1997年4月発売
「伝統の地をたずねて」というシリーズを1枚にまとめた編集ものだが選曲が実によく考えられており、これ1枚でグレゴリオ聖歌のエッセンスを味わうことができる。気になってはいるが、どこから入っていいか途方に暮れている入門者にうってつけのCD。
(1)は非常に有名な曲で録音は多いが、この演奏はその中でも最美ではあるまいか。特に第1ヴァイオリン、フィーツのしたたるような艶やかな音色は絶品。全体のアンサンブルも典雅で暖かい雰囲気がいっぱいにあふれている。(2)も同様の名演。音質もまだまだ現役。
ハイドンの音楽は「型」や「健康美」ばかりが目立って、ともするとナイーヴな部分が切り捨てられがち。そこに光を当てたのがこの演奏。なおここに収められた第83番は、ハイドン最後の弦楽四重奏曲で、全4楽章のうち2・3楽章のみが完成されている。
ヴェラーSQの録音の中でも特に優れた1枚と言えるだろう。このように作曲家の緊迫感にあふれたドラマ性と、ロマンティックな情感の双方を見事に両立させた演奏は、ほかに思い当たらない。みずみずしい気品を持った、いかにもウィーンのベートーヴェンだ。
59年ウィーン・フィルの若手奏者(20〜30歳)によって結成されたというヴェラー四重奏団。10年余りの活動の後惜しまれつつ解散したがその名演がCDとして蘇った。艶やかな明るい音色で歌い上げられるこれら古典派の3曲は、今日もなお瑞々しい。
VPOのメンバーによって結成されたヴェラーSQは、名門ウィーンSQに連なるウィーン室内楽の伝統継承者。活動末期の録音('69〜'70年)によるシューベルトには古き良きウィーン気質が健在である。黄昏時の燕尾服たち……。
父親格のバリリSQの影にかくれがちなヴェラーSQだが、このブラームスは彼らならでは。ウィーン流の気品溢れるスタイルは勿論、ブラームス特有の幾重にも重なった綾を緻密なアンサンブルで描き出している。60年代デッカの録音が見事にそれを捉えた。
同SQの活躍した時期は60年代。わずか10年あまりだが、この演奏を聴くかぎり評判通り“惜しまれる”存在であったことは疑いない。演奏難度の高い演目を、かくも精密にしかも情緒たっぷりと奏したものがあるだろうか。とりわけ(1)の豊艶さは必聴に値する。
61年からウィーンpoのコンサート・マスター、ボスコフスキーを中心に活動を始めたのがウィーン・フィル四重奏団。次々とメンバーが入れ代わり10年足らずでその活動を終えたが、このアンサンブルの調べはまさしくウィーンの響き。貴重な録音だ。
1人1人の弦の音が絡み合うように聴こえてきて柔らかな調和をなすウィーン・フィル四重奏団の音色。歌に通じる、人のぬくもりが満ちあふれたシューベルトの音楽にはこの暖かいサウンドが実によく合う。軽やかにほのぼのと奏でられる優しいシューベルト。