著者 : シャーロット・ラム
パーティの間じゅう、ナターシャは部屋の隅で微笑んでいた。今日、突然フィアンセから婚約解消を言い渡された彼女には、悲しみにくれる心の置き場がわからないのだ。そんなナターシャを、熱を孕む瞳で見つめるひとりの男がいた。敏腕経営者でプレイボーイと名高い、ジョー・ファラルだ。わけもわからずナターシャが、震えて吐息をのむと、ジョーは彼女の手を優しく取り、そっと外に連れだしーいますぐ消えてなくなりたいナターシャは身をゆだねたのだ。一夜の夢に。その代償に、妊娠してしまうとは思いもせずに。
充実したケリーの人生で唯一の問題は、夫ドルーとの関係だ。もともと、ドルーはケリーの父親の会社を手に入れたくて、彼女は両親から自由になりたくて、便宜的に結婚したにすぎない。だから本当は夫に惹かれていても、ケリーは仮面をかぶり続けた。ほかにも女性がいるという彼に心を見せたら、傷つくだけだもの!ここ数年ケリーは、出張の多い実業家である夫の予定を把握し、彼がロンドンに戻るときはわざと旅行に出て、会うのを避けてきた。そんなふたりが、ある日パリで鉢合わせした。なんとドルーは、欲望を隠しもせずケリーに迫ってきて…。
「あなたのお兄さんって、どうして結婚しないのかしら」 17歳のルイーズは、由緒ある美しい屋敷に帰ってきたばかり。 パーティで、親友にそう問われても、彼女の心はうつろだった。 ルイーズにはショックなことがあったのだ。いつものように、 駅に迎えに来た義兄のダニエルが、今日は恋人を連れていた。 血の繋がりのない、35歳の義兄をひとすじに慕い続けてきたのに。 彼の“特別”にはなれないーー思い知った彼女は距離を置こうと、 パーティに親友と、自分に気のあるその兄を招待した。しかし、 ダニエルはルイーズにほかの男性と踊らせようとしなかった……。
夫を亡くしたオーリエルは、13年ぶりの故郷へ帰ってきていた。懐かしいチャーントリ屋敷。そこには愛した人がいる。デヴィルー悪魔と呼ばれ、一族から虐げられた伯父の非嫡出子。13年前、愛し合うふたりをある悲劇が引き裂いた。従妹の悲鳴、父の怒号、信じていたのに出てきた、裏切りの証拠。そのせいで、17歳の彼女は、老富豪の幼妻となったのだーそこへ一頭の黒馬が駆けてくる。黒髪の騎手は馬をとめると、今ごろ何をしに戻ってきたのだと言いたげに見おろした。私が悪いとでもいうの?腹黒い残酷な私のデヴィル…。
マリーサは幼い息子を連れて散歩に出かけていた。その途中、わずかな隙に息子が乳母車ごと消え失せてしまう。大富豪ガブリエルに見初められての身分違いの結婚だったが、所有欲の強い夫に耐えられず、逃げだしたあとに妊娠が発覚。一人で子供を産み育てていた矢先の出来事だった。だからどんなに問いただされようと、夫の名を言うつもりはない。ところが事件が報道されたために、彼に見つかってしまったのだ。また戻る、籠の鳥の人生へー絶望するマリーサの視界に、近寄りがたいほど端整な美貌の夫の姿が、近づいてきて…。
幼いころに母が頑固な父を捨てて別の男性とかけ落ちして以来、ジュリエットは由緒ある館の猟場管理人の父と二人で暮らしていた。やがてジュリエットは館の一人息子シメオンと恋に落ちた。二人が抱き合っている姿を目撃した父に猟銃を突きつけられ、シメオンは突然ジュリエットとの結婚を宣言したのだ。だが結婚式の夜、ジュリエットは彼の振る舞いに深く傷つき、“何もかも間違いでした”と書き残して姿を消したのだった。そのまま母のもとに落ち着き、義父と母の仕事を手伝ってきて8年。ある夜、母の別荘に独りでいた彼女の前にシメオンが現れ、言い放つ。「もう逃げられないぞ。今度こそ、ぼくの子供を産んでもらう」
「名門の僕は君とは結婚できない。だから愛人になってほしい」 ある出来事がもとで、心に傷を抱えていたソフィだったが、 ギリシアのクレタ島で働くことになった。周囲にもなじみ、 自分の居場所を見つけたが、唯一彼女の心を悩ませるのが、 プレイボーイな社長アレックスの、傍若無人なこの誘惑。 類まれな美貌の彼は、平然と女性を弄ぶという悪い噂があったし、 そもそもいまのソフィでは、到底そんな気持ちになれないーー そう断ると突然、唇を絡ませてきた。ソフィは知る由もないが、 社長の目には、まぎれもない本気の火がちらついていた。
25歳のライザは、妻子持ちの男にだまされてから、もう二度と恋はしないと誓って仕事に打ち込んでいる。財閥のギフォード一族の放蕩息子に言い寄られても、友人以上の関係になるつもりはなかった。ところが二人の関係をマスコミが騒ぎ立てたことから、ライザは金目当ての欲得女というレッテルを貼られてしまう。くだんのプレイボーイの叔父で、ギフォード家の家長キア・ザッカリーは、甥とライザの仲を割きにかかる。彼は財閥の若き長としての権力を発揮して甥を外国にやり、代わりにライザのことは、自らの欲望のはけ口にしようとし…。
ニースのヴィラ・ジャスミンで催されるパーティは盛況だった。 主催者はジョアンヌの母。輝くばかりの美貌の持ち主である。 その母親の陰で、ジョアンヌは20年間ひっそりと生きてきた。 ところが、巨額の財産を一世代で築き上げた 投資家ベンとの出逢いが、ジョアンヌの運命を狂わせる。 彼の心を射止めたくて、生まれて初めて化粧をし、 消え入るような思いで真紅のドレスに身を包んだのだ。 だが、彼は見もせず、母のもとへと向かった。 胸の痛みに耐えかねて、ジョアンヌはそっと顔を伏せた。
ある日、ローラのもとに、祖父の会社の次期後継者ダンが現れる。心臓病で余命わずかな祖父は、会社の安泰のために、ローラと祖父の信任厚いダンとの結婚を望んでいるのだという。ダンは魅力的だが、無慈悲で目的のためには手段を選ばない。なかば強引に、指に青いサファイヤの宝石をはめさせられて、祖父の前で、ローラはダンとの結婚の誓いをさせられる。一目で心を引かれた…けれど私に愛など微塵もないこの人と?しかも彼はローラの体を値踏みしながら、端整な顔を歪めたのだ。「跡取りをこしらえてくれたらいい。これは会社のための結婚だ」
10歳年上の幼なじみダンとの結婚式が近づくにつれて、エリザベスはかすかな不安を抱くようになっていた。最近ダンはどこかよそよそしく、めったに会ってもくれない。わたしはほんとうに愛されているのかしら…?ある夜またデートを取り消され、散歩に出たエリザベスは、ダンが彼女の親友と抱き合っているのを偶然目撃してしまう。裏切られ、張り裂けそうな胸の痛みをおぼえながらも、エリザベスは彼の幸せのために身を引くことを決意する。悲しみをひた隠し、心変わりしたと嘘をついて。
ある夜、ピッパは車の接触事故に巻き込まれてしまう。対向車から降りてきた男性を見て、彼女ははっと息をのんだ。ランダル!ピッパの胸が疼いたーもう4年も経っているのに。彼は当時勤めていた会社の社長で、ピッパは彼を心から崇拝していた。妻子がいると知ったのは、彼に恋をしていると悟ったあと。罪悪感に苛まれたピッパは即座に会社を辞め、姿を消した。彼は逃げ出そうとしたピッパを追いかけてきて言った。「ぼくはもう、結婚していない」いいえ、違うのよーピッパは皮肉な運命を呪った。ランダルを忘れるため、別の男性の求婚を受けたばかりだったのだ。
婚約間近のステファニーは、海辺の町で静かに暮らしていた。 しかし、その平穏な日常もジェラードが現れたことで一変する。 18歳。大人になりかけていた清純なステファニーは、 洗練された美貌のジェラードと恋に落ちた。 だが悪夢のような出来事によって、地獄に突き落とされーー ジェラードは彼女の愛と純潔を疑って、去ったのだ。永遠に。 5年の月日が流れ、再会した彼の瞳には凶暴な光が眩いていた。 「綺麗で汚れていないと思っていたのに。君はまた人を欺くのか」 君の真実の姿を君の恋人に暴くとでも言いたげに。
ひそかに憧れていた男性の婚約パーティーに出席することは ソフィーにとって、まさに拷問だった。 だからクールな上司ガイに会場から連れ出されたときも ソフィーは逆らわず、家まで送ってもらった。 これまでガイがソフィーに興味を示すことはなかったが、 今日はいつもの彼とは違う。 成り行きとはいえ、秘書であるソフィーの寝室にまで入りこみ、 迫ってきたのだーーこんなときは、慰め合うべきだと言って。 ソフィーは催眠術にかかったようにうっとりとして目を閉じ、 彼のキスに応えてしまい……。 〈強引なあなた〉と銘打ちお贈りする企画第2弾は、2000年に世界中のファンや作家仲間に惜しまれつつこの世を去った偉大なロマンス小説家シャーロット・ラムの作品です。日本で刊行された作品は100冊以上を超え、今も読み継がれています。
パリで住みこみ家事をしている学生クリスタベルは、女主人に用事を言いつかって、その義兄ローランの住む、ブルターニュの奥地へやってきていた。深夜に古城に辿りつくと、待ち受けていたのはひとりの男。浅黒い美貌に、嫌がらせのような皮肉な笑みを湛える彼に、「誰の差し金だ。ぼくを誘惑しにきたのか」突然犬をけしかけられるや、憎々しげな目で一瞥されたのだ。何年も城に引きこもっており、気難しいと噂の城主だったが、あまりにもひどい侮辱に、混乱するクリスタベルは唇をかんだ。
ホテル付秘書のアルバイトをするクローディアは、日によってホテルのオフィスで働くこともあれば、宿泊客の要請で臨時の秘書を務める場合もある。今日の任務は、最上階のスイートルームに滞在する客の臨時秘書。客は世界的な億万長者のエリス・ルフェーブルだ。“彼はトラブルそのもの。気をつけて”-そんなホテル側の注意が的中し、クローディアはさっそくトラブルに巻きこまれた。部屋に入るなり、一方的にエリスから言い渡されたのだ。「今夜は、きみもここに泊まるように」
銀行頭取のアシスタントであるマーティーンは、ある夜ボスとのディナーに向かう途中、レストランの回転ドアに、見知らぬ男性と挟まれてしまう。彼は身震いするほどセクシーだが、ひどく無礼な態度だった。驚くべきことに、ディナーの席でボスに紹介されたのが、まさにその男、ブルーノ・ファルカッチだったのだ。ボスはこの年下の従弟を、銀行の後継者にするつもりだという。マーティーンは彼が銀行を乗っ取るつもりなのではと疑い、ブルーノは彼女を頭取の愛人と決めつけ、二人は火花を散らすが、会議のため共に赴いたローマで、とんでもない過ちが起きる。
なんて酷い男なの! 先日の従妹の打ち明け話を思いだして、リーは怒りに震えた。マット・ヒューム──大会社の社長が、自分の部下を弄ぶような真似をするなんて。ふと、リーは目の前で食事を供にしている婚約者に目を移した。彼はとてもよい人だし、そんなことはしない。ただ最近は、リーからの愛情を感じられないと嘆いてはいるけれど。ひとりでレストランを出て、エレベーターに乗った彼女は、狭い空間に火花が散るような感覚を覚え、衝撃を受けた。奥に立つセクシーな男性の灰色の瞳から、なぜか目を離せない。次の瞬間、抗えない力に引かれて、
ただいま!なつかしいわたしの家、そして、大好きな兄さん…。ロンドンのハイスクールを卒業したわたしは由緒ある美しい屋敷クイーンズ・ダウアーに帰ってきた。兄さんと住むこの家こそ、わたしの愛のお城。幼いころからひとすじに慕いつづけてきた兄さん。でも、ひそかな想いが大人の愛に育っていることに、決して気づいてくれないんだわ。だって、ずっとずっと年上の大人の兄さんにとって、わたしはいまも、小さな妹にすぎないんですもの…。
17歳のリンデンにとって、毎日が薔薇色だった。なぜなら家にはジョス・ホワイトがいるからだ。険しい坂道で事故を起こした彼を車から助け出し、家へと連れ帰った。リンデンとジョスは親子ほども年がちがうのに、とても気が合って、人間嫌いの画家の父も、彼を気に入っている。そんなある夜、生まれてはじめてパーティへ出かけたリンデンは、同じ年頃の男の子たちなど誰一人目に入らず、ジョスのことを愛していると気づいてしまうのだった。月光を浴びて泳ぎながらふと岸を見やると、ジョスが立っている。彼は水の中に入ってきて、裸のリンデンを抱きすくめた。月の光に照らされ、柳の木の下で結ばれた二人。しかし翌朝リンデンは、父親からジョスが出ていったこと、彼に妻がいることを知らされてしまう。絶望したリンデンは…年の差の恋、禁断の愛。C・ラム、衝撃の初期傑作品。