著者 : エマ・ダーシー
アンは国内有数の若き実業家マットの個人秘書に採用された。 前職で性的ないやがらせを受けた心の傷がまだ癒えない彼女は、 プレイボーイと悪名高いマットの前では地味な服装に徹している。 初日から「僕に恋をするのはルール違反だ」などと言う傲慢な彼は、 きっと女性はみな自分に夢中になるとでも思っているのだろう。 がむしゃらに働くアンは、すぐにマットからの信頼を勝ち得、 二人は息の合った仕事ぶりで次々とプロジェクトを成功させていった。 ある夜、アンはマットから高価な真珠のチョーカーを贈られた。 彼は「感謝の印だ」と言うが、その目には激しい欲望の炎が見える。 男性的な情熱におののいたアンは、思わず逃げ出してしまい……。 富も権力もほしいまま、パワフルかつセクシーなヒーローを描く人気作家エマ・ダーシー。アンを失うことを恐れたマットは自分の欲望を封印します。いっぽう、一度は真珠も誘惑も拒んだアンでしたが、やがてマットを愛してしまったことに気づくのです。
天涯孤独のクリスティは亡き養父母の思い出をたどるため、 二人がハネムーンを過ごしたパリの高級ホテルを訪れた。 自分が他の客に比べて見劣りする服装をしているのは確かだが、 それにしても従業員たちが彼女を見てうろたえる様子は不可解だ。 見回すと、貴族のような品と男らしさが漂う男性に目が留まる。 気づけば、まるで彼を知っているかのように強烈に惹きつけられ、 そばの女性に嫉妬すら覚える不思議な感覚にとらわれていた。 すると突然、彼が振り返って怒りも露わにクリスティを凝視した。 初めて会う人なのに、いったいなぜ私をそんな目で見るの?
恋に破れ、傷心を癒やすため、ロビンはこの地に降り立っていた。 空港を出た彼女は、ある老婦人の命を危ういところで助ける。 すると、人に触れると未来が見えるという婦人が予言したのだ。 「大きな悲しみがやってくる……でもそれは運命の相手のため」 “相手”とは誰なのかをロビンが問うと、婦人はこう答えた。 「もちろん、あなたの後ろにいる人よ」はっと振り返ると、 そこに場違いなほど美しい男性を見出して、思わず見惚れた。 かけがえのない存在になるのに、彼の、不治の病の弟との結婚を 受け入れざるをえなくなるとも知らずに。
10歳で孤児になったカイラは、伯父一家に引き取られて育った。ここ数年海外で暮らし、5年ぶりに帰国して従兄に連絡すると、思いもよらない頼みごとをされてしまった。家出した妻を取り戻すために、ある男を誘惑してほしいというのだ。わたしは異性を惹きつける手管なんて、まるで知らないけれど…。言われるままに出席したパーティーで、ニックと名乗る大富豪と出会い、カイラは誘惑すべき男のことも忘れ、生まれて初めて恋におちた。そして会場を抜け出し、めくるめく一夜を過ごした翌朝、カイラは衝撃の事実を知るー従兄の妻とニックの電話を漏れ聞いて。「君の言うとおりにした。昨夜彼女は、僕のベッドにいた」
「君に会いたいんだ、テス」ニックからの意味深な電話に、テスは心底動揺した。プレイボーイで実業家のニックとはかつて一度だけ、情熱が燃えさかるような夜をわかちあった。だがその後、やはり仕事だけの関係でいようと突き放されたのだ。それが、どうして今ごろになって?いぶかるテスの脳裏に、ある恐ろしい疑念が浮かんだ。まさかニックは知ってしまったのだろうかー私が彼に知らせぬまま、ひそかに子供を産んだことを。
長く病を患ったせいで、養育資格を問われたキャリーは、最愛の一人息子を福祉事務所に取られてしまう。途方に暮れるキャリーの脳裏に浮かんだのは、ドミニク・サベジ。8年前、当時19歳だったキャリーが心から愛した人だ。とはいえ、ドミニクにとっては二人の関係は遊びでしかなく、泣きながら彼のもとを去って以来、一度も会っていない。富と権力を持つあの人なら、この窮地を救ってくれるかも…。藁にもすがる思いで、キャリーはドミニクのもとへ向かった。彼が息子の父親であるという秘密を、胸に抱えて。
その夜、ホテルが襲撃され、カレンの一卵性双生児の姉は恋人のハルをかばって絶命した。ハルの子を密かに生み、妹のカレンが育てているという“秘密”を彼に打ち明けて。重傷のハルから、息子に会わせてほしいと連絡が入り、病院に駆けつけると、カレンは思いもよらぬプロポーズを受ける。拒絶すると、結婚は姉の遺言だとハルは強引に押し切ろうとする。男の狡さから、姉を真剣に愛そうとすらしなかったのにーなぜ?痛々しいまでに暗い、ハルの目に思わずのまれそうになり、カレンは激しくかぶりを振った。この人は姉さんの恋人なのに。
ベサニーは人類学者の父が異国で死亡したという知らせを受けた。 生存を信じる彼女は、研究先である砂漠の国ベイラルに向かう。 現地に降り立ち、猛禽をうやうやしく運ぶ行列に出合ったとき、 そばにつき添う黒マントの美しい男が鋭い視線で彼女を捕らえた。 獲物を追うはやぶさに似た彼こそが、この国の首長ーー ザッカー・サディクだった。女一人では危険だと諭されるが、 ベサニーは自分で父親を見つけだす意志を崩さなかった。 それがザッカーの支配欲を刺激したのか、ベサニーは、 彼のベッドの囚われびととなってしまう……。
ティナは姉の結婚式のため、幼い息子とサントリーニ島へ向かった。旅の途中でギリシアの実業家アリと再会するとは思いもせず。6年前、ティナはアリに激しく惹かれ、すべてを捧げた。だが彼は去り、彼女はひとり身ごもった体で残されたのだった。真実を知ったアリは妊娠を黙っていたティナを責め、息子の父親になるため、すぐさま結婚しようと迫った。アリは、浮気をしたら親権を手放す婚前契約を結ぶと宣言し、二人きりで過ごす時間を取って夫婦の相性を確かめようなどと言う。条件の有無ではなく、愛のない結婚がいやなのだと心で叫びながら、今も彼に強く惹かれるティナに、抗うすべはなかった。
5歳になる息子を幼稚園に迎えに行った帰り道、 停車中の高級車から降りたった男を見て、スカイは凍りついた。 歳月を経ても、魅力的な姿は見間違いようがない。ルチアーノだ。 6年前、スカイはイタリア名家の長男である彼と愛し合っていた。 だが彼の弟が突然、自分もスカイと関係を持っていると言い、 あげくにスカイには身に覚えのない証拠写真まで持ち出してきた。 そして弟を信じたルチアーノは、罵声とともにスカイを捨てたのだ。 その彼がなぜここに……? スカイは混乱し、息子の手を握った。 ルチアーノに生き写しの、息子の手を。
依頼を受け、社長との面会に赴いたジョセフィンは凍りついた。 マイケル・ハンター。かたときも忘れることなどできない人。 3年前のあの日、妹は、彼のいとこの子を宿してしまっていた。 マイケルは、いとこと話をつけると約束してくれたが、 翌日、突然てのひらを返し、妹の落ち度だとなじったのだ。 去っていくマイケルに追いすがり、妹は車に轢かれて死んだーー いっときでも、彼を信じた自分が呪わしい。 ジョセフィンは激しく動揺しながら、立ち尽くしていた。 やがて彼への愛の狭間で、悶え苦しむことになるとも知らずに。
有名実業家の愛人の娘として生まれたバーナデッドは、後ろ指をさされて育ちながらも長年の夢を叶え、医師となった。その年の誕生日、彼女のもとに贈り主の名前のない花束が届いた。誰から?疑問を抱いたまま出掛け、一人の男と鉢合わせした。ダントンー6年前、思わせぶりな言葉で惑わせておきながら、私が懸命に語る理想を嘲り、翌日にはほかの女と去っていった男。彼は変わらぬ不敵な笑みを浮かべ、仮面舞踏会へと誘ってきた。“君が僕を見つける前に、君を見つけてみせる”と言って。私が本当は彼を忘れられずにいたと、見透かれているの?二度とあの人に振り回されたくないのに。彼女は不安に脅えた。
「僕の祖父の80歳の誕生日に、最高の美女をプレゼントしたい」社長のジェイクからそう切りだされ、秘書のメルリーナは頭を抱えた。彼はいつも彼女に無理難題をふっかけては楽しんでいるのだ。じつはメルリーナは密かにジェイクに想いを寄せていたが、プレイボーイの彼と堅実な自分では釣り合わないと諦めていた。でも、もしかしたらこれはチャンスなのかもしれない…。誕生日当日、メルリーナは今までとはまったく違う、華やかな衣装とメイクで着飾り、ジェイクと祖父の前に立った。感激した祖父が、あろうことかメルリーナと婚約すると宣言すると、ジェイクはそんなことは許さないと怒りだし、彼女の唇を奪った!
何度も求人広告に応募しているが、地味で冴えないソフィは、 いまだ一度も面接までこぎつけたことがない。 最後の頼みの綱だった秘書の仕事も、案の定だめだった。 落ち込んだソフィは、思い切って美容院のモデルをすることに。 結果、だれもが振り返る奇抜な赤髪にされてしまい……。 そんなときに、折あしく面接通知が舞い込んできたのだ。 面談に挑んだ彼女を待っていたのは、敏腕弁護士のジェイソン。 冗談も通じないほど堅物の男は、髪に目をあてたまま言い放った。 「きみを雇うかどうかは、ダーツで占って決めさせてもらう」
病院のベッドで昏睡状態から目覚めたジェニーは、医師や看護師から“イザベラ”と呼ばれて困惑する。ジェニーは友人イザベラと車に同乗し、事故に遭った。どうやら警察は、不幸にも亡くなった友人とジェニーを取り違えてしまったらしい。するとそこへ、イザベラのいとこを名乗る、イタリア大財閥の御曹司ダンテが現れた。余命僅かな祖父に会ってほしいという。耐えきれなくなったジェニーは人違いだと告白するが、ダンテは顔色一つ変えず、冷淡にこう言い放った。「刑務所に入りたくなければ、イザベラとして一緒に来るんだ」。
ある日、重役秘書のテッサが出社すると上司から急を告げられた。社長の大事な出張に随行するはずだった秘書が入院したため、代わりとしてテッサを推薦しておいたというのだ。敏腕社長のブレイズは全女性の夢の化身と言われる人物。そんな世界の違う男性につき従うのは荷が重いと感じる一方、彼への憧れの気持ちも否めず、テッサは引き受けることにした。宿泊先で仕事をしていると、突然ブレイズが髪に触れてきた。驚きのあまり頭が真っ白になりながらも、テッサは心に思った。たとえ一夜で終わっても、夢のような思い出が残せるなら…。
気難しい父親と暴力を振るう夫に怯えて生きてきたエリザベス。父と夫が相次いで亡くなり、自由になったのも束の間、追いうちをかけるように、傷心の彼女に影を落とす事件が起こる。こともあろうに、無実の罪で警察から告発されたのだ。エリザベスの頭には、知人のドメニコの名前が浮かんでいた。脚光を浴びている優秀な弁護士だが、威圧的なところもある男だ。とはいえ、他に頼みの綱はない。事務所を訪ねると、案の定、彼の態度は横柄で、不安感を覚えずにはいられない。それなのに、その男らしさにいつしか心惹かれ始める自分がいた。
キャスリーンは事故で脚に大怪我をし、声楽家になる夢を諦めた。ところがある日、訪ねてきた音楽の師である修道院のシスターに強引に連れだされ、とあるオーディション会場へ向かうことに。後遺症のせいで長時間立つこともままならない私を、いったい誰が採用してくれるというの?ウエストエンドの劇場に着くなり、キャスリーンは驚いた。そこで待っていたのは、新進気鋭の人気作曲家モーガンだった。促されるままなんとか1曲歌い終えた彼女に、結果が告げられた。「僕といる限り、君には最高のレッスンを受けさせよう」翌日、キャスリーンは胸騒ぎを覚えつつ、彼の屋敷へ向かうが…。