著者 : ジョージ・エリオット
運命の激流、許されぬ恋、新訳決定版 19世紀半ば、セント・オグズの町はずれを流れるフロス河と、代々受け継がれてきた水車の周辺を庭にして、トムとマギーは育った。お転婆な妹を兄がからかい仲よく遊ぶ牧歌的な生活は、父がある裁判に負けたことから一変。マギーは質素な禁欲生活を送るようになるが、やがて兄の元学友で父の宿敵の息子フィリップや大好きな従妹の婚約者スティーヴンに出会ったことから、運命がさらに大きく動き出す……。 本書は、夏目漱石が読むべき英国女性作家に挙げ、プルーストやヴァージニア・ウルフなど後の欧米文学に大きな影響を与えた作家の、最も自伝的とされる作品である。マギーに投影される著者の膨大な教養は、既訳書では長い訳註つきで物語が分断される形で紹介されることが多かったが、本書では生き生きした描写、脚注なしでスムーズに読め、心に深く響く。激しく切ない愛の物語、新訳決定版。
運命の激流、許されぬ恋、新訳決定版 19世紀半ば、セント・オグズの町はずれを流れるフロス河と、代々受け継がれてきた水車の周辺を庭にして、トムとマギーは育った。お転婆な妹を兄がからかい仲よく遊ぶ牧歌的な生活は、父がある裁判に負けたことから一変。マギーは質素な禁欲生活を送るようになるが、やがて兄の元学友で父の宿敵の息子フィリップや大好きな従妹の婚約者スティーヴンに出会ったことから、運命がさらに大きく動き出す……。 本書は、夏目漱石が読むべき英国女性作家に挙げ、プルーストやヴァージニア・ウルフなど後の欧米文学に大きな影響を与えた作家の、最も自伝的とされる作品である。マギーに投影される著者の膨大な教養は、既訳書では長い訳註つきで物語が分断される形で紹介されることが多かったが、本書では生き生きした描写、脚注なしでスムーズに読め、心に深く響く。激しく切ない愛の物語、新訳決定版。
十九世紀後半、イギリス地方都市を舞台に展開する人間模様、キリスト教と科学がせめぎあう時代相を凝視する女流作家の魂の軌跡!エリオットの文体が成熟期に達したと言われる作品、上巻。 ●結婚生活で夫と妻がお互いの要求を認め合い、折り合う妥協点をいかに見出してゆくか、それがいかに困難な挑戦なのか、読者は読んでゆくうちに、身につまされる。 「人間はみな道徳的に愚鈍に生まれついていて、この世界はこのうえなく貴重な自己という存在を養ってくれる乳房だと考える。ドロシアは、そのような愚かさから早く抜け出し始めていたが、それでも、どのようにしたら夫に献身的に仕えることができるか、夫の力と知恵とを頼りに、どれほど自分が賢く、強い人間になれるか、を想像することはできても、夫も自分と同じように自己という譲れない一線があって、そこから出る光と陰は常に自分のものとは違っているということを、単なる反省ではなく、感情ーー触れれば手応えのある物体のように、感覚にまで磨きあげられたアイデアーーをもって明らかに感じとるのは容易なことではなかった。」(本文21章より)
十九世紀後半、イギリス地方都市を舞台に展開する人間模様、キリスト教と科学がせめぎあう時代相を凝視する女流作家の魂の軌跡! エリオットの文体が成熟期に達したと言われる作品、下巻。 ●町のある実力者が自らの後ろ暗い過去を知り抜く昔の相棒と再会し、ゆすり・たかりに遭い、心の牢獄を味わう物語。人はいかにして心の自由を獲得し得るのか? ●ものをあるがままに見るヘレニズムの賢者と対話する作家のヴィジョン。 ──記憶が再び開いた古傷のように痛み出す時、人の過去は単なる死せる歴史でもなければ、現在を準備して用済みになった廃物でもない。現在の生活から振りほどくことのできる、後悔した過ちなどではない。それは、今なお打ち震えている自らの生きた一部であり、身震いと苦い味を蘇らせ、身に覚えのある恥辱の疼きを覚えさせるものなのだ。(「61章」より)
希望をすべて、うち捨てることさえできたなら。19世紀英国の田園地帯。少女マギーの安穏な生活は、父の裁判敗訴を引き金に、もろくも崩れ去ってゆく。復讐に燃える兄と宿敵の息子への恋慕の狭間で、少女の心は激しく揺れ動き、そしてまた、いとこの恋人との許されざる愛に苦悩する。
デラシネたちの人間模様…。異彩を放ち常に賞讃されてきたグウェンドレンとグランドコートの男女の描写…。そして物語は核心へ迫ってゆく。歴史を動かした稀有の作品!
ユダヤ問題の核心に迫ったロングセラー!自らのアイデンティティを求めて、ダニエル・デロンダの旅は続く…そして、苦難の果て、決定的な「事実」があった。歴史を動かした稀有の作品!
金策に失敗したフレッド・ヴィンシーは、意中の女性メアリを含むガース家の人々を窮地に立たせてしまう。また、フェザストーン老人の遺言をめぐる騒動の結末、リドゲイトとロザモンドの接近、ドロシアとカソーボンの夫婦生活の危機など、多層的な人間関係が発展していく第2巻。
友と恋人に裏切られ、神にも絶望して故郷を捨てたサイラス・マーナーは、たどりついた村のはずれで、機を織って得た金貨を眺めるのを唯一の愉しみとする暮らしをしていた。そんな彼にふたたび襲いかかる災難…。精細な心理描写とドラマチックな展開が冴えるエリオットの代表作の一つ。
批評家ウォルター・アレンが「英語で書かれた作品の中では、他を寄せつけないほど完全な散文物語であり、小さな奇蹟的作品である」と絶賛した『サイラス・マーナー』(1869年)。新しい家族のかたちをも示す心温まるこの物語と対照的に、「創世記」に想を得た長詩「ジューバルの伝説」(1870年)では、生における明と暗、不条理が祝祭的に謳いあげられる。
知的で美しいドロシア・ブルックは二十歳前の娘だが、自分の人生を偉大な目的に捧げることを熱烈に願い、温厚でハンサムな准男爵を退けて、学究生活に打ち込んでいる厳めしい五十がらみの牧師と婚約する…。地方都市ミドルマーチを舞台に緻密な人間描写で織りなす壮大な物語。(全4巻)
イタリアで客死した叔父の亡骸を捜す青年、予知能力と読心能力を持つ男の生涯、先々代の当主の亡霊に死を予告された男、養女への遺言状を隠したまま落命した老貴婦人の苦悩。日本への紹介が少なく、読み応えのある中篇幽霊物語四作品を精選して集成!一八六〇年代には今日のミステリやスリラー小説の源流になったと目される作品が次々と出版され、また、怪奇小説、恐怖小説の分野で優れた作品が数多く発表されたのもこの時代であった。内容的に長い話にはしにくかった恐怖小説は中短篇が主体で、特にクリスマスの時期になると、各雑誌が競って幽霊物語を掲載し、当時の文壇の大御所であった作家も好んで幽霊譚を寄稿した。比較的長い物語の場合、優れた作品でありながら、選集に収録するには長すぎるし、かといって、それ一作を単行本として刊行するには短かすぎる、ということで、あまり日の目を見ずにきたという作品もかなりある。本書では、そうした長めの怪異譚の中から、読み応えのある力作で、かつ、日本の読者にはあまり馴染みがない作品を四篇選び、これまでにない趣のアンソロジーの編纂を試みた。--三馬志伸「解題」より ウィルキー・コリンズ「狂気のマンクトン」(1855)ジョージ・エリオット「剝がれたベール」(1859)メアリ・エリザベス・ブラッドン「クライトン・アビー」(1871)マーガレット・オリファント「老貴婦人」(1884)訳註訳者解題
英国ヴィクトリア朝文学を代表し、英文学史に大きな足跡を残した ジョージ・エリオットことマリアン・エヴァンズ(1819 - 1880)の 長編作品『ロモラ』Romola を新訳で・・・。 花の都フィレンツェ、結婚というくびき。 学者の娘ロモラは、目の見えない父の研究を手伝う日々。そこに現れた、 若く、美しく、才覚のある青年ティート。やがて恋に落ち、結婚する二人。 けれど次第に明らかになるティートの秘められた過去と本性……。 1492 年4 月9 日のロレンツォ・デ・メディチの死の当日から、 1498 年のサヴォナローラの火刑とその死までという、 イタリア・フィレンツェの激動の史実に取材した渾身の一作。 メディチ家の面々やマキャヴェッリなど、実在の人物も多数登場! 緻密に取材した歴史物語に織り込まれているのは、親子、夫婦、 宗教といったさまざまな「くびき」と、そのなかで生きる一人の女性の 姿である。 小説家ヘンリー・ジェイムズは『ロモラ』を、エリオットの「最高作」と 断じた。また一九世紀の思想家トマス・カーライルや詩人ロバート・ ブラウニングを始めとする多くのイギリスの文人たちも、 『ロモラ』刊行当初、これに極めて高い評価を与えている。
3人の牧師の人生に秘められた、それぞれの愛のかたちとその深さ。胸を打つ悲しみも、いつかきっと癒やされる…ジョージ・エリオットの記念すべき小説家デビュー作。
恋か、血の絆か。スペイン・アンダルシア地方。美しきフェダルマが知った自らの出生の秘密。従うべきは身を焦がす想いか、それとも…。若者の悲恋を描いた異色の劇詩。個人的次元における自己充足と共同体から課せられる任務や責任の実行との間の相克ないしは葛藤という主題に、詩の形式で挑戦した『スペインのジプシー』(1868)。超能力という斬新な題材を用いた「とばりの彼方」(1859)と、エリオットの喜劇性が凝縮された「ジェイコブ兄貴」(1864)という二つの短編小説に示される、“長編作家エリオット”の底力。