著者 : ジュール・ヴェルヌ
「逃げるんだ、マーチャーシュ! 生きて、裏切り者に鉄槌をくだせ!」 ハンガリー独立運動の道半ばにして斃れた仲間たちから「裁き」の使命を託されたシャーンドル・マーチャーシュ伯爵。果たして彼は、奸智に長けた仇敵たちを捕らえることができるのか?----『海底二万里』『八十日間世界一周』を凌駕し、ジュール・ヴェルヌの小説シリーズ〈驚異の旅〉の中でも最大級のスケールを誇る、狂瀾怒濤の海洋冒険物語。上巻は、全五部のうち第三部第四章までを収録。エッツェル版挿絵全点を掲載した新訳決定版。
悪党どもに正義の鉄槌を下さんとして、神出鬼没の謎多き医師アンテキルト博士とその仲間たちが地中海を舞台に躍動するー『海底二万里』『八十日間世界一周』の作者ジュール・ヴェルヌが描く、狂瀾怒涛の海洋冒険物語。第三部第五章から第五部最終章までを収録。エッツェル版挿絵全点掲載の新訳決定版。
ある年の大晦日の夜、アルジェリア駐在のフランス陸軍士官エクトール・セルヴァダックは、従卒のベン= ズーフとともに、尋常でない衝撃を受けて気を失う。意識を取り戻した彼らは、西と東が逆転し、一日の長さが半減し、重力が六分の一となり、誰もいない孤島にいた……。彗星の一撃によって地球もろとも宇宙空間に運び去られたセルヴァダック一行の、パラレルワールドで展開される太陽系ロビンソン漂流記。奇想天外、ジャンルSFの出発点と目され、〈驚異の旅〉の転換点を刻する問題作、初の完訳。
「どんな子供でもハテラス船長に付きしたがって、世界の果てまで、北極点まで、近づく者を焼きつくす火山の聳え立つ、あの「クイーンズ島」まで行ってしまうにちがいない」(ル・クレジオ)。 人類未踏の北極点を目指す狂熱の冒険行。屹立する氷山、酷寒の氷原、友愛と叛乱……、北極圏を生き延びる「ロビンソン」たちを待ち受けていたものとは。 ドゥルーズ的「無人島」がヴェルヌ世界に初めて出現し、〈驚異の旅〉の真の出発点となった「紛れもない傑作」(グラック)が、「出版者まえがき」(エッツェル)とともにその全貌を現す、待望の新訳・完訳。オリジナル挿絵約270葉、ジュール・ヴェルヌ略年譜収載。 「ヴェルヌが自作を一作に集約させようと思えば、この作品以外にはありえない」(石橋正孝)。ヴェルヌ理解を決定づけたビュトールがその「至高点」の概念を抽出したのも『ハテラス』だった(「至高点と黄金時代」『レペルトワールI』所収)。ピエール=ジュール・エッツェルによって挿絵版シリーズの第一回配本として選ばれ、〈驚異の旅〉を冠せられる第一作となった『ハテラス船長の航海と冒険』。ヴェルヌの小説世界の可能性を示す記念すべき大長篇。 出版者まえがき ハテラス船長の航海と冒険 第一部 第二部 訳註 解説 石橋正孝 訳者あとがき ジュール・ヴェルヌ略年譜 地図 細目次
新訳完訳「ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション」第三回配本。 元祖ヴァーチャルアイドルと見えない花嫁……。本巻では、東欧を舞台にしたゴシック小説的幻想味あふれる後期の傑作二篇を収録。「カルパチアの城」はブラム・ストーカーの「ドラキュラ」に先立つこと五年、吸血鬼伝説の本場トランシルヴァニアを舞台に推敲を重ねた自信作。ホフマン、ポーやルルーの「オペラ座の怪人」などを好む方々には特におすすめの完訳版。レオン・ブネットの挿画40枚収録。 「ヴィルヘルム・シュトーリッツの秘密」は、H・G・ウェルズ「透明人間」の向こうを張ってヴェルヌが書いた透明人間もの。本作は息子のミシェル・ヴェルヌが書き換えた版(未訳)が長く読まれてきたが、今回がジュール・ヴェルヌのオリジナル版本邦初訳となる。唖然呆然の最終章のみ、ミシェル・ヴェルヌ版を併録した。 二作ともに、不在の女性への狂恋が物語を貫いており、美しきヴォーカロイドとも言うべきラ・スティラを追い求める二人の男(「カルパチアの城」)、完璧な令嬢ミラへの倒錯的愛に身を捧げるヴィルヘルム・シュトーリッツの、身の毛もよだつ透明人間ストーカーなど、さまざまな意味で現在に直結する「〈独身者機械〉小説」(新島進)であり、ヴェルヌの最も21世紀的な小説。面白さ抜群の二篇を練り上げられた訳文と詳細な註を付して贈る。 カルパチアの城 ヴィルヘルム・シュトーリッツの秘密 ミシェル・ヴェルヌ版第一九章 訳註 解説 石橋正孝 訳者あとがき 細目次
北インドの大自然を舞台に繰り広げられる冒険と復讐の物語。セポイの叛乱で捕虜を虐殺し合い、あまつさえ、互いの伴侶を殺害した、イギリス陸軍士官エドワード・マンローと叛乱軍の首領ナーナー・サーヒブ。叛乱鎮圧後、憂鬱に沈むマンローを励まそうと、友人たちは鋼鉄の象が牽引する豪華客車を用意、インド横断の旅に出る。闇の中を蠢く叛乱軍の残党たち、正気を失い、松明を持って密林をさまよう謎の女性「さまよえる炎」……。血の糸で引き合う宿敵同士の運命やいかに。「ヴェルヌの最も不思議な魅力を湛えた小説」(ジュリアン・グラック)であり、インドを横断する『八十日間世界一周』と表裏をなし、『八十日間』を逆向きに反復しかつ更新する傑作、130年の時を経てついにその全体像が姿を現す。本邦初完訳。 目次 蒸気で動く家 第一部 第二部 訳註 解説 石橋正孝 訳者あとがき 細目次
1866年、大西洋に謎の巨大生物が出現した。アメリカ海軍の要請により、アロナックス教授は、召使のコンセイユとともに怪物を追跡する船に乗り込んだ。順調な航海もつかの間、思わぬ事態が襲いかかる……。
未来の科学技術を駆使して作られた潜水艦ノーチラス号を操る、寡黙で謎めいたネモ艦長。彼の厳然たる命に従い、アロナックス教授たちは地球上のすべての海を巡る旅に連れ出される。インド洋から地中海、大西洋を南下して南極へ。氷づけになった潜水艦、巨大タコの襲撃、激しい暴風雨。次々に襲いくる危機をものともせず突き進むネモ艦長はいったい何者なのか。そして彼の目的は?時を超えて読み継がれる空想科学小説の原点。
〈絶海の孤島で暮らす少年たち〉物語の元祖にして最高傑作! 熟読してきたシーナ父娘による新訳決定版刊行。嵐の夜、少年達だけを乗せた船はニュージーランドの港から流されて無人島へと辿り着く。航海経験のある仏国人ブリアン、冷静な米国人ゴードン、優雅で誇り高い英国人ドニファンなど十五人の少年はいかに団結し、仲違いし、生き抜いていくのか? この無類の冒険譚を愛読し、モデルの島まで航海した椎名誠と渡辺葉による父娘共訳!
謎の暗号文を苦心のすえ解読したリーデンブロック教授と甥の助手アクセル。二人は寡黙なガイド、ハンスとともに地球の中心へと旅に出た。そしてそこで三人が目にしたのは…。前人未到の地底世界を驚異的な想像力で自在に活写したヴェルヌの最高傑作を、圧倒的な臨場感あふれる新訳で。
1866年、世界の海で奇怪な海難事故が続発する。事実、多くの船が「謎の怪物」を目撃していた。紡錘形で細長いが、クジラよりはるかに大きく、時に燐光を発し、異常な速力をもっているという。調査に向かった軍艦もまた攻撃され、同乗していたアロナックス博士らは海に投げ出されてしまう。そして、博士らを救ったのも「謎の怪物」だったが、それはクジラではなく潜水艦ノーチラス号だった。
1869年、帆船チャンセラー号は、アメリカからイギリスに向けて航行中、予期せぬことから、大規模な火災を起こす。鎮火の努力もむなしく船は沈没。生き残った乗客と乗組員は筏に乗り込み、漂流を始めるが…自然の猛威、飢えと渇き、そして…。フランスの軍艦で実際に起きた事件をモデルとしつつ、極限状況における人間ドラマとして、迫真の筆致で描き尽くした傑作。
人間社会に対して激しい不信の念を抱くネモ船長とは何者?その目的は?謎の潜水艦ノーチラス号は、インド洋から地中海、さらに大西洋を南下して南極へ。凍結した海底に閉じこめられ、巨大なタコの大群や暴風雨に遭遇、と波瀾万丈の航海は続く。
その年、いくつもの船が海で“何か巨大なもの”に出くわしていた。それは長い紡錘形の物体で、時に燐光を発し、クジラよりもずっと大きく、ずっと速かった。アメリカ海軍から依頼され、追跡行に加わったアロナックス氏は、ついにその怪物に遭遇した。
一八七二年一〇月二日午後八時四五分、ロンドンの謹厳な資産家にして知識人フィリアス・フォッグ氏は、多くの新聞が一斉にとりあげ狂気の沙汰と評した、八〇日間世界一周の旅に出た。彼はトランプ仲間と、一秒でも遅れると全財産を失うことになる賭をしたのだ。