著者 : ねじめ正一
ある日、デイケア先で喚きはじめた母は、気付かぬうちに認知症を発症していた。息子は、介護のために毎日、実家へ通い、一語一語逃さぬよう、母の「妄想」を聞き取り始めた…。生きることのおかしみやユーモアが全編に溢れる、新しい“介護小説”。母との別れを描く最終章を書き下ろしで収録。
小学五年生のノブオは、長嶋に心底憧れている、誰もが一目おく野球少年。詩人の父は行方不明、母は子供にも仕事にも無関心、友との別れや理不尽に負った怪我、出生の秘密…次々と苦難は襲いかかってくるけれど、「長嶋」を心の支えにぜんぶ乗り切るのです!すべての野球少年に捧げる、著者渾身の成長物語。
小学五年生のノブオは、誰もが一目おく野球少年。詩人である父は行方不明、母は働くことにも子どもにも無関心という悲惨な状況のなか、ひたすら長嶋に憧れ野球に打ち込みます。友との別れや理不尽に負った怪我、出生の秘密やほろ苦い初恋も、「長嶋」を心の支えに、ぜんぶぜんぶ乗り切るのです。
五十三歳の男が親友の妻と恋に落ちた時、彼らの地獄は始まった。詩神と酒神に愛された男・田村隆一。感受性の強いその妻・明子。そして、北村太郎は明子に出会って家庭も職場も捨て、「言葉」を得るー。宿命で結ばれた「荒地派」の詩人たちの軌跡を直木賞作家が描く傑作長篇小説。第三回中央公論文芸賞受賞。
拓也の父親は、家業の本屋がいのちである。北国酒田の商店街で地元に愛され営業を続けてきたが、新店舗ができた矢先、大火で二つの店舗が焼け落ちてしまう。人々の思惑と駆け引きが渦巻く中、書店と商店街の復興のため東奔西走する父。そして悪い仲間や深い友情の中で成長する拓也ー。被災者3300人に及んだ「酒田の大火」が炙り出す人情と青春の物語。
多感な少年たち、すり傷だらけの季節、海と工場と飛行場-。時代の風が、昭和30年代の町と人間を吹き抜ける。羽田空港に近い駅前商店街を舞台に少年たちの心と友情、家族の絆を描く長編小説。
穏やかだった高円寺北口「純情商店街」にも変化の波が訪れた。スーパー・マーケットの進出計画が持ち上がったのだ。商店街は浮足立ち、反対運動を始めることを決めた。前後して「江州屋乾物店」では、ばあさんが脳溢血で倒れてしまい、隣の「魚政」は店をたたんで吉祥寺でラーメン屋を始めることになった。少しずつ街は変わり始め、正一少年もまた一人悩みを抱えるのだった。