著者 : リディア・デイヴィス
「小さな黒いノート」に記録された実生活の断片 『分解する』『ほとんど記憶のない女』につづく、「アメリカ文学の静かな巨人」の3作目の短編集。内容もジャンルも形式も長さも何もかもが多様なまま自在に紡がれることばたちは、軽やかに、鋭敏に「小説」の結構を越えていく。作家が触れた本から生まれたミニマルな表題作「サミュエル・ジョンソンが怒っている」をはじめ、肌身離さず作家が持ち歩くという「小さな黒いノート」から立ち現れたとおぼしき作品など、鋭くも愛おしい56篇を収録。 「それらはいわば、彼女という人の「自分観察日誌」だ。[…]結晶となった言葉は硬く乾いてひんやりとして、元の感情からは慎重に隔てられているように見えて、目を凝らしてみると、行間から血のしたたるような感情が、生の痕跡が、透けて見える」(「訳者あとがき」より)。強靭な知性に支えられた作家の本領を味わえる1冊。
「アメリカ文学の静かな巨人」のデビュー短編集。言葉と自在に戯れるデイヴィスの作風はすでに顕在。小説、伝記、詩、寓話、回想録、エッセイ…長さもスタイルも多様、つねに意識的で批評的な全34編。ある女との短命に終わった情事を、男が費用対効果という観点から総括しようとする表題作「分解する」をはじめ、長編『話の終わり』の原型とおぼしきファン必読の短編も。
これぞリディア・デイヴィスの真骨頂! 強靭な知性と鋭敏な感覚が生み出す、摩訶不思議な56の短編。 相棒 退屈な知り合い 都会の人間 不貞 白い部族 特別な椅子 ヘロドトスを読んで得た知識 面談 優先順位 ブラインド・デート 私たちの旅 remember二態 〈古女房〉と〈仏頂面〉 サミュエル・ジョンソンが怒っている 新年の誓い いちねんせい・しゅう字のれんしゅう 面白い いちばん幸せな思い出 陪審員 二重否定 古い辞書 仮定法礼讃 なんてやっかいな ものわすれ ある葬儀社への手紙 甲状腺日記 氷に関する北からの情報 ボヘミアの殺人 楽しい思い出 彼らはめいめい好きな言葉を使う マリー・キュリー、すばらしく名誉ある女性 ヘッセン兵ミール 異国の隣人 刈られた芝生 口述記録(含しゃっくり) 患者 正しいと正しくない 植字工アルヴィン 特別 身勝手 夫と私 春の鬱憤 彼女の損害 働く男たち 北の国で 祖国を遠く離れて いっしょにいる 財政 変身 姉と妹(II) ボイラー 若く貧しく ミセス・イルンの沈黙 ほとんどおしまいーー寝室は別 お金 謝辞 訳者あとがき
「とても鋭い知性の持ち主だが、ほとんど記憶のない女がいた」わずか数行の超短篇から私小説・旅行記まで、「アメリカ小説界の静かな巨人」による知的で奇妙な51の傑作短篇集。