著者 : バ-バラ・カ-トランド
父を亡くして憔悴しきっていたアンセラは、亡き父の友人フェリックス医師の勧めにしたがって南フランスへ向かった。ロシアの貴族フェオドローワ・セボロフスキー妃が、話相手になる看護婦を求めているという。だが、到着する早々驚くことばかり-。アンセラは散歩の途中で、社交界に渦巻く、唾棄すべき陰謀を耳にしてしまったのだ。その夜、モンテカルロのカジノを訪れたことから、アンセラはその渦の潮流に呑み込まれていく。
継父が無理強いする結婚話から逃げるため、リーラは伯母を頼って海を越え、オランダに渡った。ところが、愛する伯母には会えたものの伯母は手術しなければ余命いくばくもない体のうえ、手術には莫大な費用が必要だった。そんな折、リーラの絵の才能に目をつけた画商が金になるという話を持ち込んできた。有名画家の絵を模写し、本物と称してとあるイギリス侯爵に渡せばいい、というのだが…。
フランスに滞在中のイギリス人を拘禁せよ-。戦争が再開されると、ナポレオンは命令を下した。ちょうどパリを訪れていたヴェルニータと両親は帰国もかなわず、官憲の目を逃れて隠れるほかなかった。しかも、父が急病で亡くなってからは、お針子をして得たわずかな収入で、やっと暮らす毎日。このままでは飢え死にしてしまう…。意を決したヴェルニータは、つくった服を高く買ってもらおうと注文主であるナポレオンの妹ポーリーンのもとに出向く。そこで彼女は、ひとりのエレガントな紳士に出会った…。
新しくきたチャドウッド伯爵に援助を断られ、オリヴィアは茫然としていた。先代の伯爵が亡くなってから一年、食べるものさえ満足にない村の暮らしは困窮をきわめていた。その帰り道、村の若者にナイフで刺されて重傷を負った伯爵をオリヴィアは助けるはめになった。村人たちの暴動をなんとかおさえなければ…。意識不明の伯爵を前にして、オリヴィアは一計を案じた。
「あなたはダニューヴ川から生まれた空の妖精にちがいない…」。その言葉が、心を躍らせるハンガリーの旅の始まりだった。社交界デビューを控えた18歳のアリサは、父のバクリントン伯爵から、貴族の娘は結婚相手を愛情では選べないと言われ、ショックを受けて衝動的に家を抜け出したのだ。旅先で初めて出会ったハンガリーの男性の面影はアリサの心に深く刻みつけられた。
時は1812年。ナポレオン軍の侵攻迫るモスクワを離れ、ペテルブルグの知り合いの家に身を寄せていたゾイアは、イギリスからきたウェルミンスター公爵に出会った。ゾイアの弾くピアノの音に、公爵は深く感動し、ふたりはたがいに強くひかれあうのだが、突然ゾイアはモスクワへ送りかえされてしまう。あとを追いかけ、モスクワへ向かった公爵は、途中で重傷を負い、くしくもゾイアの家に運びこまれた。
「ここで何をしているの?」ヴァーダの鋭い問いかけに、ホテルの部屋に忍びこんだその男は、アメリカの石油王のひとり娘を取材しにきたジャーナリストだと名のった。ヴァーダをその本人だとは気がつかないらしい。そこで、ヴァーダは令嬢の付添いだと偽って、パリを案内してもらうことにした。イギリスの公爵との愛のない結婚を勧められていたヴァーダには、つかのまの自由な日々だった。