著者 : シャロン・サラ
彼女もあんな顔で式を挙げたくないでしょう── 元婚約者の心ない言葉を思いだし、リリーは涙をぬぐった。 事故のせいで頬に残った醜い傷跡にそっと触れる。 いっそのこと、誰も知らない土地に行って人生をやり直そう。 そう思った矢先、ふと新聞の求人記事に目がとまった。 “料理人求む。オクラホマ州クリントン” 秘書の経験しかないリリーだったが、応募に迷いはなかった。 そして雇い主の大牧場主ケイスに会った瞬間、彼女は確信した。 ロサンゼルスからはるばるここに来たのは、間違いではなかったわ。 ケイスはたじろぐこともなく、澄んだ目でリリーを見つめていた。 シャロン・サラの真骨頂、さわやかな涙と感動を誘うロマンス。
ある日、ホリーは恋人がたくらむ悪事の計画を立ち聞きした。恐ろしくなって逃げ出そうとしたところ、気づかれて無理やり飛行機に乗せられてしまった!このまま殺されて空の塵になるものと覚悟したが、運よくパラシュートで脱出し、頭を負傷しながらも着地に成功した。やっとのことで一軒のキャビンにたどり着くと、そこにはセクシーで魅力的な男性がいて、ホリーは思わず息をのんだ。だが相手はこちらに銃口を向け、名を名乗るよう鋭く命令してきた。いったい…私は誰?なんと、彼女はすべての記憶を失っていた!男が言った。「記憶喪失なんてへたな言い訳が通用すると思うな」
図書館司書のアメリアは夜間にウェイトレスの仕事を始めた。品行方正な彼女がめがねを外し、きわどい服を着るのは、退屈な人生を変えるためにどうしても資金が必要だから。このことが知れたら、町中が大騒ぎになるだろう。ある晩、思わぬ客がーアメリアが長年片想いをしているタイラー・サヴィジが来店した。こんな姿をタイラーに見られたのも衝撃だったが、彼の注文にはさらに驚いた。彼は目の前のセクシーなウェイトレスがお堅い司書とは気づかず、陶酔したまなざしで「俺が欲しいのはきみだよ」と言ったのだ!(『夜は別の顔』)。田舎暮らしの司書ジョイはバレンタインの夜、初めて訪れたロンドンのレストランで著名な大物スターのマーカス・バレンタインと出逢い、ひと目で心を奪われてしまう。そして思いがけず彼からダンスに誘われたとき、彼女は勇気を出して承諾した。いつもは地味な私だって、今夜くらいは楽しんでもいいはず。そう思いながら踊っていると、不意に唇を重ねられ、ジョイは我を忘れて激しく応えた。するとその直後、彼女をふしだらな女性だと思い込んだマーカスは打って変わって険しい顔になり、侮蔑の言葉を浴びせてきた!(『蝶になった司書』)。
『愛すれど君は遠く』生死の境を彷徨い、意識朦朧としたサラが目を開けると、大きな人影がー孤高の男、マッケンジー・ホーク。行方不明になった兄を救えるのは彼しかいないと、サラは命がけで厳寒の雪道をひた走ってきたのだ。「わたしの名前はサラ。助けて…お願い」彼女は低体温症で瀕死のところを救ってくれたホークを、美しい天使のように感じて安堵しながら、また眠りに落ちた。だが、元CIA局員の彼はあり余る財産はあれど、人を信じる心は持ち合わせていなかった。彼女が目覚めたら、こう告げるしかないー帰ってくれ、と。『もう一つのクリスマス』魅力的な同僚医師ダンとの将来をかつて密かに考えていたセイラは今、彼の子を妊娠していた。でもそれは切ないことに、不妊症の妹の代理母としてにすぎなかった。セイラの知らぬ間に妹がダンを誘惑して、結婚してしまったのだ。ダンとはもう結ばれることはないと頭ではわかっていても、いまだに彼への想いを断ち切ることができずにいた。そんなある日、セイラは車にはねられそうになり、重傷を負う。ダンが私の身を案じてくれるのは、おなかの赤ちゃんが大切だから。それ以外の気持ちがあるなんて、望むべくもない…。
出会ったばかりの男性にボディガードを頼むなんて。アニーは自身の思いがけない行動に驚いていた。悪党に絡まれているところを救ってくれた、ゲイブと名乗る謎めいた放浪者に、ひと目で強烈に惹かれてしまったのだ。その日以来、ゲイブは片時もアニーのそばを離れることなく、ときに厳しく見守り、またときに情熱の炎で包みこんでくれた。じつはアニーは不治の病を患っていた。残された時間はあと僅か。どうか1日でも長く、彼と一緒にいられますように。アニーはまだ知らなかったーゲイブの驚くべき正体も、彼がアニーを救うためにすべてを投げ打とうとしていることも。
遠い夏。16歳のキャラはデビッドと出逢い、恋に落ちた。だが必ず迎えに来ると誓ったのに、デビッドは戦場に赴き…永遠に帰らぬ人となったのだ。キャラのお腹に赤ん坊を残して。いまは静かに暮らすキャラの前に、ある日、ひとりの男性が現れた。「キャラ」懐かしい声…ああ、デビッド!彼は生きていた!キャラの頬に涙が伝う。これが夢なら、覚めてほしくない。あの頃と変わらぬしぐさで、デビッドに抱かれ、キャラは恍惚に浸った。まるで時を取り戻そうとするかのように、甘い蜜月を過ごす二人。けれど別れは唐突に訪れた。ほどなくして、彼が姿を消したのだ。“愛している”という走り書きと婚約指輪を残してー。
両親にほったらかされ、孤独な子供時代を過ごしたアリー。今、諜報員となった彼女は、カリフォルニアへ向かっていた。10年前から任務を離れている伝説的人物イーストを説得し、なんとしても復帰させるという密命を帯びて。だが初めて会った瞬間、アリーは心を奪われてしまう。わたしは彼を待っていた気がする。生まれてから、ずっと。冷静な判断力でこれまで任務に失敗したことのないアリーだが、今回は思った以上に困難なものになりそうだった。彼といると孤独が癒やされ、仕事さえ忘れそうになるから…。ところが、アリーがやってきた目的を知るや、イーストは彼女に憤然と命じた。「口を閉じてここから出てってくれ!」
リビーは恋人のサムに浮気を疑われ、ひどい喧嘩をした。サムに嫌われたと思った彼女は、妊娠を告げないまま彼の前から姿を消す。移住先でサムにそっくりな息子を産むと、リビーは花屋に勤めながら新しい人生をスタートさせた。それは、貧しくも幸せな日々だった。だが8年後、リビーは交通事故に遭い、意識が戻らず…(『小さな約束』)。私の子をつれていかないで!突然何者かに襲われ、まだ幼い息子ごと車を奪われたアンドレア。気を失い、次に目覚めたときは病室だった。そばにはフリンという屈強そうな男性の姿が。排水路に落ちていた車を発見し、中にいた彼女の息子を助けてくれたらしい。さらに彼から、保護のため君たちを自宅でかくまうと言われー(『天使を守りたくて』)。婚約者にぼろ布同然に捨てられたヘレンは家も仕事も失い、絶望のどん底にいた。だが、ある結婚式で新婦の兄オリバーから熱視線を注がれる。彼は、女性が放っておかない、理想の独身貴族。彼の男らしい魅力に胸がざわめくヘレンだったが、もう恋に傷つくのが怖くて思わず化粧室に逃げこんだ。すると、オリバーが追ってきた!(『失恋に終止符を』)。“癒やし”の三傑による出色のアンソロジー!
“48時間以内に結婚し、最低1年は夫と一緒に暮らすこと”亡き祖父がケイシーに課した、遺産相続の条件。その狙いは、一家の顧問弁護士と彼女を結婚させることだった。だが鼻持ちならない弁護士を忌み嫌うケイシーは、屋敷を飛び出すと、男性客でごった返す街のバーに飛び込み、声を張り上げた。「夫が必要なの。独身で、最初に立候補した人と結婚するわ!」静まり返る店内に、たったひとり名乗りを上げた男がいた。奥の暗闇から現れた美しい顔と世にも冷たい瞳を見た瞬間、ケイシーは心を奪われたーその男、ライダー・ジャスティスに。こうして、昨日まで他人だった夫との、奇妙な結婚生活が始まった…。
体系に劣等感を抱くハリィは四姉妹の長女だが、いまだ独身。すると誕生日に、既婚の妹たちから旅行をプレゼントされた。男性が大勢いる場所に行けば、結婚相手が見つかると言われて。しぶしぶ出発した彼女は、滞在先で出逢った実業家ジェイクに一目で恋するが、そばにはグラマーなブロンド美女がいて、彼に熱い抱擁をして…(『奇跡の花嫁』)。ラプデイは横暴な雇い主の家に住み込み、秘書とは名ばかりのメイドのような仕事をしている。だが花瓶を割ったと濡れ衣を着せられてくびになり、途方に暮れた。頼れる人などいないなか、医師のアンドリューが診療所の受付係として雇ってくれることに。彼女はアンドリューへの想いを募らせるが、なぜか彼はよそよそしくて…(『ドクターの花嫁』)。大学院生のハンナは郊外で生後半年の姪を育てながら、つましく暮らしている。ある日、家の近くで車の事故が起き、怪我人のドミニクを助けたハンナは、一目で恋におちてしまった。ところが後日、偶然目にした経済誌にドミニクの写真を見つけて驚くーなんと彼はフランスの大富豪で、ハンナには縁のない世界に住む人だった!(『天使のとりこ』)。
ある朝目覚めると、ハーレーは“結婚”していたーベッドの隣にいた、大柄でハンサムな見知らぬ男性サムが言う。「ぼくは君の夫だ」昨夜、ハーレーは親友の結婚式でお酒に酔ってしまい、何一つ覚えていなかった。過ちを認められず、こっそり逃げ出して自宅に戻るが、サムが強引に結婚の足場を固めようと押しかけてきて…(『熱いハプニング』)。亡き妹夫婦の娘を今すぐ引き取らないと!エリンは姪の父方の伯父チャンスの牧場に急いだ。半年ごとに交代で3歳の姪を世話してきたが、彼は養育に関して交わした約束を破ったらしいー女性を家に引き入れ、同棲しているなんて。だがほどなく、それは誤解とわかり、姪にせがまれて、エリン自身が彼の家で暮らすことになる(『生涯で一度のチャンス』)。サマンサは母に捨てられ、父にも冷たくされて孤独を味わったので、人一倍幸せを夢見てきた。今、年老いた大叔母と暮らすため故郷へ戻ってくると、不運にも隣家には、かつて仕事を取って彼女を切り捨てた元恋人ゲイブがいた。今や一財産を築いたようだ。傷ついたサマンサはゲイブを避けようとするが、彼の瞳には欲望の炎が…(『めぐってきた初恋』)。
『花嫁の困惑』-身寄りなきウエイトレスのマリリーは、ハンサムで裕福な客ジャスティンに密かに憧れていた。吹雪で足止めを食った彼を小さな自宅に泊めた夜、マリリーはついに彼への想いを遂げる。だが翌朝目覚めると、彼は姿を消していた。彼女の身に、愛の証だけを残して。『かわいい訪問者』-仕事に集中できないのは社長のデインが休養中だから?そんなアシスタントのキャスリンに1本の電話が。「双子の赤ちゃんを玄関で見つけた。助けてくれ」彼女はボスのもとに急行した。ああ、困ったわ。1週間ぶりに会うデインは、いつもよりもっとすてき!『愛が試されるとき』-キットは婚約者ラファエルの故郷スペインで挙式する予定だった。だがラファエルが事故で負傷し、彼の強い希望で手術前に式を行った。その後、妻として手術の成功を喜んだのもつかのま、衝撃の事実がキットを襲う。夫は記憶を失い、新妻のことも忘れていた…。『奇跡に満ちた一日』-ある朝、アナスタージャは玄関を開けて驚いたーそこにかわいい子猫が置かれていたのだ。おかげで仕事に遅刻してしまい、上司のロスに事情を話すと、今日はバレンタインデーだと言われる。いったい誰から?首をひねる彼女のもとに、さらなる贈り物が…。シャロン・サラらが贈る珠玉の短篇。
「離婚しましょう」妻のヘイリーは涙を流し、そう告げた。一人息子を白血病で喪い、悲しみに打ちのめされた彼女は、息子と瓜二つの夫サムを見ることすら耐えられなくなった。愛ゆえに別れを受け入れたサムだったが、3年後、突然ヘイリーから電話がかかってくる。ハリケーンで建物に閉じ込められ、数日が経っているという。負傷して救助も期待できず、サムを頼ってきたのだ。あのとき放してしまった愛する者の手を、再びつかむチャンスが与えられたーしかし、同じ建物には逃走中の凶悪犯が潜み、彼女の身に危険が迫っていて…。
エンジェルは7歳で最愛の母を亡くしたあと、暴力を振るう父から逃れ、里親の家を転々としてきた。大人になった今も“我が家”を知らず、方々を渡り歩いている。先日、雇主から嫌がらせを受けて勤め先を辞めたのを機に、新天地を求めてヒッチハイクをすることに決めた。ある大雨の夜、エンジェルは美しい瞳の男に拾われる。ロイヤルと名乗る彼は、今夜家に泊めてくれるだけでなく、家政婦の仕事を提供してくれるという。あまりに親切な申し出に戸惑いながらも彼女は承諾するが…。
冷たい親に育てられた18歳のヘイリーにとって、恋人マックが心の支え。だがドライブ中に不幸な事故が起き、マックだけが重傷を負ってしまう。彼の家族から面会すら拒絶され、失意のヘイリーは彼に別れを告げることなく故郷を去った。それから10年後ー(『初恋を取り戻して』)。18歳のシルヴィは、外国から帰国中の伯爵クリスチャンと出会って恋に落ち、身も心も捧げた。遠方へ戻っていった彼からの連絡を待ったが、手紙1通届かない。気づけば、お腹の中で彼の子が育っていた…。月日は流れ、いま再び、目の前にクリスチャンが現れる(『伯爵との消えない初恋』)。女手一つで育ててくれた母を病で亡くしたセイディ。数カ月前に引っ越してきた彼女は、隣に住む魅力的な独身貴族のバックに想いを寄せているが、彼にパーティへ誘われても、内気なためにいつも断っていた。だがあるとき、とうとうバックと二人きりになり…(『セクシーな隣人』)。天涯孤独のベアトリスは手紙で弁護士事務所に呼びだされた。そこにいたのは、さる国の次期君主タリク。弟と別れてほしいと多額の手切れ金を提示され、寝耳に水の話に驚く。人違いよ、彼の弟なんて知らないもの。ベアトリスは小切手を拒んだが…(『シークと乙女』)。
出逢ったばかりなのに、どうしてこんなに目が離せないのかしら。アニーは、唇を噛みしめ、こらえきれず胸をかき抱いた。不良少年に絡まれているところを助けてくれたとはいえ、ゲイブという名以外、素性もわからぬ謎の放浪者だというのに。その日以来、彼もまた片時すらアニーから離れようとしないのだ。誰にも打ち明けていないが、アニーは不治の病を患っていた。人知れず命の幕を閉じるつもりでいたが、ある日気づいてしまう。彼は私の魂の片割れだと。人生が終わる間際に出逢うなんてー運命の皮肉さに、胸の奥の、さらに奥深いところで心が痛んだ。
シェリーの人生でいちばん幸運だったのは、初恋相手が人生の伴侶になったことだ。ハイスクールでの出会いから何年たっても、シェリーは少女のような気持ちで夫に恋をしつづけ、ジャックも情熱的な愛で応えてくれる。ここ数年、FBIの潜入捜査官である彼とは離ればなれの日々だったものの、いま捜査中の事件が解決すれば、またふたり一緒に暮らせるのだ…。しかし、運命は残酷にも、ジャックが捜査中に凶弾に倒れ、行方不明になったという知らせを届ける。夫婦の絆を試すかのように、涙にくれる彼女をさらなる試練が襲いー。
ニコールは6週間前、事件に巻き込まれ、頭を銃で撃たれた。一命は取りとめたものの、いまだに記憶障害があって言葉もうまく話せず、気分はふさぎがちだ。何ひとつ満足にできなくなってしまった彼女を、恋人のドミニクは限りない優しさで支えてくれていたが、ある日、不思議な出来事が起こり…(『優しさに包まれるとき』)。ジャスティーンは友人の結婚式でベネチアを訪れ、魅力的なイタリア人男性のウインクに悩殺される。翌日、不注意で運河に落ちそうになった彼女を救ったのは、思いもかけない人物ー昨日から脳裏を離れないウインクの男性リカルドだった。偶然にも、彼が友人の知り合いだったことに運命を感じながらも、恋に臆病なジャスティーンは…(『愛はベネチアで』)。孤児だったキャサリンは、生後まもない女の赤ちゃん、ボニーを養子に迎えることに。ボニーの父に引き取る意思がないと確認するためネバダ州を訪れると、現れたのはコールと名乗る逞しく自信に満ちた男性。ボニーの亡き父の兄だという彼は、驚いたことに赤ん坊を引き取りたいと言いだし、キャサリンに便宜結婚を持ちかけた!(『天使に魅せられて』)。