうまいの、どの曲がいいの……といったレベルのアルバムじゃない。ラヴ・バラードからスタンダードまで、何を歌っても“ドミンゴ”。「パハップス・ラヴ」ではジョン・デンバーのギターとデュエットが楽しい。
都響のソロ・コンマス、サイトウ・キネンにも参加しているという、若手の(68年生まれだ)逸材。音色が美しいとか、端正だとか美点はあるけれど、なにより音楽の姿形をしっかりと把握しているところが頼もしい。でも少し真面目かな。(7)(11)がとてもいい。
まくらからさげまで、たっぷり小三治の思想が詰まりまくった“大らくだ”。アフリカ話をふるのも、それでOKなのも小三治のわかりやすく骨のある語りを誰もが知っているからだが、このらくだはまさしく凄い。凄すぎて落語史におったってしまうほど。
時間的な制約の少ない独演会での収録。重い話をべたつくことなくスマートに聞かせ、だからこそ胸の奥に響く小三治の芸風が堪能できる。奉公元からの休暇帰りの息子を描く「薮入り」では、語り口が渇いている分だけ、親子の情がとことんせつない。思わず泣いた。