著者 : ジョージ・エリオット
希望をすべて、うち捨てることさえできたなら。19世紀英国の田園地帯。少女マギーの安穏な生活は、父の裁判敗訴を引き金に、もろくも崩れ去ってゆく。復讐に燃える兄と宿敵の息子への恋慕の狭間で、少女の心は激しく揺れ動き、そしてまた、いとこの恋人との許されざる愛に苦悩する。
デラシネたちの人間模様…。異彩を放ち常に賞讃されてきたグウェンドレンとグランドコートの男女の描写…。そして物語は核心へ迫ってゆく。歴史を動かした稀有の作品!
ユダヤ問題の核心に迫ったロングセラー!自らのアイデンティティを求めて、ダニエル・デロンダの旅は続く…そして、苦難の果て、決定的な「事実」があった。歴史を動かした稀有の作品!
金策に失敗したフレッド・ヴィンシーは、意中の女性メアリを含むガース家の人々を窮地に立たせてしまう。また、フェザストーン老人の遺言をめぐる騒動の結末、リドゲイトとロザモンドの接近、ドロシアとカソーボンの夫婦生活の危機など、多層的な人間関係が発展していく第2巻。
友と恋人に裏切られ、神にも絶望して故郷を捨てたサイラス・マーナーは、たどりついた村のはずれで、機を織って得た金貨を眺めるのを唯一の愉しみとする暮らしをしていた。そんな彼にふたたび襲いかかる災難…。精細な心理描写とドラマチックな展開が冴えるエリオットの代表作の一つ。
批評家ウォルター・アレンが「英語で書かれた作品の中では、他を寄せつけないほど完全な散文物語であり、小さな奇蹟的作品である」と絶賛した『サイラス・マーナー』(1869年)。新しい家族のかたちをも示す心温まるこの物語と対照的に、「創世記」に想を得た長詩「ジューバルの伝説」(1870年)では、生における明と暗、不条理が祝祭的に謳いあげられる。
知的で美しいドロシア・ブルックは二十歳前の娘だが、自分の人生を偉大な目的に捧げることを熱烈に願い、温厚でハンサムな准男爵を退けて、学究生活に打ち込んでいる厳めしい五十がらみの牧師と婚約する…。地方都市ミドルマーチを舞台に緻密な人間描写で織りなす壮大な物語。(全4巻)
イタリアで客死した叔父の亡骸を捜す青年、予知能力と読心能力を持つ男の生涯、先々代の当主の亡霊に死を予告された男、養女への遺言状を隠したまま落命した老貴婦人の苦悩。日本への紹介が少なく、読み応えのある中篇幽霊物語四作品を精選して集成!一八六〇年代には今日のミステリやスリラー小説の源流になったと目される作品が次々と出版され、また、怪奇小説、恐怖小説の分野で優れた作品が数多く発表されたのもこの時代であった。内容的に長い話にはしにくかった恐怖小説は中短篇が主体で、特にクリスマスの時期になると、各雑誌が競って幽霊物語を掲載し、当時の文壇の大御所であった作家も好んで幽霊譚を寄稿した。比較的長い物語の場合、優れた作品でありながら、選集に収録するには長すぎるし、かといって、それ一作を単行本として刊行するには短かすぎる、ということで、あまり日の目を見ずにきたという作品もかなりある。本書では、そうした長めの怪異譚の中から、読み応えのある力作で、かつ、日本の読者にはあまり馴染みがない作品を四篇選び、これまでにない趣のアンソロジーの編纂を試みた。--三馬志伸「解題」より ウィルキー・コリンズ「狂気のマンクトン」(1855)ジョージ・エリオット「剝がれたベール」(1859)メアリ・エリザベス・ブラッドン「クライトン・アビー」(1871)マーガレット・オリファント「老貴婦人」(1884)訳註訳者解題
ルネッサンス華やかなりし花の都フィレンツェ、気高く聡明なロモラは、謎多き一人の美青年と出会うーメディチ家の追放、フランス王のイタリア侵攻、そしてサヴォナローラの神権政治という激動の時代を舞台にしたジョージ・エリオット唯一の歴史小説。
3人の牧師の人生に秘められた、それぞれの愛のかたちとその深さ。胸を打つ悲しみも、いつかきっと癒やされる…ジョージ・エリオットの記念すべき小説家デビュー作。
恋か、血の絆か。スペイン・アンダルシア地方。美しきフェダルマが知った自らの出生の秘密。従うべきは身を焦がす想いか、それとも…。若者の悲恋を描いた異色の劇詩。個人的次元における自己充足と共同体から課せられる任務や責任の実行との間の相克ないしは葛藤という主題に、詩の形式で挑戦した『スペインのジプシー』(1868)。超能力という斬新な題材を用いた「とばりの彼方」(1859)と、エリオットの喜劇性が凝縮された「ジェイコブ兄貴」(1864)という二つの短編小説に示される、“長編作家エリオット”の底力。