著者 : うかみ綾乃
居場所のないまま生きていくだけだった歯科衛生士の美波。付き合っていたはずの男が、勤め先の後輩と結婚するという。むしゃくしゃした気分のまま風に煽られるように町はずれの赤ちょうちんにたどりつくと、隣り合わせた西という男のボートレースの話に興味を引かれ、その店に足繋く通うようになる。西との出会いは、沈めたはずの記憶を呼び起こし、誰も愛せない彼女の深い場所に沈んでいくきっかけとなるが…。寄る辺ない女性の想いが、男の人生の時計を大きく動かしだす!
“紫城麗美”の筆名で官能小説を書いているテンコ。内向的な性格で男性経験はほとんどない。あるときAV撮影現場で出会った助監督の楠田と関係を持つ。テンコは性に奔放な麗美を装うことで自らを解放し、過激なセックスの快楽に酔い痴れていく。「あぁ、もっと欲しいの…」。すれ違いながらも、心と体の奥底から性愛を求め合う男女の官能小説。
生田流箏曲天道会の家に生まれた美人姉妹・京香と清香は四年に一度の祭事“蝮をどり”を目前に二人を支配しようとする箏奏者・笠原と禰宜・稲川の卑劣な罠に堕ちる。姉に嫉妬心を持つ清香は稲川の甘い誘惑に身を売り、笠原に呼び出された京香は計ったように現れた稲川に追いつめられ、二人の巧みな淫戯で嬲られてゆく。祭事当日、舞台が炎上し、姉妹を見守ってきた使用人・政巳は京香の手を取り蝮の棲む森へ踏み入る。京香の本能は剥き出しとなりー。団鬼六賞大賞受賞作が遂に文庫化!
十六歳で不幸な事件に巻き込まれ、心を閉ざして生きてきた美しい女・織江。幼少の頃からその美貌に憧れ、織江の事件を書いて小説家デビューした醜い女・由羽。同作の映画化を契機に再会した二人は感情をぶつけ合いながらも、編集者・尾崎の協力を得て奇妙な共同創作活動を始める。愛されたい、満たされたい…女の執念と嫉妬を描き切った傑作。
11歳の時、想いを寄せる年上の少年に犯され、沙織は性愛にわだかまりを持つようになる。17年後、モデルとして成功し婚約者と帰郷をした沙織は、その男、恭司と予期せぬ形で再会、攫われ監禁される。男の不思議な心遣い、物々しい拘束、沙織への行為は続いてゆく。二人の奇妙な生活、そして異形の愛の行き着く先は?
アラフォーを迎えて落ち目になった女優の麻矢は、元アイドルの桜とこずえを誘い新作映画を企画する。艶かしい媚態でスタッフを誘い、スキャンダルを揉み消すために股間に顔を埋める麻矢。「あぁ、感じちゃう。もっと上から下まで…お願い、監督」。一方、桜とこずえは濡れ場の撮影で我を忘れ、淫らに熱を溜めた下腹部を男の中心部に擦りつけたー。人気女流官能作家、待望の長篇新作!
この森にはね、蝮が出るのよ。誰も入っちゃいけないのよー伝統ある生田流箏の家に生まれ育った姉妹、京香と清香。二人の男の卑劣な罠によって、生来の激情が剥き出しになっていく姉。姉への複雑な嫉妬心から、自ら暗い罠に堕ちていく妹。そして、四年に一度の盛大な祭事“蝮をどり”の夜、聖なる森への入口が開くー愛と性を描き絆を描く渾身作。第二回団鬼六賞大賞受賞作。