著者 : ジョアナ・リンジ
マーガレットは元後見人の命が狙われていると知り、その勘当された息子セバスチャンに助けを求めるため、評判の探偵レイヴンに行方を捜してもらおうと考える。廃墟にこもるレイヴンは危険な雰囲気を漂わせたセクシーな男で、マーガレットはひと目で引きつけられるが、次の瞬間気づいたー彼こそがセバスチャンだと。元後見人を救うため、ふたりは別名で偽装結婚をして故国に戻り、同じ部屋で宿泊することにする。そんなある夜、セバスチャンは“報酬”としてベッドをともにすることを求めるが…
南北戦争はブラッドフォード・メイトランドの心にも深い傷跡を残した。南部の大地主の息子でありながら、北部に生まれ育った彼は、自らの信念を貫いて北軍に加わった。しかし、婚約者のクリスタルはこれななじり、そのあげくに彼の弟のもとへと奔ったのだ。アンジェラが5年ぶりにブラッドフォードに再会した時、彼の心はすさみ切っていた。彼を追って飛び込んだ売春宿で、彼女は自分の素姓も明かさないままその身を委ねた。それが、かつて“エンジェル”と呼んだ少女であるなどとは、ブラッドフォードは知る由もなかった。
1870年、アメリカはゴールドラッシュにわきかえっていた。メキシコの大牧場主の娘サマンサは友人の兄エイドリアンとの初めての恋にときめかせていた。けれど肝心のかれは、そんなサマンサの心を無視するかのように、にえきらない態度をとりつづける。いらだつサマンサは、ある日駅馬車の中でかれの気持ちを試そうとする。乗りあわせたハンサムな男ハンクの気をひいて、エイドリアンの嫉妬心をかきたてようというのだ。ところが、その思いは見事に裏切られる-ハンクに純潔を奪われたあげく、エイドリアンはホモだと知らされたのだ。
折しも、父の牧場は正体不明の盗賊たちにくり返し襲われていた。恋人を失い、傷心の日々をおくるサマンサは、気晴らしに遠乗りに出かける。と、その時を待っていたかのように、突如サマンサの前に現われた盗賊たちは、抵抗する彼女を、かれらのアジトに掠奪していく。そのボスは何とハンクであった。恋人の秘密を暴き、彼女をあざわらうように強引に奪った男、いつか必ず復讐をと誓った憎いかれに、今は人質という屈辱の身で再会するとは-。恐怖にふるえるサマンサに、しかしハンクは、なぜか優しく、いつしか彼女の憎しみも揺らぎはじめるのだが。
父親の急死で、ひとりぼっちになってしまった貧しい小作人の娘アンジェラは、土地の富豪ジェイコフ・メイトランドにひきとられた。南北戦争が終わったばかりの南部、アラバマ。アンジェラ17歳の春だった。彼女はメイトランドの長男ブラッドフォードに、深くあてのない想いを寄せていた。ところが、心ときめかせるアンジェラを待ち受けていたのは、ジェイコフの愛人という口さがない噂と、ブラッドフォードの不在だった。