著者 : 中原尚哉
化学物質の摂取過剰のために、出生率の低下と痴呆化が進化したニューヨーク。下水ポンプ施設の職員の視点から、あり得べき近未来社会を鮮やかに描いたローカス賞受賞の表題作、石油資源が枯渇して穀物と筋肉がエネルギー源となっている、『ねじまき少女』と同設定のアメリカを描きだすスタージョン賞受賞作「カロリーマン」ほか、全10篇を収録。数多の賞に輝いた『ねじまき少女』でSF界の寵児となった著者の第一短篇集。
一介の大尉でありながら、第41海軍管区司令官としてチャンス星系へとやってきたクリス・ロングナイフとその一行は、司令部である宇宙ステーションに到着して愕然とした。歓迎団どころか、ひとっこひとりいない!動力反応炉も停止し、非常用電源で動いているだけ…数ある海軍管区のなかでも最低の辺境星区に左遷されたわれらがプリンセスだが、それでも司令官としての職務を果たそうと持ち前の機知と財力で奮闘する!?
コンボイ総司令官が放った呼びかけに応えて、銀河にちらばっていたサイバトロン戦士が続々と地球に集結しつつあった。だがその一方で、デストロン軍団もまた飛来してきたのだ!ローマ、上海をはじめとする世界各地で、人類・サイバトロン連合軍とデストロン軍団との死闘が繰り広げられる!やがて深海に封じこめられていたメガトロンの奪回に成功した軍団は、恐怖の存在“堕落せし者”を復活させるべく動き始めるが…。
その内部には「啓示空間」があり、驚異の科学技術が隠されているといわれる謎の空間シュラウドからただ一人生還したダン・シルベステは、リサーガム星で異星種族の遺跡を発掘中、その滅亡の原因を解く鍵として、中性子星ハデスを差し示す手がかりを得るが…99万年前の異星種族絶滅の謎、巨大ラム・シップ内の暗闘、中性子星に隠された秘密などを背景に、人類の存亡をかけた戦いをグランドスケールで描く迫真の宇宙SF。
銀河の二大勢力、スコーリア王圏とユーブ帝圏それぞれの王位継承者、スコーリア女王ソズとユーブ皇子ジェイブリオルが、ともに謎の死を遂げてから十数年。だが、かれらの死は偽装だった。許されぬ恋の果て、未探査惑星へ逃亡したふたりは、誰にも知られることなく暮らしていたのだ。しかし、銀河を揺るがす激動の波は、ついに幸せに暮らすかれらのもとへも及んだ…美貌の王女にしてサイボーグ戦士ソズ、待望の再登場。
スコーリア王クージ、ユーブ皇帝と相討ち!衝撃の報せに銀河は震撼した。混乱のさなか、ジェイブリオルはユーブ帝圏によって拉致され、傀儡皇帝となることを強いられる。いっぽう、愛する兄クージと伴侶をともにユーブ帝圏の手で奪われたソズは、スコーリアへと帰還し、王位に就くことを宣言した。兄の復讐と夫の奪回を誓う彼女は、ユーブに対して全面戦争を挑むことを決意するが…華麗なる「スコーリア戦史」第三弾。
遙かな未来、太古の殺し屋種族チェンジーム人が残した攻撃機械やナノマシンによって、人類は絶滅の危機においこまれていた。なんとか生き延びて委員会星団で暮らしていた人々は、強力な指導力を持つジュピター・アポリナリオに率いられ、宇宙船ネセレス号に乗り、人類の理想の地であるという陥穽星をめざしたが…ローカス賞受賞作『極微機械ボーア・メイカー』の著者が未来世界を舞台に壮大かつ華麗に描きだす冒険SF。
かつて陥穽星に入植した人類は、謎の疫病のために全滅してしまった。生き残った植民者たちは惑星を封鎖し、宇宙エレベータの途中にある絹市で暮らしている。だがこの陥穽星に降り立ち、無事に戻ってきたジュピターは、陥穽星こそ理想の世界であると主張し、ネセレス号の人々や息子のロトを強引に宇宙エレベータに突入させるが…10年後、さまざまな難関をくぐりぬけ、陥穽星をめざすロトを待つものは?話題の冒険SF。
天才分子デザイナーでテロリストのボーアが作った違法な分子機械ボーア・メイカーは、適応性人工知能をもち、宿主の肉体まで自由に改変できる。使い方しだいでは、連邦の存在さえ危うくしかねない驚異の極微機械だ。このボーア・メイカーが盗みだされ、偶然のことからスラム街の女性フォージタのものになるが…究極のナノテクがもたらす未来世界の驚異を描く、ローカス賞処女長篇賞受賞作。
2028年、6月。いまや国際政治において絶大な権力を誇る国連は、北極海に核兵器を隠匿するシベリア連邦への制裁のため、基地の空爆を行なった。ところが北極の海底には、温室効果をもたらすメタンガスが大量に閉じこめられていたのだ!爆発のエネルギーで大気中に放出されたメタンは、徐々に気温と水温を上昇させてゆく。やがて夏が訪れ、暑さが最高潮に達したとき、北太平洋にかつてない激烈な風が吹きはじめた…。
北太平洋に発生した史上最大のハリケーンは、ハワイ諸島に深刻な打撃を与えたのち、次々に新たな嵐を生み出しながら、北半球全域で猛威をふるっていた。嵐の発生に最適な気候自体を変えないことには、人類の居住域は破壊しつくされてしまう!この危機に際し一人の宇宙飛行士に託された大胆きわまりない作戦とは…?情報ネットワーク網と地球環境問題を背景に、未曾有の災厄に立ち向かう人類を描く近未来サスペンス。
1941年、ついに太平洋にも戦火が広がり、合衆国潜水艦マコは、勇躍太平洋の荒波のただなかに乗り出した。めざすは日本帝国の商船そして帝国海軍連合艦隊だ。苦しい艦内生活に耐え、不良品の魚雷に苦労しながら、赫々たる戦果を上げるマコ。しかしその前に立ちはだかるものがあった。「教授」というニックネークを持つ水雷戦隊司令の日出木大佐。対潜水艦戦の達人である。ここに米潜水艦対帝国駆逐艦の決戦の火蓋が切って落とされる。
死体だらけだ。ずたずたに引き裂かれ、ねじくれた死体が散乱している。ニューメキシコの山のなか、公道をはずれた草むらにチャトは立ちすくんでいた。はっとして振り向く。繁みの奥に目を凝らす。眼だ。影のなかから、邪悪で憎悪に満ちた眼がー悪魔よりも古い生き物、それがやつらだ。蠢き、這いまわる影にひそむ無数の眼、そして牙。やつらが街を、人を襲いはじめたのだ。闘えるのは、シャーマンの力を持つチャトただ一人だった。