著者 : ベティ・ニールズ
看護師のハリエットは、休暇でオランダの友人宅を訪ねた。色鮮やかな花々にあふれる早春のオランダは世界一美しい。胸を高鳴らせて町を闊歩する彼女の前に、信号待ちの車が停まった。端整な顔立ちの運転手と目が合い、ハリエットは思わずほほえんだ。なぜか、ずっと昔に会ったことがあるような気がして…。ところがその男性は冷ややかなまなざしのまま走り去り、ハリエットは恥ずかしさに、一瞬でも浮かれた心をたしなめた。翌日、診療所を経営する友人の父親を、医師のフリソが訪ねてきた。まあ!あの車の男性だわ!驚くハリエットに、彼は詰問した。「昨日、君はなぜほほえんだ?僕のことなど知らないはずなのに」
オリビアは父の死後、母とともに祖母の家に身を寄せていた。資格や技能はないものの少しでも家計を助けたくて、病院の事務員として熱心に働いている。そんなある日、カルテを取りに来た外科医ハソと短い会話を交わした。わたしよりかなり年上のようだけれど、とてもハンサムで感じのいい男性だったわー少し話しただけでも気持ちが温かくなるような。しかし職場では人員削減が始まり、同僚をかばったオリビアは自ら申し出て退職してしまう。次の仕事も見つからず、くじけそうになっていたとき、彼女は町で偶然、ハソと出くわした…。
ウエディングドレスはみごとに仕上がった。サテンにレースを飾った、優美でかわいいドレス。それは、はつかねずみの一家の物語を描いた絵本の中で、ねずみの花嫁が着ているドレスとそっくり同じものだった。看護師のフランはこれを着て、花嫁に、いや、リサのママになるのだ。そう、愛されていないと知りながら、今日、フランは憧れのオランダ人医師リトリックと結婚するー彼の余命わずかな一人娘リサの最期の日々を幸せにするために、リサの願いどおり、絵本そっくりのドレスを着て。これは、やがて小さな命とともに終わりを告げる、切なすぎる契約結婚。
「幸せへの航海」忙しい日々を送る看護師のラヴデイは、親友に頼み事をされた。恋人との結婚を後見人のアダムに認めてもらえるよう協力してほしいと。翌日偶然アダムと顔を合わせると、彼は自己紹介のあとで突然ラヴデイにキスをしたかと思うと、続けて彼女のことを“お節介な出しゃばり”と非難したのだ。ラヴデイは激しく動揺して…。「愛と情熱の日々」ローレンは親に捨てられ、児童養護施設で孤独な子供時代を過ごした。難読症を抱え、過酷な現実にひとり立ち向かってきた彼女にとって、おとぎ話のようなロマンスは縁のないものだった。ある日、運命のいたずらにより、豪華なパーティーで、まるで別世界に住むギリシアの大富豪、アレクサンドロスと出会うまでは。「いきなり結婚?」ひとりで娘を産み育ててきたメリー。年頃になった娘の友人のおじだという長身で澄んだ青い瞳の会社社長ザックが訪ねてきて、二人が結婚するつもりだと聞かされ仰天する。しかしそれは勘違いだった。ザックはお詫びにとメリーを食事に誘う。断れず応じたメリーだったが、ザックに突然結婚したいと言われ、呆然とする!
ああ、今日もくたくただわ…。病院の住み込み庶務係のクローディアは、きつい仕事をこなしてはベッドに倒れ込む日々。お世話になっていた大おじが亡くなったのを境に、これまで住んでいた家を追い出されてしまったのだ。そんな彼女に手を差し伸べたのは、大おじを診ていた年上のハンサムな医師トマスだった。「結婚すればきみは自由を、ぼくはよき友人を手に入れられる」愛のかけらもない申し出と知りつつも、彼が時折見せるやさしさに淡い期待を抱き、クローディアは思わずうなずいてしまうが…。
セイディは独りぼっち。唯一の肉親だった祖母が亡くなり、残された借金を返すために思い出の家も売りに出さなければならない。これからは住み慣れた村を出て、仕事も見つけなくては。幸い、すぐに買い手が現れ、住み込みの家政婦も探しているらしく、セイディはここに住み続けられるならと、その求人に飛びついた。雇主となるオリヴァーは中年の物書きだと聞いていたが、いざ会った彼は背が高くて、女性なら誰もが憧れるような顔立ちだった。思わず心を奪われたセイディは、未来は薔薇色などと考えていたが、オリヴァーの言葉に、彼女の浮ついた心は地面へと叩き落とされた。「僕は思慮深い田舎の女性を雇いたかったんだ。君に家政婦は無理だ」
ロンドンで屋根裏部屋暮らしをする夜勤の看護師ソフィ。ある日の夕方、帰宅する人々でにぎわう雑踏の中、彼女は石畳にハイヒールを取られて立ち往生してしまった。すると、どこからともなく現れた背の高い男性に助けられた。親切さとは裏腹に、彼のハンサムな顔は不愛想で冷たく、ソフィはなんだかみじめな気持ちで礼を告げ、その場を立ち去った。やがて病院に出勤し、思わぬ人物を目にする。さっきの親切で冷たい人!彼は大事な手術での執刀を請われてこの病院へやってきた、オランダ人医師のファン・ターク・テル・ヴェイスマ教授だった。再会できた嬉しさを必死に隠し、ソフィは仕事に徹しようとするが…。
夕暮れの田舎道で、フロリナは高級車に乗った父娘と出会った。背が高くハンサムな男性と、かわいらしい女の子。それからひと月後、父娘は村の屋敷を買い取り、引っ越してきた。病みあがりの父をかかえて生活に追われているフロリナは、料理の腕を買われ、その屋敷で働くことになる。週末を田舎でのんびりと過ごす医師の主人、サー・ウィリアムのために心をこめて食事をつくるーそれが彼女のささやかな喜びになった。雇い主の彼から見れば、フロリナはただの使用人にすぎないし、彼は再婚相手も決まっていたのだけれど。
なんてすてきな先生!ハンサムで、有能で、落ちついていて…。ルイーザが秘書兼受付係をする診療所の新しい顔で、たちまち患者やスタッフの注目の的となったギフォード医師。けれどルイーザだけは、皆に同調して浮かれたりはしなかった。気まずい出会い方をして以来、先生はわたしを嫌っているみたい。視線は冷たいし、無表情で何を考えているかわからない。ところがギフォード付きとなったルイーザは、彼の自宅へ同行してまで仕事をすることになり、しだいに思慕の念を抱くようになる。しかし彼には、婚約者がいた。美しいけれど意地悪な婚約者が。あの女性は先生にふさわしくないーでも、誰だったらふさわしいの?
牧師の5人娘の長女フィリーは、美人揃いの妹たちに比べて平凡な容姿の田舎娘だ。ある日、都会から来たハンサムな医師ジェームズに道を教えたとき、彼の碧眼に胸のときめきを覚えた。けれど助手席にはファッション誌から出てきたような完璧なまでに美しい連れの女性がいて、その手には、大きなダイヤの指輪が輝いていた…。(『ドクターにキスを』)。育ての親である祖母に疎まれ、家を追い出されたナイリー。路頭に迷う彼女を救ってくれた恩師が急逝して悲しみに暮れるが、生前の恩師の計らいで広大な地所を相続することに。いざその町へ行ってみると、圧倒的な魅力を放つブラントと出会い、運命を感じたーよもや彼が地所を奪い取ろうとする大企業の後継者とは知りもせず。(『運命のプロポーズ』)。小学校教師のニコルは、突然目の前に現れた凛々しい男性を見て、心を震わせたージャン・ジャック!初恋の人。5年前、彼を愛する私に別れの言葉さえ告げずに、彼はこの町を去った。そして今、大企業CEOとなって帰ってきたのだ。しかし、やっと再会できたというのに、彼の瞳は陰り、昔のような優しさがなくなっていて…。(『ガラスの丘のプリンセス』)
看護師のジェインは祖母の看護のために仕事を辞めたが、祖母が亡くなり、途方に暮れていた。屋敷は見舞いにさえ来なかった従兄が相続するうえ、遺された祖母の愛犬1匹と愛猫2匹を連れて、数日中に出ていくようにと言い渡されてしまったのだ!新しく勤め先が見つかれば糊口をしのげるけれど、以前働いていた病院には空きがなく、行くあてもない。目の前が真っ暗になったとき、祖母を生前診てくれたヴァン・ダー・ヴォーレンホヴ教授が弔問に訪れた。ジェインは気がつくと、彼の胸に顔をうずめて泣いていた…。
幼いとき両親が事故死し、トリクシーは伯父夫妻に引き取られた。だが愛情は美しいいとこのみに注がれ、トリクシーはまるで使用人扱い。23歳になった今は家を出て、看護師見習いとして寮暮らしをしている。ある日、病棟で転びそうになり、憧れのクレイン教授に抱きとめられた。思わず胸を高鳴らせたが、いとこの誕生パーティで偶然会った教授は、トリクシーのことなどまったく憶えていない様子だった。当然よね、わたしは彼を遠くからこっそり見つめていただけなんだから。それに、クレイン教授はどうやらいとこを気に入ったようだわ…。意気消沈するトリクシーだったが、後日、教授から食事に誘われ、予想だにせぬ台詞を聞く!「きみは妻にふさわしい女性だと思う」
病院で実習中の看護学生エミリーは、下宿で倹約生活をしながら、車椅子で一人暮らしをする父のために手術費を貯金している。冷たい雨の朝、夜勤明けでくたくたに疲れたエミリーがうつむきぎみに歩いていたとき、長身の男性と正面衝突してしまった。相手ははじめこそ不機嫌な声で文句を言ったものの、散乱したものを拾い集め、親切にも彼女を下宿まで送ってくれた。それが後日、エミリーが転属することになった科のオランダ人名医、セバスチャンだとわかり、彼女は驚きとともに胸の高鳴りを覚えた。しかも、彼はエミリーの父の手術を無償で行うかわりに、病後の妹につき添ってほしいと、エミリーをオランダへ連れていき…。
花屋で働くユーレィリアは、家族の生活を支える大黒柱だ。ある日、長身でとても趣味のいい、けれどひどく不機嫌な男性が店に現れ、彼の婚約者に花束を届けるよう注文した。花を贈るのは喧嘩の謝罪らしい。でも、うまくいくかしら?案の定、届けた花束を彼の婚約者はユーレィリアに叩き返した。同じことが何度かあり、ついに婚約者は高価な蘭を踏みにじった。その女性が腹立ちまぎれに、花屋の店主にあらぬことを告げ口し、ユーレィリアは解雇されてしまった。わびしい雨のなか、必死で職探しをするユーレィリアを、そっと見ていたのは、花を注文したヴァン・リンセンだった。
父の仕事を手伝いながら、のどかで単調な毎日を送るビアトリス。ある日突然、父が心臓発作で倒れて動転するが、幸い、近くにいた医師オリバーのおかげで一命をとりとめた。オリバーとは先日、日の出を見にのぼった丘で偶然出逢い、長身で感じのいい彼が著名な医師だということを、のちに知った。父の入院から留守宅のことまで世話をしてくれるオリバーに、彼女はいつしか特別な気持ちを抱くようになっていく。そして、元ボーイフレンドからの迷惑行為について相談すると、オリバーは親切に、ぼくと婚約したふりをすればいいと提案してくれた。でも切ない…だって、彼はもうすぐ別の誰かと結婚してしまうのだから。
心優しいけれどとても引っ込み思案なルーシーは、華やかで充実した生活を送る姉と妹に挟まれ、目立たぬ存在の娘だ。児童養護施設での仕事に生きがいを感じてはいるものの、母には、この子は結婚できないかもしれないと悲観されていた。そんなある日、ルーシーは児童を連れていった病院で、笑顔のすてきなドクター・サーロウに一目で恋におちてしまう。背が高く、女性なら誰もが振り返らずにはいられないほど整った顔立ち。いつもは控えめなルーシーも、このときばかりは一大決心をしたーどんなことをしても、私は彼と結婚したい!けれども、恋に慣れないルーシーのがんばりは空回りするばかりで…。
夜勤の看護師ルイーズが昼夜逆の生活をするのには、理由があった。2年前に父を追うようにして母が亡くなってから、弟や妹たちを養うために、楽しみも忘れて働いているからだ。それがある日突然、大家から立ち退きを求められ、やむなく引っ越した先で、驚きの事実が判明するールイーズが長年にわたって尊敬してきたとびきりハンサムな顧問医師、ドクター・ファン・デル・リンデンが近くに住んでいるというのだ。彼はルイーズたちに何くれとなく親切にしてくれるが、美しい妹のほうを気に入っている様子で、ルイーズは内心落胆した。そんな気持ちの反動か、いつしかドクターを避けるようになって…。
ドクター・グレンフェルの下で働く看護師のユージニア。外科医長の彼とはもう3年も一緒だというのに、いまだにお互い他人行儀でよそよそしい態度のままだ。長身で悠然としていて、誰からも尊敬されるドクターが相手では、ユージニアが緊張してしまうのは無理もなかった。それでもふとした拍子に、こちらを見ている彼と目が合うと、なぜかユージニアの頬はぽっと赤く染まるのだった。そんなある日、彼女はグレンフェルから突然、驚きの指名を受ける。「海外に出張する予定が入ったので、君を連れていくことにした」なぜ私を?思わず湧いた恋の期待をかき消すユージニアだったが…。
冬のさなか、病床にあったメグたち三姉妹の母親が亡くなった。家を売って、お金は姉妹で分けましょうという長女の提案に、ロンドンで華やかに暮らす末の妹も大賛成。家を守り、母の看病に明け暮れた次女のメグは気が重かったけれど、自己主張が苦手で、ひと言も反論できないままだった。ところがいざ売りに出してみると、なかなか買い手がつかない。誰もこの家を買わないかもしれないわーそんな期待が芽生え始めた時、長身でハンサムな医師ラルフが現れた。魅力的な彼に思わず胸をときめかせるメグだったが、彼は母のために家を探していると言って、彼女に目もくれず…。
年金暮らしの両親のため、少しでも家計の助けになればと、診療所の受付係として働き始めたマチルダ。雇主のドクター・ラヴェルは魅力的な男性だったが、彼女は思った。母にさえ不器量と言われる私では彼を惹きつけられない。だから、この想いは隠そう、と。案の定、ドクターは地味な受付係などまるで見えない様子で…(『片思いの日々』)。ローレンは自らの運転中に事故で愛娘を失って以来、心が塞ぎ、すれ違いから会社社長の夫ザックと別居。でも、まだ彼を愛していた。心から。本当の別れを考えては切なさに胸を締めつけられるローレンだったが、ある日、突然弁護士に呼ばれて事務所に赴くと、ザックと鉢合わせした。まさか、とうとう彼は離婚を決意したの…?(『星降る夜の奇跡』)。故郷を離れてシカゴで孤独に暮らすクリスティのもとに、匿名で薔薇の花束とメッセージが届いた。ストーカーの影におびえていた彼女は警察に通報するが、駆けつけた刑事の姿を見て、思わず目を疑った。なんとそこには、かつて彼女が初めて恋し、破れた相手スコットが、すっかりたくましい大人の男性となって立っていたのだ!(『危険な薔薇』)。新たな人生をつかむシンデレラたちの感動ロマンス!