著者 : スタニスワフ・レム
イギリス各地の墓地で起こる死体消失事件、スコットランド・ヤードのグレゴリー警部補は真相解明に乗り出すが、捜査は難航を極める…メタ推理小説『捜査』、地球文明崩壊後、地下遺跡から奇跡的に発見された1篇の手記に記されていた驚くべき記録ー疑似SF的不条理小説『浴槽で発見された手記』、レムの多彩さをうかがわせる異色作2篇を収録。
第二次大戦のさなか、アメリカの州境に火星からロケットが飛来、科学者や技師らからなるチームが火星人との意思疎通を試みるが…『金星応答なし』に先立つ、レムの本当のデビュー作『火星からの来訪者』、広島への原爆投下を主題にした、世界でもっとも早い文学作品の一つ「ヒロシマの男」など、いずれも本邦初訳となるレム20歳代の頃の作品集。
32世紀。高度な科学技術的発展を成し遂げた人類は、史上初の太陽系外有人探査計画に着手、地球に最も近い恒星であるケンタウルス座α星へ向かう決定を下した。かくして選りすぐりの遠征隊員を乗せ、巨大探査船ゲア号は未知の空間へと踏み出していく。旅路の果てに彼らを待ち受けているものとは?-レムの幻の長篇がついに邦訳なる。
地球上の兵器システムをすべて月に移し、軍拡競争をAI任せにした人類であったが、月面での兵器の進化がその後どうなっているのか皆目わからない。地球から送られた偵察機が一台も帰還することなく消息を絶つに至り、泰平ヨンが極秘の偵察に赴くが…レムの最後から二番目の小説にして、“泰平ヨン”シリーズ最終話の待望の邦訳。
着陸後に消息を絶ったコンドル号の捜索のため琴座の惑星レギス3に降り立ったインヴィンシブル号が発見したのは、廃墟と化した“都市”と、砂漠にめり込んでそそり立つ変わりはてた姿のコンドル号であった。謎に満ちたこの惑星でいったい何が起こったのか!?-ファースト・コンタクト三部作の傑作『砂漠の惑星』のポーランド語原典からの新訳。
「実在しない書物の書評を書くということは、レム氏の発明ではありません」。ゲーム理論を援用して宇宙の創造と成長を論じるノーベル賞受賞者の講演「新しい宇宙創造説」のほか、「ロビンソン物語」「逆黙示録」「誤謬としての文化」など、パロディやパスティーシュも満載の、知的刺激に満ちた“書評集”。
友人との再会から、青年医師ステファンは、煉瓦塀に周囲をかこまれ、丘の頂に屹立する、ビェジーニェツのとある病院に勤務することになる。そこ、「主の変容病院」では、奇怪な精神と嗜好を有する医師と患者たちが日々を営んでいた。彼らに翻弄されるステファンだったが、やがて病院は突如姿を現したナチスによって占拠されてしまう。次々と連行される患者たちを前にステファンの懊悩はなおいっそう深まっていき…レムの処女長篇『主の変容病院』のほか、ナチスによるユダヤ人大虐殺を扱った架空の歴史書の書評『挑発』や『二一世紀叢書』など、メタフィクショナルな中短篇5篇を収録。
集団主義のイデオロギーによって個人が厳しく抑圧される様を、独裁者の支配下、人びとが水の中に住むことを強制されている星に仮託して風刺的に描いた「航星日記・第十三回の旅」、大事故にあった宇宙船の中に唯一生き残った、壊れかけのロボットに秘められた謎を追った「テルミヌス」、高性能コンピューターに人類の歴史のありとあらゆる情報を吸収させた上で詩を作らせる、抱腹絶倒の言葉遊び「探検旅行第一のA(番外編)、あるいはトルルルの電遊詩人」など、自由な実験場ともいうべきレムの短篇の中から、ポーランドの読者人気投票で選ばれた15篇中、未訳の10篇を集めた日本版オリジナル傑作短篇集。
隕石と衝突し、突如操舵不能になった宇宙船。しかも悪いことは重なるもので、なんと船はピンケンバヒヤ重力渦に突入、時間の流れがめちゃくちゃになった結果、月曜日の私からはじまって火曜、水曜、木曜…と無数の私が出現!てんやわんやの大騒動に…広大無辺の大宇宙を旅する泰平ヨンが出会うさまざまな奇想天外・珍無類のできごとを、東欧SF界の巨星レムが奔放な筆致で描きあげた連作短篇集、待望の改訳決定版。