著者 : キャスリ-ン・E.ウッディウィス
1066年。イギリスはノルマン軍の手中に落ちようとしていた。ダーケンウォルドの領主の一人娘エイスリンも、戦乱に巻き込まれ、父やその部下たちは目の前で惨殺される。エイスリンも、命はたすかったものの、母とともに奴隷という屈辱の身の上にあった。誇り高く、ブロンドの髪とすみれ色の瞳の美しいエイスリンを、略奪の騎士ラグナーは無理矢理に自分のものにしようとする。やがて、新して領主ウルフガーが入城。エイスリンは傷つき、激しい憎しみと愛のうねりの中にのみこまれていく。
エイスリンは、いつしかウルフガーの孤独の影にひかれていった。父の領土を略奪し、自分を奴隷としてひざまずかせる男からの寵愛。ふたりの魂は複雑に絡み合い、運命の糸は紡がれていく。身篭ったエイスリンは、その新しい命があの狡猾な男ラグナーの子ではなく、愛するウルフガーの血を引くものであってほしいと望み苦しむ。略奪と愛に、名誉を掛けて激しく戦う騎士たち、愛に揺れ動く美しい女たち-11世紀のイギリスを舞台に繰り広げられる、壮大なる長編歴史ロマン。
1799年、イギリス。ヘザー・シモンズは17歳になったばかりだというのにすでに両親はなく、冷酷な伯母のもとで辛く希望のない日々を送っていた。そんな折、伯母の弟ウィリアムがやってくる。アイリシュの血をひいた美しいヘザーをみるなり、好色な彼は甘言を重ねてロンドンに連れ出した。罠と気づいたヘザーに襲いかかるウィリアム…もみ合ううちに胸にナイフが突き刺さる。「私は人を殺してしまった。」背後から呼びかける追手の声にすべてを諦めた彼女だったが…。
貿易船フリードウッド号の船長、ブランドンと一夜を共にしたことから、ヘザーの人生は大きく変わっていく。子供をみごもっていたのだ。ヘザーは子供のために偽りの結婚式を挙げる。ブランドンの故郷アメリカに向かった二人を待ち受けていた、人々の好奇のまなざし、様々な事件、心の葛藤…それでも、やがて本当の愛が芽ばえ、甘い日々が続くようになった。そんな折、不審な事件が相次いで起こる。しかも、その疑いがブランドンにかけられているというではないか…。
サクストン卿夫人となったエリエンヌは、ついに不気味な夫に身をまかせ、狂おしいほどの歓びにひたる。そして、夫の背中にある傷跡をたどりながら、わたしはこの人の妻なのだ、と自分にいいきかせた。しかし、ある夜、闇に浮かぶ夫の瞳にクリストファーの影を見て、歓びのさなかに、かれの名を口にしてしまう。静かにベッドを去る夫に、深く自分を責めるエリエンヌ。あくる日、夫の不在中に、夜盗との格闘で深手を負ったクリストファーが館にかつぎこまれた。
1863年、南北戦争のさなかのアメリカ。南部の由緒正しき家に生まれたアライナは、17歳にしてこの世の地獄をすべて見尽くしたかのようだった。戦禍で両親と兄を亡くしたばかりか、スパイの烙印を押され、北軍に猛獣狩りさながらに追われる身となってしまったのだ。彼女は愛する故郷バトン・ルージュに別れを告げ、少年の姿に身を変えて伯父の住むニューオーリンズへと向かう-。さらに苛酷な試練が待っているとも知らずに。港に着いたとたん新たな苦境に陥ったアライナを浮浪少年と信じて救ったのは、憎むべきヤンキーの大尉コール・ラティマーだった…。南北戦争を背景に、喜び、悲しみ、そして愛を壮大に描く、ウッディウィスの大河長編。
アライナの従姉ロバータの術中に陥り、ロバータを妻にしたコールだったが、そんな結婚生活が幸せであろうはずはなかった。一方、アライナは、娼婦のふりをしてコールと愛し合ってしまったという、あまりにも重い秘密を独り胸に抱きながら、自分が本当は女性であるということさえ告げられずにいた。ある夜、舞踏会に出かけたロバータの部屋を片付けていたアライナは、たくさんの豪華なドレスを前にして、思わず“少年アル”でいることを忘れてしまう。そこへ突然、コールが帰ってきた。透げ場もなく、ついに正体を見破られてしまった彼女は、行く当てもなくクレイグヒュー家を飛び出す…。
18世紀、霧のロンドン。最高の贅沢を身につけた誇り高いレディ.シャナは、今、窮地に陥っていた。21歳の誕生日までに結婚相手を見つけなければ、父にどんな男を押しつけられるかわからない。一代で豪商に成り上がり、今やカリブ海に浮かぶロス・カメロス島の領主となった父の野望は、シャナを名門に嫁がせ、由緒ある家柄を手に入れることだった。約束の日を目前に、追いつめられたシャナは、死刑囚との偽りの結婚で父を欺くことを思いつく。「あとは悲しみにくれる未亡人のふりをすればいいわ」。選ばれた男はルアーク。彼は、傲慢にも一夜を共にすることを条件に、シャナのプロポーズを受け入れた。
ルアークが生きていた。父を欺くため、死刑囚との偽りの結婚を遂げたシャナだったが、死んだはずの“夫”ルアークが奴隷としてロス・カメロス島に送り込まれてきたのだ。彼女は不安に捕らわれながらも、次第に彼に魅せられていく。しかしシャナは、ルアークへ言い寄るミリーへの嫉妬から、心とは裏腹に彼を島から追放してしまう。そんな騒ぎの中、海賊の島メアズヘッドに捕らえられたシャナ。欲望にぎらつく海賊たちの目、目、目…。「逃げ出さなくては」。穴の中に突き落とされ、弄ばれ、もうこれまでという時、目の前に差し出されたのは、あろうことかルアークその人の手だった…。
エイスリンは、いつしかウルフガーの孤独の影にひかれていった。父の領土を略奪し、自分を奴隷としてひざまずかせる男からの寵愛。しかし、それは単なる囚われの愛人に対するものではなくなっていた。ふたりの魂は複雑に絡み合い、運命の糸は紡がれていく。身篭ったエイスリンは、その新しい命があの狡猾な男ラグナーの子供ではなく、愛する人のウルフガーの血を引くものであってほしいと望み苦しむ。略奪と愛に、名誉を賭けて激しく戦う騎士たち、愛に揺れ動く美しい女たち-。11世紀のイギリスを舞台に繰り広げられる、壮大なる長編歴史ロマン。
時は1066年。イギリスはノルマン軍の手中に落ちようとしていた。ダーケンウォルドの領主の一人娘エイスリンも、血なまぐさい戦乱に巻き込まれ、父やその部下たちは目の前で惨殺される。エイスリンも、命はたすかったものの、母とともに奴隷という屈辱の身の上にあった。誇り高く、ブロンドの髪とすみれ色の瞳を持つ、美しいエイスリンを、ノルマン軍の略奪の騎士ラグナーは無理矢理に自分のものにしようとする。やがて、新しい領主ウルフガーの入城を知らされる。エイスリンの心は傷つき、激しい憎しみと愛のうねりの中にのみこまれていくのだった。
18世紀末の北部イングランド。エリエンヌは、父が連れてくる、財産以外には何の魅力もない求婚者たちにうんざりしていた。エリエンヌの心をとらえているのは、ただひとり-父を侮辱し、弟に傷を負わせた家族の敵、クリストファーだけであった。日ごとクリストファーに惹かれていき、結婚話に耳を貸さない娘に業を煮やした父は、ついに、エリエンヌを結婚を条件とした競売にかける。競売の日、エリエンヌをせり落としたのは、呪われた館の領主、仮面と黒ずくめの服で傷だらけの全身を隠したサクストン卿だった。
サクストン卿夫人となったエリエンヌは、ついに不気味な夫に身をまかせ、狂おしいほどの歓びにひたる。そして、夫の背中にある傷跡をたどりながら、わたしはこの人の妻なのだ、と自分にいいきかせた。しかし、ある夜、闇に浮かぶ夫の瞳にクリストファーの影を見て、歓びのさなかに、かれの名を口にしてしまう。静かにベッドを去る夫に、深く自分を責めるエリエンヌ。あくる日、夫の不在中に、夜盗との格闘で深手を負ったクリストファーが館にかつぎこまれた。ベッドに横たわるかれの背中にエリエンヌが見たものは、夫と同じ大きな傷跡だった…。