著者 : バ-バラ・カ-トランド
ヴァルダは家柄重視の結婚を強要され継父と口論の末、自立心を示そうと秘かに家を出る決心をする。毎年訪れる顔見知りのジプシーに頼み馬車の一隊に加えてもらおうと高価なカメラを携えて屋敷を出た。実はヴァルダには写真の心得があり将来個展を開けるほどの写真を撮ることが夢だったのだ。キャンプ地であるカマルグに立ち寄った時、この土地に惹かれ、皆と離れた。そして、危険も顧ず窪地に入りこみレンズをのぞいているうち荒馬に乗った男性に蹴ちらされてしまう。奇襲を受けたような出会いだった。
フランス革命で、ヴァレンス公爵は処刑。その衝撃から、愛人であった母も他界しセリッサは天崖孤独の境遇となる。そこで母の国イギリスへ戻ろうと決め、海峡横断の船でシェルドンに出会った。セリッサは、母とは別の生き方を望み裕福な貴族と結婚するという野心を抱く。その意図をシェルドンに明かし二人で計画を実行していくことになるがかれ自身にも、秘密の過去があった。決闘で、二度と故国の土を踏むまいと出国したので、ロンドンには戻れない。そこで、貴族の保養地であるバースへフランスの公爵令嬢を名のるセリッサの後見人として乗りこんでいくが…。
戦闘で負傷したリンドハースト伯爵はチェルトナムで療養中ジゼルダを看護婦として雇い入れる。彼女は痩せこけていたが、誇り高く淑女であることがうかがえた。が、数日後、弟の手術代のために愛人候補の男性を探してほしいと途方もない依頼を伯爵にもちかけた。折しも、従弟の結婚を阻止しようと思案していた伯爵は、ジゼルダの難問を同時に解決すべく、一計を巡らせる。ジゼルダを裕福な貴婦人に仕立て従弟に求婚させようとする筋書きで大芝居が演じられることになったが…。
ラックレー侯爵は退役後、社交仲間と遊び暮らしていたが、財産目あてに従弟のジェスロから命を狙われ始める。ある日、馬車でジプシーの娘にけがを負わせ、館に連れ帰ることになった。そのサビアは、ジプシーの娘だったが、優雅な淑女のようで、友人との賭けから貴婦人に仕立てあげることになる。ある夜会の場に毒蛇が送りつけられるがサビアの機転で、侯爵は危地を脱した。愛を確かめた二人だが、他民族とは結婚できないジプシーの控ゆえにサビアは、秘かに森の中へ身を隠す。彼女の行方を追う侯爵に再びジェスロの摩手が迫ってきた…。
父のウェントモア将軍は出征中、母は病床にあり、ノヴェラは愛馬と館で孤独な日々を送っていた。ある日、何者かに追われて大けがを負った男が駆けこんでくる。ノヴェラは、男を秘密の通路にかくまい勇敢にも追っ手を帰してしまう。負傷した男を看病するうち、ノヴェラは男から意外な依頼をされた。彼の代理としてロンドンへ行き陸軍大臣に伝言を届けてほしい、と。祖国のための極秘任務らしいと察したノヴェラは、申し出を承諾すると元の家庭教師と共に館をとび出した。
ブルーム侯爵は、自慢の特注の馬車に潜んでいた少年に気づき、仰天する。だが、その少年は、カーラという娘が変装した姿だったのだ。仕方なく彼女を館に泊めた伯爵のもとに翌朝、カーラを虐待する叔父が現われた。そのマトロック伯爵は、侯爵を敵視し長年、復讐の機会を狙っていた。姪の誘拐で告訴すると迫った彼はカーラを殴りつけ、ピストルで脅迫し結局は、二人の結婚を強行させてしまう。その直後、国王の逝去で侯爵はロンドンへ召喚され、社会情勢は不穏になる。偶然にも、政府要人の暗殺計画を知ったカーラは、大胆にも単独行動を起こした。
両親を亡くしたロカーナは、伯父夫婦の家で使用人同然の扱いを受けている。慰めは従妹だけで、そのキャロラインに侯爵との縁談が押しつけられた。だが、彼女には幼なじみの恋人がいて二人は挙式前夜の駆け落ちを決意する。時間稼ぎのために、キャロラインから花嫁の代役を懇願されたロカーナは冷酷な叔母から逃げたい一心で了承した。当日は、ベールに包まれた顔で俯きクォーン侯爵と周囲の目を欺き通した。その後、パリへのハネムーンの途上真相を知った侯爵は激怒するが既にロカーナとは正式な夫婦であり、苦慮の末、奇妙な約束を交わしあう…。
司祭の娘シェンダは森で出会った紳士に罠にかかった愛犬を助けてもらう。彼は微笑と口づけを残し、立ち去った。その直後、父を事故で失ったシェンダは近くのアロー館にお針子として雇われる。実は、その館に致着した新しい伯爵こそあの森の中の紳士だったのだ。当時イギリスはフランスと戦争中で伯爵は、ナポレオンのスパイ探索を海軍大臣から特命として受けていた。館の客人の不審なメモを、偶然にも発見したシェンダは、伯爵に急報する。彼女の能力に驚いた伯爵は、女スパイの動向を探るため、協力を依頼した。そして、シェンダはロンドンへ旅立つ。
社交界の人気者、ウォーレン・ウッドはマグノリアと出会い、秘かに婚約する。だが、金持ちとの結婚を狙う彼女はウッドの甥に鞍がえをしてしまう。絶望に駆られた彼を見かねた友人は過酷なアフリカ旅行へ連れだした。一年後、身心とも逞しくなったウッドがパリに戻ると、落馬事故で死んだ甥に代わり、爵位継承者になっていた。その夜、セーヌ河畔を散策中自殺願望をもつナディアという娘を救う。まもなくバックウッド侯爵となった彼に再びマグノリアが標的を定める。執拗な彼女から逃れるため、ウッドはナディアを婚約者にしたてたが…。
父のモレコーム侯爵の虐待に耐えかね、イヴォーナは母と共にフランスへ逃げた。ガンブワ伯爵の別荘での四年間の安息。だが、不虜の事故で母と伯爵は亡くなる。茫然とするイヴォーナの前に現れたのは父の弟、アーサー叔父だった。妻の訃報のショックで父もまた急死し、その代役として、後見人となったのだ。憎悪をつのらせた彼は、姪を強制的に厳格な修道院に閉じこめようとする。一度は自殺まで考えたイヴォーナだが修道院への道中、隙をみて逃げ出すと、髪を切り、男装して闇にまぎれこむ。凍える雪道で見つけた木こり小屋にはけがを負ったサンスール公爵がいた。