著者 : まさきとしか
東京のバーベキュー場で起こったヒ素による大量殺傷事件。記者の勝木は、十二年前の灰戸町一家殺害事件の、ただ一人の生存者、赤井三葉を思い出す。あの日、薄汚れたゴミ屋敷で一体何があったのか。そして少女は今ー。「ざまあみろって思ってます」北海道灰戸町。人々の小さな怒りの炎が、やがて灰色の町を焼き尽くすー。
学校から帰宅し、母親に捨てられたと知った小学生の純矢。母の親戚・歌子の家に預けられたがそこはデブ女、無職の中年、67歳の引きこもりや毒親の老婆など、純矢が「生きてる価値ない」と思う大人の吹き溜まりだった。捨て子の自分も同類だと不貞腐れていたある日、「歌子が双子の姉を殺した」と聞き探り始めるが。大人になれない大人たちの感動ミステリ。
ある大雨の夜、冴えない中年男・戸沼暁男が刺殺された。暁男の不倫相手の妄想女・真由奈や残された妻・杏子と子供たちなど交友関係や、家族を巡って真相に迫ろうとする女刑事・薫子だが、一向に進展を見ない。しかし、事件捜査がついに、暴いてはならない秘密をつきとめた。女たちの心の奥底にうずまく毒感情を描ききった、イヤミスを超える傑作、待望の文庫化!
小野宮楠生(33歳)は、ビルの清掃スタッフ・亀田礼子と元交際相手の山本若菜を殺害した容疑で逮捕・起訴されている。チャラい外見と「誰を殺そうと俺の自由だろ」という供述、逮捕時に笑顔でピースをするなどふざけた様子から「クズ男」と呼ばれ、彼を支援し続ける「クズ女」たちが現れるなど、話題に事欠かない。小野宮を担当する弁護士の宮原貴子は、調査を進めるうち彼が嘘をついているのではないか、という疑念を抱く。小野宮が幼少期に児童養護施設で過ごした宮城県M町へ赴き、彼と面識のあった宍戸真美という女性の存在をつかんだ宮原は、現在の真美に接触すれば小野宮の犯行動機が見えてくるのではと思ったが…クズ男はなぜ、快哉を叫びながら人を殺したのか。一気読み必至の心揺さぶる長編ミステリー。
主婦の小浜芳美は、新宿でかつての同級生、一柳貴和子に再会する。中学時代、憧れの男子を奪われた芳美だったが、今は不幸そうな彼女を前に自分の勝利を噛み締めずにはいられない。しかしー。二十年後、ふと盗み見た夫の携帯に貴和子の写真が…。「全部私にちょうだいよ」。あの頃、そう言った女の顔が蘇り、芳美は恐怖と怒りに震える。
守銭奴の母親。売れっ子イラストレータを自負する姉。そして、超マイナス思考の妹ー個性的な玉瀬家の面々が30年ぶりに一つ屋根の下で暮らすことに。果たしてどんな騒動が起きるのか!?新しい家族小説の傑作誕生!
北の小さな島で、代々娘一人を産み継ぐ祈祷の家系に育った熊金一子は、神と畏れられる祖母と「血」から逃れるため島を出る。やがて大人になり、男の子の母親になることを願う一子が産んだのはーやはり女だった。明生と名付け息子のように育て愛そうとするが、ある日明生が失踪。一子は「バチが当たった」と怯えていた。母娘の愛を問うミステリ。
犯人は、水底から現れて、水底へ消えて行った。ある大雨の夜に殺された冴えない中年男。不倫相手の妄想女、残された妻子、そして男の家族の苦い思い出となった、キャンプでの出来事…。事件の周縁をなぞるような捜査は、決して暴いてはならない秘密をつきとめる。女たちの心の奥底にうずまく毒感情が、少しずつ溢れ、歪み、凶器となって、人の命を奪うまでを描いた、イヤミスの衝撃作!
流産を重ね授かった最愛の息子が池で溺死。絶望の淵で母親の知可子は、息子を産み直すことを思いつく。同じ誕生日に産んだ妹に兄の名を付け、毎年ケーキに兄の歳の数の蝋燭を立て祝う妻の狂気に夫は怯えるが、知可子は歪な“完璧な母親”を目指し続ける。そんな中「あなたの子供は幸せでしょうか」と書かれた手紙がー。母の愛こそ最大のミステリ。
第41回北海道新聞文学賞受賞作「散る咲く巡る」ほか、現代を生きる女性の目に見えず手に取れないものへの思いを巧みなストーリーで描いた傑作。-ヒロインに寄せる作者のおもいが全篇をつらぬいている。感受性に富む、ファンタジックな佳篇-選考委員・原田康子氏。