著者 : キャスリ-ン・E.ウッディウィス
1830年、「川の魔女号」はミシシッピ川をナチェズに向かって処女航海をしていた。船主アシュトンと結婚したばかりのリアリンは、深いエメラルド・グリーンの瞳に溢れるばかりの幸福感をたたえ、夫を見つめるのだった。これから二人は、リアリンの父と姉に結婚の報告に行くところだった。そんな静寂をうち破るように船首が騒がしくなった。海賊の急襲だ。激しい応酬のなか、アシュトンはライフルで撃たれてくず折れ、リアリンも船べりに追いつめられ川に転落していく。水面に浮かび、意識が遠のくなか、リアリンは夫の死を覚悟するのだった。
18世紀、霧のロンドン。最高の贅沢を身につけた誇り高いレディ、シャナは、今、窮地に陥っていた。21歳の誕生日までに結婚相手を見つけなければ、父にどんな男を押しつけられるかわからない。一代で豪商に成り上がり、今やカリブ海のロス・カメロス島の領主となった父の野望は、シャナを名門に嫁がせ、由緒ある名前を手にすることだった。約束の日は迫る。あせったシャナは、ある日、死刑囚との偽りの結婚で父を欺くことを思いついた。「あとは、悲しみにくれる未亡人のふりをすればいいわ」選んだ男はルアーク。彼は、傲慢にも一夜を共にすることを条件に、シャナのプロポーズを受け入れた。
死んだはずのルアークが生きていた!父を欺くため、偽りの結婚を遂げたシャナの夫。死刑囚だった彼は今、奴隷としてロス・カメロス島に送りこまれてきたのだ。不安にかられるシャナ。が、心は次第に彼に魅せられていく。あげくのはて、ルアークに言い寄るミリーへの嫉妬から、シャナは彼を島から追放してしまった。その騒ぎの中、シャナは海賊の島、メアズヘッドに掠奪される。「逃げ出さなくては…」海賊たちの目は欲望にぎらついている。穴の底に落とされ、弄ばれ、もうこれまでという時、目の前に差し出された男の手は、あろうことかルアーク、その人だった。
時は、1066年。イギリスは今まさに、ノルマン軍の手中に落ちようとしていた。ダーケンウォルドの領主の一人娘、エイスリンもまた、血なまぐさい戦乱に巻きこまれた。父や部下たちは目前で惨殺され、自分は母と共に奴隷という屈辱の身の上である。傷ついた心のエイスリンは、はげしい憎しみと愛の中に身を投じていくのだった。