著者 : パク・ミンギュ
誰からも聞かれていないし、 誰にも話していないけれど、 誰かに話したい作家たちの話 “韓国の芥川賞”とも称され、韓国で最も権威ある文学賞「李箱文学賞」。 その大賞を受賞した作家は、受賞所感とともに「文学的自叙伝」を発表する習わしがある。 どんな本を読んできたのか、どのようにして小説を書き始めたのか、どんなふうに作品を書いてきたのかーー。 歴代の受賞者23名による文学的自伝エッセイ集。 日本語版特別収録 2005年(第29回)大賞受賞 ハン・ガンの文学的自伝「記憶の日向」 著者(掲載順) ユン・イヒョン、ソン・ホンギュ、ク・ヒョソ、キム・ギョンウク、 キム・スム、ピョン・ヘヨン、キム・エラン、キム・ヨンハ、 コン・ジヨン、パク・ミンギュ、キム・ヨンス、クォン・ヨソン、 キョン・ギョンニン、キョン・ミギョン、ハン・ガン、 クォン・ジエ、シン・ギョンスク、パク・サンウ、キム・ジウォン、 ユン・デニョン、ユン・フミョン、チェ・ユン、チェ・スチョル 翻訳者(掲載順) 古川綾子、橋本智保、関谷敦子、五十嵐真希、岡裕美、姜信子、 吉川凪、蓮池薫、斎藤真理子、呉永雅、生田美保、きむ ふな、 カン・バンファ、吉原育子、李聖和 まえがきより 李箱文学賞受賞作を発表した後に楽しみにしていることが一つある。 大賞受賞作家が書く学的自叙伝」を読むことだ。 この作品を書いた作家はどのようにして小説を書き始めたのか、どんな考えを持っているのか、どんな本を読んできたのか、どういうふうにして作品を書いているのかなど、作家に対する好奇心をふくらませてそれらの文章を読んでいる。 そして、私は毎回「受賞所感」だけでなく、作家自身の心のうちを率直かつありのままにさらけ出した「文学的自叙伝」に感動する。 一人の作家について知るつもりが、一人の人間についてさまざまな発見をすることになるからだ。 李箱文学賞とは 朝鮮を代表するモダニスト作家で詩人の李箱(イ・サン)の文学的功績を称え、文学思想社が1977 年に設立した韓国で最も権威ある文学賞。 日本の芥川賞に相当するとされ、前年の1月から12月までに文芸誌などで発表された中編もしくは短編の純文学作品が審査の対象となる。 これまでの最年少受賞者は、キム・エラン(当時33 歳)で、受賞作の「沈黙の未来」は『外は夏』(古川綾子訳、亜紀書房)に収録されている。最高齢受賞者はク・ヒョソ(当時59 歳)。 親子で受賞したケースもあり、ハン・ガンとハン・スンウォン、イ・ジェハとユン・イヒョ…
老境を描いた詩情豊かな作品「昼寝」。息もつかせぬ「ルディ」。兵役を控えた若者たちを描いた「ビーチボーイズ」。奇天烈な宇宙SF「ディルドがわが家を守ってくれました」。暗示的な「膝」。全8篇どこから読んでも傑作!日本の読者へのメッセージも!
「どれほど簡単なことなのか。希望がないと言うことは。 この世界に対する信頼をなくしてしまったと言うことは。」 ーーファン・ジョンウン 国家とは、人間とは、人間の言葉とは何かーー。 韓国を代表する気鋭の小説家、詩人、思想家たちが、セウォル号の惨事で露わになった「社会の傾き」を前に、内省的に思索を重ね、静かに言葉を紡ぎ出す。 〈傾いた船、降りられない乗客たち〉 「私たちは、生まれながらに傾いていなければならなかった国民だ。 傾いた船で生涯を過ごしてきた人間にとって、この傾きは安定したものだった。」 ーーパク・ミンギュ 「みんな本当は知っているのに知らないふりをしていたり、知りたくなくて頑なに知らずにきたことが、セウォルという出来事によって、ぽっかりと口を開けて露わになってしまったのだ」 ーーファン・ジョンウン 「私たちが思う存分憐れみを感じられるのは、苦痛を受ける人たちの状況に私たち自身が何の責任もないと思うときだけだ。」 ーーチン・ウニョン 「「理解」とは、他人の中に入っていってその人の内面に触れ、魂を覗き見ることではなく、その人の外側に立つしかできないことを謙虚に認め、その違いを肌で感じていく過程だったのかもしれない。」 ーーキム・エラン ◎中島京子氏評「2018年の「この3冊」」(「毎日新聞」2018年12月16日) 《傾いた船に乗って沈もうとしているのは私たちだと感じている昨今、その苦しみを噛みしめながら書かれた言葉に打たれる。》 ◎武田砂鉄氏評「今日拾った言葉たち」(「暮しの手帖」2018年8-9月号) ◎武田砂鉄氏評「リレー読書日記」(「週刊現代」2018年6月16日号) ◎武田砂鉄氏評「心を開放する本。」(「ブルータス」2018年10月15日号) ◎武田砂鉄氏推薦「この夏おすすめする一冊 2018」(青山ブックセンター本店) ◎「セウォル号以後文学」の原点 2014年4月16日に起きたセウォル号事件。修学旅行の高校生をはじめ、助けられたはずの多くの命が置き去りにされ、失われていく光景は韓国社会に強烈な衝撃を与えました。 私たちの社会は何を間違えてこのような事態を引き起こしたのか。本書は、セウォル号事件で露わになった「社会の傾き」を前に、現代韓国を代表する小説家、詩人、思想家ら12人が思索を重ね、言葉を紡ぎ出した思想・評論エッセイ集です。 本書に寄稿している作家たちの文学作品は、近年、日本でも広く翻訳出版され、多くの読者を獲得するようになりました。それら新世代の作家が深く沈潜した場所から発した研ぎ澄まされた言葉の数々は、揺るぎない普遍性を獲得し、「震災後」の世界を生きる日本の私たちの心の奥深くに届くものであると確信しています。 《本書は韓国で増刷を重ね、多くの人に読まれてきました。キム・エラン作『外は夏』に代表される韓国の「セウォル号以後文学」の原点といえる本書を通して、韓国の作家たちが喪失と悲しみにどう向き合ったのかを知っていただければと願っています。》
15勝65敗。僕らのチームはとてつもなく弱く、 そして、美しかったーー 韓国プロ野球の創成期、 圧倒的な最下位チームとして人々の記憶に残った三美スーパースターズ。 このダメチームのファンクラブ会員だった二人の少年は大人になり、 I M F 危機と人生の危機を乗り切って、 生きていくうえで最も大切なものは何なのかを知るーー。 ★韓国で2 0 万部超のロングセラーとなっているパク・ミンギュの永遠のデビュー作、待望の邦訳! ★「一割二分五厘の勝率で僕は生きてきた。まさしく三美スーパースターズの野球だといえる」--パク・ミンギュ プロローグ プレイボール 1.とにもかくにも一九八二年のベースボール 僕は少年、野望を抱け 仁川の海にサイダーが湧いても 信じようと信じまいと、ジーザス・クライストなスーパースター 語っておくれ、旅立つ船よ 悔い改めよ、プロの日が近づいている あの星は僕の星、あの星は君の星 とにもかくにも一九八三年のベースボール 一九八四年のブーメランとその年のノーヒットノーラン 膝と膝の間 バイバイ、スーパースター 2.とにもかくにも一九八八年のベースボール 僕も行くぞ 星の流れる橋を渡って 秋の木の葉が寒風に飛び散れば 天と地の間に花びらが降り 雨に濡れた太陽も、のどが渇いたあの月も 若い日の悩みは希望を連れてくる ソロソロミンナ オワカレタイム 3.とにもかくにも一九九八年のベースボール デッドボール ツーストライクスリーボール 立ち上がれ野球、キャッチボール、空 ツーストライクフォアボール ステップバイステップ、一歩ずつ人生は変わる ビューティフル・サンデー、時間はたっぷりと溢れていた 慶祝、三美スーパースターズファンクラブ創団 本当の人生は三千浦にある 三美スーパースターズ VS. プロ・オールスターズ エピローグ プレイボール あとがき 訳者あとがき
人類史は卓球史だ! 松田青子氏推薦! 僕は毎日、中学校でいじめられている。あだ名は「釘」。スプーン曲げができる「モアイ」もいっしょにいじめられている。僕らは原っぱのど真ん中にあった卓球台で卓球をするようになる。僕らの気持ちは軽くなる。いじめにあうってことはさ……「のけもの」じゃなくて、「なきもの」にされてるってことなんだ。みんなから? ううん、人類にだよ。僕らは卓球用品店主「セクラテン」に卓球史を伝授してもらう。卓球は戦争だったんだよ。世界はいつもジュースポイントなんだ。まだ勝負はついていないんだ、この世界は。空から、ハレー彗星ではなく、巨大なピンポン球が下降してきた。それが原っぱに着床すると大地は激震し、地球が巨大な卓球界になってしまう。そして、スキナー・ボックスで育成された「ネズミ」と「鳥」との試合の勝利者に、人類をインストールしたままにしておくのか、アンインストールするのか、選択権があるという……。 超絶独白ラリーの展開、脳内スマッシュの炸裂、変幻自在の過剰な物語。『カステラ』(第1回日本翻訳大賞受賞)で熱い支持を獲得した、韓国を代表する作家が猛打する傑作長篇! 作家自筆の挿画収録。
この世界にどことなく馴染めない彼と彼女、そしてヨハン。三人の過去、現在、そして生き続けることの軌跡を描いた、魂の喪失と再生の物語。愛の本質と人生を問う恋愛小説。