2012年5月9日発売
男性的ともいえる雄渾な楽想とともに、限りない憧憬を秘めた第3楽章が映画音楽に使われて、より広く親しまれるようになった第3番。哀愁感や情感を存分に湛え内省的で諦観に満ちた、作曲家晩年の枯淡の境地を示す第4番。ブラームスの2曲の交響曲を収めた一枚です。ベームの入魂の指揮とウィーン・フィルハーモニーの伝統のある響きと卓越した表現力が一体化したこの演奏は、1976年度レコード・アカデミー賞を受賞しています。
宗教的荘厳さと深い抒情性を湛えたブルックナーの第7番は、卓越した作曲技法によって彼の名声を一挙に高めた交響曲で、敬愛するワーグナーへの追悼の意を第2楽章の金管の響きで表した作品としても知られています。細部を揺るがせにしない堅固な構築感に支えられたカラヤンの指揮と、ベルリン・フィルハーモニーの卓越した能力が相俟ったこの演奏は、濃厚なロマン主義的性格を備えた作品の規範的な姿を示すものといえるでしょう。
ブルックナーの交響曲のなかでは最も大規模で、美しい詩情と荘厳さに満ち溢れた第8番は、広大な宇宙を音で描いたような交響曲です。ドイツ=オーストリア音楽の演奏では絶対的な評価を得ていた20世紀を代表する巨匠指揮者ベームは、ウィーン・フィルハーモニーから淀みのない流れや豊饒な響きを導き出しており、巨大な建造物を音で描くかのような悠揚迫らぬ壮大な演奏によって、この作品が備えている真の魅力を明らかにしています。
限りない憧れを秘めた静謐美が横溢し比類のない名曲として大きな存在感と人気を誇る、ロマン的な抒情性が存分に表現されたシューベルトの《未完成》。アメリカに滞在中のドヴォルザークが祖国ボヘミアへの郷愁を雄大なスケールで謳い上げた傑作《新世界より》。ベームが晩年にウィーン・フィルハーモニーを指揮した演奏によって、2曲の名作交響曲を収めています。ベームの枯淡の境地が美しく刻印されたアルバムといえる一枚です。?
厳格さのなかに宗教的かつ官能的な響きが内在した、静謐な思索と哲学的な沈潜をも感じさせるフランク唯一の交響曲。独自の語法である循環形式を用いたこの作品の燻し銀のような重厚な響きは、どこか禁欲的な印象すら与えます。バレンボイムが音楽監督を務めていた頃にパリ管弦楽団を指揮した録音で、壮麗な響きで濃密なロマンを湛えた色彩感溢れる演奏を聴かせています。ギリシャ神話に題材を得た交響詩《プシュケ》をカップリング。
ベルリンで行われたハイドン家の追悼祭で第3楽章が演奏されたことから標題が付された《悲しみ》。楽員たちの帰郷を望む気持ちを主君に訴えるために、機知に富んだアイディアで書かれた《告別》。女帝が訪問した際に演奏されたために標題が付された、祝典的な《マリア・テレジア》。ハイドンのシュトゥルム・ウント・ドラング期の交響曲3曲をカップリングした、バレンボイムとイギリス室内管弦楽団の清新な演奏によるディスクです。
第2楽章のフォルテッシモの一撃が有名な《驚愕》。第2楽章で多数の打楽器が用いられ、コーダでは信号ラッパが鳴り渡る《軍隊》。第2楽章で時計の振り子を思わせるリズムが刻まれる《時計》。ハイドン円熟期の《ロンドン・セット》のなかから特に広く親しまれている標題付きの3曲を収録したアルバムです。カラヤンの流麗で精妙な表現と、ベルリン・フィルハーモニーの明快な響きによる格調の高い演奏をお楽しみください。
若々しい青春の息吹と濃厚なロマンティシズムが横溢するマーラーの交響曲第1番は、憧憬や挫折など多感な感情が表現された、作曲家の出発点となった記念すべき作品です。誠実味溢れる音楽性で世界中の音楽ファンを魅了し続けたクーベリックがライフワークとしたマーラー演奏は、現在聴いてもまったく色褪せません。フィッシャー=ディースカウが失恋した若者の悲しみと絶望を歌い上げた《さすらう若人の歌》をカップリングしています。
この第4番はマーラーにしては比較的小編成のオーケストラを用いた、珍しく明るい雰囲気を湛えた親しみやすい交響曲で、人間の平穏な心情やメルヒェンティックな世界を清らかで牧歌的に描いています。カラヤンは自ら磨き上げたベルリン・フィルハーモニーの緻密なアンサンブルを駆使して、作品に内在するロマン的情感をあますところなく再現しており、終楽章ではマティスが天国での生活の楽しさを清澄な声で歌い上げています。
作品に内在するロマン的情感と内面から湧き上がる人間の痛切な叫びが、現代人の心に強く訴えかけるマーラーの交響曲第5番。クーベリックが手兵であったバイエルン放送交響楽団とともに完成した交響曲全集からの一枚で、指揮者とオーケストラの一体感が見事に発揮された、熱い情感を漲らせた壮麗でスケール豊かな演奏を繰り広げています。特に映画『ベニスに死す』で用いられたアダージェットの入魂の演奏は胸に迫ります。
中国の詩をテキストにした管弦楽伴奏の6曲の歌曲からなる交響曲《大地の歌》。死を予感し始めたマーラーの晩年の心境を示す東洋的な美と厭世観が漂う作品で、作曲家が最後に到達した簡潔で透明な筆致の冴えは「素晴らしい」の一言に尽きます。作曲家の豊饒さや完全なる調和の世界をカラヤンとベルリン・フィルハーモニーが圧倒的な説得力をもって描き出しており、ルートヴィヒとコロの名唱も特筆に値するものといえるでしょう。
南国イタリアで受けた印象をもとにした、眩いまでに?剌とした晴朗で快活な《イタリア》。ルターのコラールや宗教的な素材が数多く採り入れられた、宗教改革300年祭で演奏するために21歳のときに作曲された《宗教改革》。メンデルスゾーンの2曲の交響曲をカップリングした一枚です。デビュー当初から鬼才として旺盛な指揮活動を展開したマゼールがベルリン・フィルハーモニーを指揮した、明快で輝かしい響きに満ちた演奏でお聴きください。
典型的なロココ風のギャラント様式による流麗で爽やかな、スケールの大きさと優雅な情感を湛えた密度の濃い中期の名作第29番。ウィーン時代の偉大な交響曲群の幕開けとなった、祝典的な曲想が横溢する《ハフナー》。滋味溢れる演奏によって未だ不動の人気を誇る巨匠ベームとウィーン・フィルハーモニーによる、モーツァルトの2曲の交響曲を収録したアルバムです。《フリーメイソンのための葬送音楽》をカップリングしています。
ポリフォニー技法と歌謡性が見事な融合を見せ、内面的な精神性の深まりを感じさせる円熟作《プラハ》は、長大な序奏を置きメヌエットが省かれているのが特徴です。三大交響曲の第1作で明るい力強さのなかに真率な悲しみと清澄な歌謡性が秘められた第39番は、作曲家の「白鳥の歌」とも呼ばれている名作です。モーツァルトの2曲の交響曲を、巨匠ベームとウィーン・フィルハーモニーによる極めて高い完成度を示す演奏で収録した一枚です。?
哀愁を帯びた旋律が古典美の極致を示す、悲愴なパトスを湛える劇的緊張感に満ちた第40番。晴朗かつ雄渾な曲想によって、記念碑的な高みに立つ第41番《ジュピター》。モーツァルトの交響曲創作の最後を飾る名作2曲を収録したアルバムです。アバドとロンドン交響楽団によるこの演奏は、過剰な感情の押し付けを排して古典的な造型感覚を際立たせた、作品の持つ音楽的な純度を明快かつストレートに表現したものといえるでしょう。
標題が示すとおり古典的で簡潔明快な様式美を示す、新古典主義の先駆的な作品である第1番。第二次大戦中に作曲されたものの自由と気高さを表出し、民族的感覚に根ざす豊かな楽想に彩られた第5番。プロコフィエフの交響曲2曲を収録したアルバムです。カラヤンはベルリン・フィルハーモニーの精緻なアンサンブルを駆使して鮮烈な響きや豊かなニュアンスを鮮やかに再現し、20世紀の最も重要な交響曲の真価を明らかにしています。
循環形式の手法によって細部に至るまで有機的に関連付けられ、色彩感に溢れたオーケストラと壮麗なオルガンの響きが効果的に対置されたサン=サーンス円熟期の交響曲第3番。バレンボイムとシカゴ交響楽団が雄大なスケールで表現したアルバムです。オーケストラをシカゴで、オルガンをパリで収録しており、このシンクロ録音は初出当時大いに話題になりました。当時手兵であったパリ管弦楽団を指揮した3曲の管弦楽曲をカップリング。
シューベルトの死の年に完成された、作曲家の音楽的特質が見事に発揮された雄大なスケールと美しい旋律による交響曲《ザ・グレート》には、シューマンが「天国的な長さ」と評した有名なエピソードが残されています。ベームが晩年にドレスデン国立管弦楽団を指揮した演奏会のライヴ録音で収録、この名門オーケストラ特有の豊かでバランスのよい響きを充分に生かし、古い伝統を継承するドイツ的な肌ざわりを持った音楽を聴かせています。
スターリンの死の翌年に作曲され、芸術の自由化を象徴することになったショスタコーヴィチの第10番。新古典主義時代の作品のなかでも、最も古典的な書法による作品として知られるストラヴィンスキーの交響曲ハ調。20世紀中葉にロシアで生まれた2曲の傑作交響曲を、カラヤンがベルリン・フィルハーモニーを指揮した演奏で聴くアルバムです。彫琢された輝かしい音色と洗練の極致ともいうべき響きによる演奏が魅力のディスクといえるでしょう。