著者 : キム・ヨンス
書かないことで文学を生き抜いた詩人、白石(ペクソク) 北朝鮮で詩人としての道を断たれた白石の後半生を、現代韓国文学を代表する作家がよみがえらせた長篇作。 許筠文学作家賞受賞作 「あなた、もう死んだ人。 その冬の谷間であなたも凍りつき、あなたの歌も凍りついた。 でも、春に私はたしかに聞いた。あなたの歌をーー」 望んだけれど叶わなかったこと、 最後の瞬間にどうしても選択できなかったこと、 夜な夜な思い出されることは、ことごとく物語になり小説になる。 「夜は昼のように、昼は夜のように。水は火のように、火は水のように。 悪が善になり、善は悪になる。 その廃墟を見つめること、それが詩人のすることーー」 伝説の天才詩人、白石が筆を折るまでの七年間 一九五七年と一九五八年の間 創作不振の作家たちのための自白委員会 私たちがこの世の果てだと思っていたところ 無我に向かう公務旅行 七年の最後
「私はこの小説だけは鉛筆で書くことにした。 どうしてそうしたのかはわからない。 ただそうしなければならないように思えた」 韓国金泉市のパン屋「ニューヨーク製菓店」の末っ子として生まれ育った、キム・ヨンスの自伝的小説。 お店を切り盛りする母、作家を目指す息子を見守る父、グローバル化の波が押し寄せる中で何度となく転機を迎えるニューヨーク製菓店…… この世から姿を消しても心の中を照らし続ける“灯り”に思いを馳せる、静かで温かな余韻の残る短編を、韓国語原文と邦訳を一冊にしてお届けします。 『ニューヨーク製菓店』特設サイト 作品を深く楽しむことができる関連情報を随時更新しています。 作家ご本人による韓国語朗読音声も! キム・ヨンス作家による韓国語の朗読音声をYouTubeで配信しています。 CUON YouTube チャンネル 読者モニターの方々の声 ◎この小説は、韓国の現代史を背景に成長し、今はこの世から消えてしまった「ニューヨーク製菓店」という作家の「灯り」を通じて、読者の「灯り」を召喚する物語でもある。 自分という存在は、自分が消え去ったあとも、もしかして誰かの「灯り」になれるのかも知れない、作家が与えてくれたそんな希望のためだろうか、読後感は、オレンジ色の街灯にように優しい。 ーーshirotoraさん ◎キム・ヨンスさんは過去を見つめながら、未来を語る。 ーープレスさん ◎初めて読んだ作家の最初の一編に、こんなに入り込んで同化できるなんて。「感情移入」とか「共感」というのとはちょっと違う、いつの間にか自分のことのように追体験している気持ち。(…)著者の「誠実さ」と「潔さ」、それから「強さ」みたいなものが体温みたいにじわーっと伝わってくる作品です。ここから入ることができてよかった。 ーー寒天さん ◎あなたがもし今、暗闇の中で道に迷い途方に暮れていたら、この小説『ニューヨーク製菓店』をそっと手渡したい。暗闇をかすかに照らす道標(みちしるべ)として。 ーーyukiさん 【韓国文学ショートショート きむ ふなセレクション】 翻訳家きむ ふなが今お勧めする作家の深い余韻と新たな発見を感じさせる短編を 日本語と韓国語の2言語で読むことができるシリーズです。 韓国語の朗読をYouTubeで聴くことも可能です。
誰からも聞かれていないし、 誰にも話していないけれど、 誰かに話したい作家たちの話 “韓国の芥川賞”とも称され、韓国で最も権威ある文学賞「李箱文学賞」。 その大賞を受賞した作家は、受賞所感とともに「文学的自叙伝」を発表する習わしがある。 どんな本を読んできたのか、どのようにして小説を書き始めたのか、どんなふうに作品を書いてきたのかーー。 歴代の受賞者23名による文学的自伝エッセイ集。 日本語版特別収録 2005年(第29回)大賞受賞 ハン・ガンの文学的自伝「記憶の日向」 著者(掲載順) ユン・イヒョン、ソン・ホンギュ、ク・ヒョソ、キム・ギョンウク、 キム・スム、ピョン・ヘヨン、キム・エラン、キム・ヨンハ、 コン・ジヨン、パク・ミンギュ、キム・ヨンス、クォン・ヨソン、 キョン・ギョンニン、キョン・ミギョン、ハン・ガン、 クォン・ジエ、シン・ギョンスク、パク・サンウ、キム・ジウォン、 ユン・デニョン、ユン・フミョン、チェ・ユン、チェ・スチョル 翻訳者(掲載順) 古川綾子、橋本智保、関谷敦子、五十嵐真希、岡裕美、姜信子、 吉川凪、蓮池薫、斎藤真理子、呉永雅、生田美保、きむ ふな、 カン・バンファ、吉原育子、李聖和 まえがきより 李箱文学賞受賞作を発表した後に楽しみにしていることが一つある。 大賞受賞作家が書く学的自叙伝」を読むことだ。 この作品を書いた作家はどのようにして小説を書き始めたのか、どんな考えを持っているのか、どんな本を読んできたのか、どういうふうにして作品を書いているのかなど、作家に対する好奇心をふくらませてそれらの文章を読んでいる。 そして、私は毎回「受賞所感」だけでなく、作家自身の心のうちを率直かつありのままにさらけ出した「文学的自叙伝」に感動する。 一人の作家について知るつもりが、一人の人間についてさまざまな発見をすることになるからだ。 李箱文学賞とは 朝鮮を代表するモダニスト作家で詩人の李箱(イ・サン)の文学的功績を称え、文学思想社が1977 年に設立した韓国で最も権威ある文学賞。 日本の芥川賞に相当するとされ、前年の1月から12月までに文芸誌などで発表された中編もしくは短編の純文学作品が審査の対象となる。 これまでの最年少受賞者は、キム・エラン(当時33 歳)で、受賞作の「沈黙の未来」は『外は夏』(古川綾子訳、亜紀書房)に収録されている。最高齢受賞者はク・ヒョソ(当時59 歳)。 親子で受賞したケースもあり、ハン・ガンとハン・スンウォン、イ・ジェハとユン・イヒョ…
語りえない声、人の生を見つめた九つの短篇集。 ことばでは言えない生のためにーー。 「世の中の出来事は過ぎ去ってしまうと口を閉じる。 過去とは、犯人が現場に自分に有利な証拠だけを残して逃走してしまうのと似ている。」 現代韓国を代表する作家キム・ヨンスが、自らを物語ることばを持てなかった者たちの語りえない声に耳を澄まして書き上げた短篇集。 九本の短篇からなる本作には、王朝末期の朝鮮に赴くアメリカ人、伊藤博文を暗殺した安重根、一九三〇年代の京城(ソウル)、朝鮮戦争に従軍した中国人民志願軍兵士、そして現代のソウルに生きる男女などがモチーフとして登場する。 時代と空間はめまぐるしく変遷するが、作家はあくまで個人の内面に焦点を当て、「幽霊作家(ゴーストライター)」として一人称の語りに徹して物語る。 キム・ヨンスの作品は、歴史に埋もれている人間を描くことで歴史に挑もうとする。つまり、小説によって画一的な〈歴史〉を解体し、〈史実〉を再構築しようとする野心に満ち、歴史書と小説のどちらがより真実に近づけるのかを洞察する壮大な実験の場としてある。 簡単には終わらないであろう、冗談 あれは鳥だったのかな、ネズミ 不能説(ブーヌンシュオ) 偽りの心の歴史 さらにもうひと月、雪山を越えたら 南原古詞に関する三つの物語と、ひとつの注釈 伊藤博文を、撃てない 恋愛であることに気づくなり こうして真昼の中に立っている 解説 ことばでは言えない生のために……金炳翼(キム・ビョンイク) 作家のことば 訳者あとがき
<b>いま話題の韓国人作家が語る、 「文学をすること」の喜びと苦しみについてー 作家が作家に聞く、ロングインタビュー集。</b> 「人間というのはどうしてこうも情けない生き物なのか、 それがずっと知りたかったんだと思います」 (イ・ギホ) 「文学が私たちを驚かせるのは、そういうところだと思う。 骨ばったあらすじだけで残る物語より、あらすじの外側にある人生の ディテールと感覚」 (ピョン・ヘヨン) 「もう書いてしまって完結させた小説が不意に、 自分に語りかけてくるような感じがするときがあるよ。 たいてい聞こえないふりをするけど」 (ファン・ジョンウン) 「僕は、ストーリーではなくそれを解釈したナラティブが小説だと思っています」(キム・ヨンス) 「過去の経験にばかりとらわれていましたが、それからは人間が見えてきたんです。いまを生きる普通の人たちが」(クォン・ヨソン) <b>インタビュー掲載作家</b> ・イ・ギホ『誰にでも親切な教会のお兄さん、カン・ミノ』『原州通信』『舎弟たちの世界史』 ・ピョン・ヘヨン『アオイガーデン』『ホール』『モンスーン』 ・ファン・ジョンウン『誰でもない』『野蛮なアリスさん』『ディディの傘』 ・キム・ヨンス『世界の果て、彼女』『ワンダーボーイ』『夜は歌う』 ・クォン・ヨソン『春の宵』 ................................................................................. 「クオン インタビューシリーズ」は、さまざまな芸術の表現者とその作品について、広く深く聞き出した密度の高い対話録です。 ................................................................................. 違う存在の声 イ・ギホ/ノ・スンヨン/清水知佐子訳 ドライフラワー ピョン・ヘヨン/チョン・ヨンジュン/きむ ふな訳 落胆する人間 奮闘する作家 ファン・ジョンウン/チョン・ヨンジュン/斎藤真理子訳 キム・ヨンスというパズル キム・ヨンス/ノ・スンヨン/呉永雅訳 うれしい方を向いて クォン・ヨソン/ノ・スンヨン/橋本智保訳
詩人尹東柱の生地としても知られる満州東部の「北間島(プッカンド)」(現中国延辺朝鮮族自治州)。 現代韓国を代表する作家キム・ヨンスが、満州国が建国された1930年代の北間島を舞台に、愛と革命に引き裂かれ、国家・民族・イデオロギーに翻弄された若者たちの不条理な生と死を描いた長篇作。 〈国を奪われ、よその土地で暮らすかぎり、僕たちにできるのは僕たちではない他の存在を夢見ることだ。動かなくなった死体だけが自分が何者なのかを声に出して叫ぶ権利があった。そんな叫びを聞くたびに僕は、間島の地で生きていく朝鮮人は、死ぬまで自分が何者なのかわからない存在だということに気づいた。彼らは境界に立っていた。見方によって民生団にもなるし、革命家にもなった。そういう意味で彼らはつねに生きていた。生きていれば絶えず変化するのだから。運命も変わるということだから。〉--本文より 代表作といえる本作で、作家は韓国でも知る人の少ない「民生団事件」(共産党内の粛清事件)という日本の満州支配下で起こった不幸な歴史的事件を題材に、人間存在の普遍的真理を小説を通して探究している。 一九三二年九月 龍 井 一九三三年四月 八家子 一九三三年七月 漁浪村 一九四一年八月 龍 井 一九三二年九月 龍 井 編註 解説 その長い夜、私たちは歌えない歌、夜が歌う歌……韓洪九 著者あとがき 訳者あとがき
「どれほど簡単なことなのか。希望がないと言うことは。 この世界に対する信頼をなくしてしまったと言うことは。」 ーーファン・ジョンウン 国家とは、人間とは、人間の言葉とは何かーー。 韓国を代表する気鋭の小説家、詩人、思想家たちが、セウォル号の惨事で露わになった「社会の傾き」を前に、内省的に思索を重ね、静かに言葉を紡ぎ出す。 〈傾いた船、降りられない乗客たち〉 「私たちは、生まれながらに傾いていなければならなかった国民だ。 傾いた船で生涯を過ごしてきた人間にとって、この傾きは安定したものだった。」 ーーパク・ミンギュ 「みんな本当は知っているのに知らないふりをしていたり、知りたくなくて頑なに知らずにきたことが、セウォルという出来事によって、ぽっかりと口を開けて露わになってしまったのだ」 ーーファン・ジョンウン 「私たちが思う存分憐れみを感じられるのは、苦痛を受ける人たちの状況に私たち自身が何の責任もないと思うときだけだ。」 ーーチン・ウニョン 「「理解」とは、他人の中に入っていってその人の内面に触れ、魂を覗き見ることではなく、その人の外側に立つしかできないことを謙虚に認め、その違いを肌で感じていく過程だったのかもしれない。」 ーーキム・エラン ◎中島京子氏評「2018年の「この3冊」」(「毎日新聞」2018年12月16日) 《傾いた船に乗って沈もうとしているのは私たちだと感じている昨今、その苦しみを噛みしめながら書かれた言葉に打たれる。》 ◎武田砂鉄氏評「今日拾った言葉たち」(「暮しの手帖」2018年8-9月号) ◎武田砂鉄氏評「リレー読書日記」(「週刊現代」2018年6月16日号) ◎武田砂鉄氏評「心を開放する本。」(「ブルータス」2018年10月15日号) ◎武田砂鉄氏推薦「この夏おすすめする一冊 2018」(青山ブックセンター本店) ◎「セウォル号以後文学」の原点 2014年4月16日に起きたセウォル号事件。修学旅行の高校生をはじめ、助けられたはずの多くの命が置き去りにされ、失われていく光景は韓国社会に強烈な衝撃を与えました。 私たちの社会は何を間違えてこのような事態を引き起こしたのか。本書は、セウォル号事件で露わになった「社会の傾き」を前に、現代韓国を代表する小説家、詩人、思想家ら12人が思索を重ね、言葉を紡ぎ出した思想・評論エッセイ集です。 本書に寄稿している作家たちの文学作品は、近年、日本でも広く翻訳出版され、多くの読者を獲得するようになりました。それら新世代の作家が深く沈潜した場所から発した研ぎ澄まされた言葉の数々は、揺るぎない普遍性を獲得し、「震災後」の世界を生きる日本の私たちの心の奥深くに届くものであると確信しています。 《本書は韓国で増刷を重ね、多くの人に読まれてきました。キム・エラン作『外は夏』に代表される韓国の「セウォル号以後文学」の原点といえる本書を通して、韓国の作家たちが喪失と悲しみにどう向き合ったのかを知っていただければと願っています。》
軍事政権下の1980年代の韓国社会を主人公15歳の少年を通して、寓話のように戯画化した作品である。 本作に度々登場するおびただしい宇宙的な数字は、数の世界を情緒的なレベルへと導く。「僕」は量子論の世界を知り「他の宇宙」の可能性を信じる。「3000億分の1」という地球の孤独と「1065億分の1」という「僕」の孤独。その宇宙的な孤独に出会うのと孤独を宇宙化することの間で、「僕」は成長していき、読者は宇宙的な労わりと癒しの瞬間と対面することができる。その労わりは「1065億個の中の一つというのは、ないのに等しいことではなく、とても特別なことを意味する」ということ、「私たちの夜が暗い理由は、私たちの宇宙がまだ若くて成長しているから」と。
ある青年が図書館に貼ってある詩を偶然読むことから始まる恋愛ストーリー 『世界の果て、彼女』。 新婚旅行にソウルにきている日本人のハトコを案内する、30歳になったばかりのアタシ 『君たちが皆、三十歳になった頃』。 世界のいろんな都市のガイドブックを作って放浪する若いカップルの物語 『笑っているような、泣いているような、アレックス、アレックス』。 など、ユーモアと人間に対する、著者の愛情たっぷりの7つの作品集です。