著者 : バ-バラ・カ-トランド
両親を亡くしたジャコバは職を探して、ロンドンへ出向く。面接では、スコットランドの老貴族の世話をする仕事だと聞かされ遠路、一人で旅立った。が、実は復讐劇の使者として利用され、裏切りによって女性すべてを憎む伯しゃくと対面するはめになってしまった。罵声を浴び、追い返されかけた際飼い犬にかまれ、負傷したのでやむなく城に滞在することになる。ある日、伯しゃくが密漁者に襲われ意識不明の重態におちいった。ジャコバは、医者から頼まれ伯しゃくの看護を始めたが…。
母の死後まもなく、カリータは大嫌いな義父から結婚を強要された。相手は財産家だが、初老の貫族である。意を決したカリータは家を出ると伯父のいるノーフォーク州を目ざした。その旅の途中で、偶然にも落馬事故を目撃し、必死で助けを求める。意識不明の男性は近所の農家に運ばれカリータも同行することになったが、二人は夫婦だと、女主人に勘違いされる。誤解をただしかけたカリータだったが、このまま夫婦を装っていたほうがひと晩の宿だけでも安心だと考え直し、あえて否定はしなかった。こうして、カリータの看護が始まった。
一代で莫大な富を築いたローランド卿は、財産目あての男が、一人娘のカシアに近づき、その富を蕩尽することを恐れ、勝手に結婚相手を決めてしまう。独断的な父親に反発したカシアは新聞の求人欄で、家庭教師の職を得た。そして本名を隠し、秘かに家を出るとドレッグホーン公爵の田舎の城へ向かう。そこで待ちうけていたのは、皆から厄介者にされてきた公爵の甥だった。だが、その少年、サイモンの真情を理解したカシアは、自分の秘密も打ち明ける。二人は協力し、難問に立ち向かうが…。
スコットランド高地では、昔から氏族同士の紛争が絶えなかった。今も、マックスティールとマクブララの両族が敵対し、一触即発の状態である。マックスティール族長の娘フィナは父と共に、強く平和を願っていた。その結果、フィナとマクブララ族の若者ブララデール伯爵との縁談がもち上がる。一方の伯爵は、ロンドンでの生活を享受していたが、故郷の現実を知り、若き族長としての義務感に駆られる。二人は気の進まぬまま、一族のためについに結婚を承諾したが…。
父のアーメロン伯爵が旅先で再婚!その報せに、レンシアとアリスの姉妹は驚いた。継母の身勝手のせいで、父と約束したフランスの古城巡りも一旦は諦めざるをえなくなる。だが、妹をがっかりさせたくなかったレンシアは、若い未亡人を装いアリスと共に予定通り旅立った。そして、ロワール地方へ向かう途中でモンリシャール公爵と出会う。かれは姉妹へ城への滞在をすすめ、ショモン城のガイド役を申し出たが…。
公爵のビクター・ブルック卿はビクトリア女王を教母と仰ぎ、側近として、その寵愛も深かった。だが、宮廷の女官との戯れの恋が発覚し、女王を怒らせてしまう。そして懲らしめのためか、社交シーズン中に、ある使命が下された。政略結婚によって、小国ザラリスに嫁ぐシデラ女王の付き添い役である。英国軍艦に乗り込んだビクター卿は王女に対面し、その美貌と聡明さに驚いた。船旅は、予想外に楽しい日々となり、一路、ザラリスに向かっていくが…。
アードウィック伯爵は激怒していた。内密に婚約していたヘロイーズから一方的な破棄を宣告されたからだ。そんな折り、馬車の事故に遭遇し、弟連れの美しいルピータを救いだす。二人の父親とは旧知の間柄で深刻な事情があることを知った伯爵は姉弟の後見人をかってでた。そして、婚約者と出席する予定だった注目の仮装舞踏会へルピータを同伴しようと思いつく。その当日、華麗なるクレオパトラに扮して、ルピータがあらわれた…。
退役したメルヴァリー侯爵は、愛人達の裏切りなどで、ロンドンの生活に幻滅してしまい、失意のまま故郷の館へと向かう。その途中、馬場の事故に遭遇するが、その一台に乗っていたクリスティーナという美少女は、侯爵の領地内で乳母と二人きりで暮らしていた。だが、既に両親は亡く、強引な男に迫られて怯えながら過ごす毎日らしい。そんな事情を知った侯爵は、付添い役を捜し、自分の館に引き取ろうと決心するが…。
父のシェンレイ卿を亡くしたカイラは未亡人となった義母の恐ろしい計画を知る。遺産を狙って、跡とりの弟の殺害を企てているのだ。その夜ふけ、二人はロンドンの屋敷を忍び出た。今ではグランストン伯爵のリリーコート城にいるばあやだけが頼りだ。二人は励まし合って長い旅路を急ぐが、義母の魔手は容赦なく迫ってくる…。
燃えつきようとするわが家を、アリーナは弟のゲリーと共に呆然と見つめていた。召使いの不始末による火災だった。いまや姉弟には、隣のメルドン・ホール以外頼るあてはない。しかし、地主のメルドン侯爵の評判は、かんばしいものではなかった。二人が意を決してメルドン・ホールへ行ってみると、長い間不在のはずだった、メルドン侯爵本人がいた。
エヴァは父のヒリングトン卿と共に亡き母の故郷であるパリへやって来た。ところが、その父も心臓発作で急死してしまった。やっと葬儀を終えたあとエヴァは高価な飾りボタンの紛失に気づく。その行方を求めて、父の倒れた場所が悪評高い館とも知らず、エヴァはその館に赴いた…。
セジウィン卿のひとり娘ノリーナはたぐいまれな美貌ゆえ、継母から憎まれている。そのヴァイオレットは、実母の遺産までも狙っているらしい。ある夜、ノリーナが自分の夕食を猫に与えると目の前で苦しみながら死んでしまった。ヴァイオレットが毒殺を企てたのだ。継母のたくらみをさとったノリーナは屋敷を出る決意をし、計画を練る。
社交界にデビューしたばかりのヴァレリアに、フランス人公爵との縁談がもちあがった。ヴァレリアはかれのシャトーを訪れることになり、兄のアントニーとともに南フランスへ向かう。ところが、アントニーは妹を強引に説きふせ見合いの前に、評判のカンカン見物をしようとピアリッツに立ち寄った。変装をして出かけたダンスホールで、ヴァレリアはレイモン・サヴァンと名のる伯爵に出会う。
一八七四年。両親を亡くしたピュティアは、伯母アイリーンのもとに身を寄せていた。その頃、侵略の危機にさらされていたバルカンの小国バルターニャでは、救国の策としてイギリス女王の縁者を王妃に迎えることが画策されていた。白羽の矢がたてられたのは、女王の血をひくアイリーンの娘、エリナだった。だが、エリナには恋人がいた。困りはてたエリナは、ピュティアにとんでもない頼みごとをもちかけてきた…。
「タリー、あなたとはもう結婚したくないのよ」-。婚約者メリアの突然の心変わりに、ブローラ卿は愕然とした。彼女は、次期首相候補と目される若き政治家アーネスト・ダンクスが現れたことで、かれとブローラ卿とを天秤にかけたのだ。耐えがたい屈辱を感じながら、ドーヴァー街にある自分の事務所に立ち寄ったブローラ卿は、そこに泣き暮れる新米タイピイト、ジーンの姿を目にした。彼女もまた、故郷の婚約者に裏切られたのだという。先の大戦を特別奇襲隊の隊長として戦い抜いたブローラ卿の胸に、そのとき、ある作戦が炎となって燃え上がった。
婚約者に裏切られたものどうしが手を組んだ、大胆な奇襲作戦が開始された。ブローラ卿はジーンと出会った翌日に、二人の婚約を発表したのだ。それが恋人の心を取り戻したい一心のブローラ卿の策略なのだということを知りながら、ジーンもまた自分の人生の大きな変化に戸惑いと興奮をおぼえていた。しかし、いつしかジーンの心の中では何かが変わりはじめていたのだ…。舞台をスイス、サンモリッツに移して、さらに複雑に絡み合う数奇な愛の運命。
ロンドンに帰る途中つかのま馬車をとめたステーヴァートン伯爵の前に若い娘が降り落ちてきた。娘の名はペトリナ、退屈な生活にすっかり嫌気がさして学校を脱走した、後見人は冷酷でまったく頼りにならない、という。しぶしぶペトリナを馬車に乗せた伯爵は、やがて自分がその「無責任な後見人」であることを知った。どうやら伯爵は、とんでもなくお転姿な被後見人を背負いこんだらしかった…。