著者 : 上岡伸雄
無実の殺人の罪を着せられて警察の拷問を受け、地下の世界に逃げ込んだ男の奇妙で理不尽な体験。20世紀黒人文学の先駆者として高い評価を受ける作家の、充実期の長篇小説、本邦初訳。重要な中短篇5作品を併録した、日本オリジナル編集!
「これは覚えておいてくれ。ものまね鳥を殺すのは罪なんだ」1930年代、アメリカ南部。白人女性への暴行の嫌疑がかけられた黒人男性の弁護についたアティカスは、無垢な存在を殺すのは罪なのだと子供たちに話す。アメリカ南部にはびこる人種差別と、周囲の白人の反発にもかかわらず正義のために闘う父アティカスの姿を、娘のスカウトの無垢な瞳を通じて克明に描いた、全世界4000万部超の不朽の名作の新訳。1961年ピュリッツァー賞受賞。
ヴェトナム戦争後、南ヴェトナムの再興を目論見ながらも共産主義の同調者でもあった私は、親友のボンとともに再びインドシナ半島へと渡る。しかし虜囚の身となり、かつて義兄弟だったマンによる再教育を受け、拷問の末、自らの出自と信念を引き裂く告白をした。それから6年、私とボンは難民としてパリに渡る。東洋人への差別に晒されながらも、資本主義の極みともいえる麻薬取引に身を染めて生きていた。しかしある日、かつて私とボンを再教育キャンプで拷問したマンもまた、パリにいることを知りー。ピュリッツァー賞、アメリカ探偵作家クラブ賞受賞『シンパサイザー』に続く、植民地主義とヴェトナム戦争に人生を翻弄され続けた元スパイとその義兄弟たちの絆と裏切りを描く、熱き物語。
19世紀中盤のアメリカ・ヴァージニア州。黒人奴隷ハイラムは、美しい踊り手でもある奴隷の母と、奴隷主である白人の父とのあいだに生まれた。並外れた記憶力と祖母から受け継いだ神秘的な能力をあわせもつハイラムは、恋人との逃亡に失敗するが、黒人奴隷を逃すネットワーク「地下鉄道」の活動家に見出される。やがて自身もその活動に身を投じ、多くの奴隷たちの物語に触れるうち、自らの力の源である、失われた母の記憶を取りもどしてゆくー。トニ・モリスンが「ボールドウィンの再来」と絶賛した、いまもっとも注目される全米図書賞作家によるデビュー長篇小説。壮大かつエキサイティングな物語。
ハリウッドで書かれたあまりにも早い遺作、著者の遺稿を再現した版からの初邦訳。映画界を舞台にした、初訳三作を含む短編四作品、西海岸から妻や娘、仲間たちに送った書簡二十四通を併録。日本オリジナル編集!
50歳の誕生日目前の売れない作家アーサー・レス。彼のもとに、9年間付き合った元恋人の結婚式への招待状が届く。レスは思う。どうやったら式から逃れられる?出席を断る口実に、レスは世界中の文学イベントを回る旅に出かけることを思いつく。ニューヨーク、ベルリン、パリ、モロッコ、そして京都へ。様々な出会いがありながらも、レスが思い出すのは元恋人のことばかり…。“ニューヨーク・タイムズ”“ワシントン・ポスト”“サンフランシスコ・クロニクル”各紙の年間ベストブックに選出された感動のラブストーリー。ピュリッツァー賞(文学部門)受賞作!
デビュー作『楽園のこちら側』と永遠の名作『グレート・ギャツビー』の間に書かれた長編第二作。刹那的に生きる「失われた世代」の若者たちを絢爛たる文体で描き、栄光のさなかにありながら自らの転落を予期したかのような恐るべき傑作、本邦初訳!
戦時の大統領リンカーンが、急逝した愛息ウィリーの記憶にひたるため夜の墓地を訪れる。そこには自らの死を受け入れられず、彼岸と此岸の間をさまよう霊魂たちがいた。たくさんの目と鼻と手をもつベヴィンズ、素っ裸で巨大なペニスを屹立させたヴォルマン、最後の審判を恐れる牧師トーマス…。現世の妄執を抱えて生きる(?)彼らがリンカーンに触れる時、感動的でユーモラスな途方もない物語が動きはじめる。まったく新しい形式に奇想と興奮を詰めこんだ、現代アメリカ最高の短編作家、驚愕の初長編。全米ベストセラー、ブッカー賞受賞の超話題作!!!
オハイオ州の架空の町ワインズバーグ。そこは発展から取り残された寂しき人々が暮らすうらぶれた町。地元紙の若き記者ジョージ・ウィラードのもとには、住人の奇妙な噂話が次々と寄せられる。僕はこのままこの町にいていいのだろうか…。両大戦に翻弄された「失われた世代」の登場を先取りし、トウェイン的土着文学から脱却、ヘミングウェイらモダニズム文学への道を拓いた先駆的傑作。Star Classics名作新訳コレクション。
辺境の町に流れ着き、保安官となったカウボーイ。酒場の女性歌手に知らぬうちに求婚するが、町の荒くれ者たちをいつの間にやら敵に回して、命からがら町を出たもののー。書き割りのような西部劇の神話的世界を目まぐるしく飛び回り、力ずくで解体してその裏面を暴き出す、ポストモダン文学の巨人による空前絶後のパロディ!
アメリカ文学至高の傑作『アラバマ物語』の20年後を描く、ハーパー・リーの新たな代表作。26歳になったジーン・ルイーズ・フィンチ(スカウト)はニューヨークからアラバマ州メイコムに帰省した。老いた父アティカスの様子を見るためだ。駅には恋人のヘンリーが待ち受け、彼女を温かく歓迎する。しかし、故郷で日々を過ごすうちに、ジーン・ルイーズは、公民権運動に揺れる南部の闇と愛する家族の苦い真実を知るのだった。激しく心を乱された彼女は…。新たに見つかった原稿がついに邦訳。世界的ベストセラー。
カリブ海の朝七時、試合が始まったー。季節外れの豪奢なバカンスが、ロシアン・マフィアを巻き込んだ、疑惑と欲望の渦巻く取引の場に。どうして私たちなのか、恋人は何を知っているのか、このゲームに身を投げ出す価値はどこにあるのか?政治と金、愛と信頼を賭けたフェアプレイが壮大なスケールでいま、始まる!サスペンス小説の巨匠、ル・カレ極上のエンターテインメント。
人妻サラとの道ならぬ恋から1年半。なぜ彼女は去っていったのかー捨てきれぬ情と憎しみとの狭間で煩悶する作家ベンドリックスは、その雨の夜、サラの夫ヘンリーと邂逅する妻の行動を疑い、悩む夫を言葉巧みに説得した作家は、自らの妬心を隠し、サラを探偵に監視させることに成功するが…。鮮やかなミステリのように明かされる真実とは。究極の愛と神の存在を問う永遠の名篇。名作新訳コレクション。
島から出られないリゾート客。スラム街の少女と修道女。第三次世界大戦に携わる宇宙飛行士。娘たちのテレビ出演を塀の中から見守る囚人。大地震の余震に脅える音楽教師ー。様々な現実を生きるアメリカ人たちの姿が、私たちの生の形をも浮き彫りにする。四人の訳者によるみずみずしく鮮明な9篇。1979年から2011年まで。現代アメリカ文学の巨匠、初の短篇集。
ぼくは、都心を少し離れたところに住む、ごく普通の小学生。6年生の始業式。熊のようにでっかい先生が担任としてやってきた。小学生にラグビーを教えるのが信条なんだって。体育はラグビー、国語は詩を覚えて声に出して読ませるだけ。ぼくだって中学受験にそなえて塾にかよっている。クラスにはいじめがあるし、大変なんだ。体当たりのアッシー、先生のあだ名なんだけど。おかげで少しずつクラスの様子も変わってきてさ。ちょっぴりラグビーも好きになってきたし。さて、どうなることやら…。名翻訳家として定評ある著者、初めての小説。
60を過ぎた老批評家ケペシュに美しい乳房を持つ若い愛人ができた。美しい体への執着は、せまりくる老いと生への渇望を想起させ、初めての嫉妬にとらわれる。そして大きな喪失感に苛まれた別れから8年、ふたたび彼の前に現れたとき…。「死にゆく獣」としての男の生と性への執着を赤裸々に描くフィリップ・ロス円熟の代表作。
時代の寵児として、超巨大ハイテクリムジンから秒単位で投資を続ける男はその日、たちまち巨億を失う危機にあった。だが、その渦中にあっても繰り返される無軌道なセックス、狂気と見まごう振る舞い、背後には、忍び寄る殺人者の手…。幻想でしかない金に狂奔し、身体性を忘却した男は、N.Y.横断後いったい何を目にすることになるのか?現代アメリカ文学最大の巨匠が放つ極上のサスペンス、哄笑に満ちた都市の伝説。
パフォーマンス・アーティスト=ボディ・アーティストであるローレンは、夫の自殺に直面し、言語とアイデンティティーの危機に晒される。そして、彼女の前に出現する奇妙な青年。いつの間にか彼女が住む別荘の上階に住みついていた彼は、時間の概念もなく、因果関係もわからないままローレンと交流を重ねていく-。現代アメリカ文学の巨人が、アメリカの裏面史を壮大なスケールで語った前作『アンダーワールド』から一転、ひとりの女性が変わりゆく姿を緊密に、詩のように美しい文体で描く極小かつ極上の傑作。