著者 : バ-バラ・カ-トランド
キングズウッド公爵の目下の悩みは、いとこで後継人のリチャードが、社交界で浮名を流す女性に惑わされて婚約し、そのうえ、殺人事件までひきおこしたこと。そんなとき、公爵の前に現れたのは、旅の途中で病に倒れた牧師の娘、ベネディクタだった…。
ストウ侯爵はバーナム卿の夫人と、秘密の情事を重ねていた。ところが、妻の浮気に気づいたバーナム卿は、情事を逆手に、妻に離婚を迫り、真相を暴露すると脅迫し始めた。スキャンダルの渦中に巻きこまれるのを恐れた侯爵は、バーナム卿の疑念を晴らして、窮地から逃れるため、侯爵自身、実際に誰かと婚約することを思いたった。
1816年、ナポレオン戦争の余波を受け、イギリスでは相次いで銀行が閉鎖。ランボーン卿一家は、全財産を失いまさに崖っぷちに立たされていた。そこへ持ち込まれたのが、卿の娘カミラをメルデンステイン王国の皇太子妃に、という願ってもない縁談話。カミラは父母を救いたい一心で、不安を胸に、見も知らぬ皇太子に嫁ぐ決心をする。しかし、王国までの護衛官として遣わされた男を見たカミラは、ひそかに驚きの声を漏らしていた…。
突然の両親の死によって、メリンダは不幸のどん底に突き落とされた。叔父の家での惨い仕打ちに耐えかねた彼女は、行く当てもなくロンドンへ向かう。親切な貴婦人が一夜の宿を申し出てくれた上、莫大なお金が手に入るチャンスがある、という。そこが娼婦の家であるとは清純無垢なメリンダが知る由もなく、彼女はチャード侯爵との偽りの結婚式を挙げる羽目になる…。メリンダは今、甘く危険な人生の罠に翻弄されようとしていた。
サビーニュ公爵は青春時代に受けた心の傷がもとで人間不信に陥り、今はパリで放蕩生活を送っている。母の公爵未亡人は独り息子の行末と公爵家の存亡を心配し、従兄のロシュシャン枢機卿に相談する。二人は公爵を結婚させようと企て枢機卿は花嫁探しに近接の城を訪ね回った。
両親を亡くしたレディ・アイナは、伯父のワイモンド卿のもとに引き取られた。とびきりの美人で、社交界の花形である義理の伯母は、独身のチェイル候爵に熱をあげ、若いアイナに嫉妬する。ある日、候爵が伯母のために開くパーティに、アイナも同行することになった。
ファーンハースト卿の娘、セルマは、大伯母の莫大な遺産を相続した。そのことを聞きつけた継母は、セルマを自分の愛人と結婚させその財産をものにしようと企む。陰謀を知ったセルマは、財産の処分を禁じた指図書を弁護士に送り、馬丁ひとりを供に家を飛び出した。
チャーンクリフ伯爵は、ルイ王朝の家具を求めフランスに渡った。伯爵が妻にしたいと望む娘エレインがフランス家具をほしがったからだ。だが、荒れ果てたマリニー城で見つけたのは昔の栄華をしのばせる華麗な家具だけではなかった。謎めいた老女に導かれて秘密の通路を抜けるとそこには、追手の目を逃れ、隠れ棲む貴族の令嬢リネッタがいた。
時は1803年、ヨーロッパ支配を狙うナポレオンの上陸を恐れるイギリス-。アルトン侯爵は、政府中枢部に潜むスパイを発見せよとの命を受ける。公私ともに暗澹たる悩みを抱えながら森をひた歩いているとき、かれは妖精のような不思議な雰囲気を漂わせた、美しい娘に出会う。しかし娘は素性も明かさず、その短い出会いさえも夢であったかのように、忽然と姿を消してしまう。その裏には思いもよらない秘密が隠されていた。
1750年。ベニスへ向かう航海の途中、サンタ・ルチア号は嵐にのまれて岩場に激突、海の藻屑と消えた。たった2人の生存者-ハーヴェイ卿と、彼に助け出された美しい娘パオリナを残して…。父を亡くし、お金も行く当てもないパオリナに、自称冒険家のハーヴェイ卿は大胆な企てを告げる。パオリナを自分の妹に仕立て上げ、ベニスの社交界で玉の輿に乗せようというのだ。偽りの兄と妹の華やかで危険な人生の賭けが始まる。
両親を亡くして、1人で暮らすバレッサはその日食べるものにも不自由するほど困窮していた。ある日、落馬してかつぎこまれたサラ・バートン侯爵夫人から晩餐会のゲームに参加してほしいと頼まれる。それはウインドンベリー侯爵にふられたサラが仕組んだ復讐劇だった。
イサ・マクナヴァーはロンドンで歌手として活躍していたが静養のため、二年ぶりにスコットランドへ帰郷した。ある日、幼い頃よく行った洞窟に入りこんだイサはそこで、三人組の男たちの密談を耳にする。どうやら、秘宝探しの相談らしい。さらに驚いたことに、かれらは、マクナヴァー一族の族長であるストラスナヴァー公爵の暗殺を企だてていた。
親子ほど年の離れた州統監ストナーム卿との縁談に、レディ・アイオナは困り果て、一番心を寄せている乳母に相談しようと、家出した。しかし、大富豪ウルフ・レントン卿の家で働くことになっていた乳母は翌日、急死してしまう。
アサストン公爵は、結婚相手として女たちの憧れの的だった。モナコ滞在中女たちの執拗な求婚についに嫌気がさし、ひとり、アルジェに住む親友ニコライをたずねる。公爵は、ニコライ夫婦の愛に満ちた生活をまのあたりにし真実の愛を羨ましく思う。ある日、気晴らしに行った奴隷市場で競売にかけられていたイギリス娘セリナに出会う。
ダービーの優勝をめぐるブランスカム伯爵の陰謀-。それを知ったアルチェスター侯爵は、復讐を決意する。名もなく、貧しい娘をにせの貴婦人に仕立てあげ財産目あての結婚をもくろむ伯爵に押しつけよう。侯爵は復讐を胸に孤児院を訪れる。そこには、骨と皮ばかりにやせた娘キストナがいた。
25年前-。ソーマック公爵と婚約していたカニーダの母は、イギリスの伯爵家の次男ジェラルドと出会い、結婚式の前夜に駈け落ちをした。以来、二人はソーマック公爵から様々ないやがらせを受けながらも、イギリスで暮らし、不遇のうちに死んだ。公爵に憎しみを抱いて育ったカニーダは、先代の公爵に代わって息子の現公爵に復讐するためロワール河畔へと向かう。サーカス芸人になりすまし、愛馬にまたがって華々しく公爵の前に登場した。
第4代オッターバーン公爵は、バッキンガムシャーにある城と領地を継承するため、東洋より帰国した。しかし、父の浪費によってオッターバーン家は破綻し、巨額の負債を負うことになった。途方に暮れた公爵に従姉のレディ・エディスが打開策を提案する。ヨーロッパの貴族の称号を手に入れようと野心を抱くアメリカ富豪の令嬢との結婚話だった。
「ソエルディン候爵のもとに嫁ぐのだ」父、マドレスコート公爵の言葉に、レディ・ロレッタは当惑した。夫については、以前から夢に描いた理想像があった。それが、一度も会ったことのないフランス人の男性と結婚するなんて…。思い悩んだロレッタは身分を偽ってフランスへ渡り当の男性の人柄を見極めようと決意した。