著者 : 丸山正樹
結婚五年目にして夫婦関係が冷えきってしまった麻矢、離婚を経験した璃子、モラハラ気質の夫に悩みながら一人娘を育てる友里香。三十代半ばになった大学の同級生三人組は、立場は違えどみな夫への不満を抱え、時に集まり「元気なまま死んでくれないかしら」と愚痴を言い合っていた。しかしある夜、友里香はモラハラ夫との間に大きなトラブルを抱えることになり、さらに麻矢の冷淡な夫も何の前触れもなく失踪してしまう。夫の身に一体何が起こったのか!?次々起きる事件によって、固い絆で結ばれた三人組の仲にも亀裂が入り始める…。結婚前には誰も教えてくれなかった、結婚の本質と危うさに迫る、衝撃のノンストップ・ミステリ!
優秀な刑事ながらも組織に迎合しない性格から、上から疎まれつつ地道な捜査を続ける埼玉県警の何森稔。翌年春の定年を控えたある日、ベトナム人技能実習生が会社の上司を刺して姿をくらました事件を担当することになる。実習生の行方はようとして掴めず、捜査は暗礁に乗り上げたが、何森は相棒の荒井みゆきとともに、被害者の同僚から重要な情報を聞き出しー。技能実習生の妊娠や非正規滞在外国人の仮放免、コロナ禍による失業と貧困化などを題材に、罪を犯さざるを得なかった女性たちを描いた全3編を収録。渋みのある刑事たちの活躍を描く、“デフ・ヴォイス”シリーズスピンオフ。
子供たちからのS.O.Sが聞こえる。ストリートに生きる日系ブラジル人の少年。介護に追い詰められるヤングケアラーの少女。不器用な、「見えない存在」である彼らを、今日も見守る大人たちがいる。
コロナ禍の2020年春、手話通訳士の荒井尚人の家庭も様々な影響を被っていた。刑事である妻・みゆきは感染の危険にさらされながら勤務せざるを得ず、一方の荒井は休校、休園となった二人の娘の面倒を見るため手話通訳の仕事もできない。そんな中、旧知のNPOから、ある事件の被告人の支援チームへの協力依頼が来る。女性ろう者が、口論の末に実母を包丁で刺した傷害事件。聴者である母親との間にいったい何が?“家庭でのろう者の孤独”をテーマに描く、“デフ・ヴォイス”シリーズ最新作。
事故による頸髄損傷で、肩から下が動かず寝たきりの「妻」(49)を自宅で介護している「わたし」(50)。自由のない生活を長年送っているが、身体が動かない以外は事故前と変わらない妻から「ありがとう」と言われたこともない。なんのためにこんな生活をしているのかと悩むなか、ある“趣味”をはじめるー。一方、設計士の一志(39)と編集者の摂(38)夫婦は、一年限定で始めた妊活が実らなかった。摂から特別養子縁組を検討したいと打ち明けられた一志は戸惑う。不倫相手である上司の子を身ごもった広告代理店勤務の女性、障害を隠して趣味の合う女子大生とパソコン通信で交流する脳性麻痺の青年…。さまざまな悩みを抱える男女の“過去と未来”が、照らし出したものとはー。現代社会の歪みを書き続けてきた著者渾身の書下ろし長編。
埼玉県警の何森稔は、昔気質の一匹狼の刑事である。有能だが、組織に迎合しない態度を疎まれ、所轄署をたらいまわしにされていた。久喜署に所属していた二〇〇七年のある日、何森は深夜に発生した殺人事件の捜査に加わる。障害のある娘と二人暮らしの母親が、二階の部屋で何者かに殺害された事件だ。二階へ上がれない娘は大きな物音を聞いて怖くなり、ケースワーカーを呼んで通報してもらったのだという。県内で多発している窃盗事件と同一犯だろうという捜査本部の方針に疑問を持った何森は、ひとり独自の捜査を始めるー。“デフ・ヴォイス”シリーズ随一の人気キャラクター・何森刑事が活躍する連作ミステリ。著者の新たな代表シリーズ開幕!
恋人の教え子・紗智が父親と共に突然姿を消した。彼女を探すことになった二村直は、ただ一つの手掛りをもとに名古屋へ向かう。所在が分からない子供、「居所不明児童」という社会の闇を知るうちに、直は重大な決断を迫られるー。子を持つとは、親になるとはどういうことか。『デフ・ヴォイス』著者が描く問題作。
手話通訳士・荒井尚人は、結婚後も主夫業のかたわら通訳の仕事を続けていた。そんなある日、ろうの妊婦から産婦人科での通訳を依頼される。荒井の通訳は依頼者夫婦の信頼を得られたようだったが、翌日に緊急のSOSが入りー。(「慟哭は聴こえない」)旧知のNPO法人から、荒井に民事裁判の法廷通訳をしてほしいという依頼が舞い込んだ。原告はろう者の女性で、勤め先を「雇用差別」で訴えているという。かつて似たような立場を経験した荒井の脳裏に、当時の苦い記憶が蘇る。法廷ではあくまで冷静に自分の務めを果たそうとするのだがー。(「法廷のさざめき」)コーダである手話通訳士・荒井尚人が関わる四つの事件を描く、温かいまなざしに満ちた連作ミステリ。『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』『龍の耳を君に デフ・ヴォイス新章』に連なるシリーズ最新作。
手話通訳士の荒井尚人は、コミュニティ通訳のほか、法廷や警察で事件の被疑者となったろう者の通訳をする生活の中、緘黙症の少年に手話を教えることになった。積極的に手話を覚えていく少年はある日突然、殺人事件について手話で話し始める。NPO職員の男が殺害された事件の現場は、少年の自宅から目と鼻の先だった。緘黙症の少年の証言は果たして認められるのか?ろう者と聴者の間で苦悩する手話通訳士の優しさ、家族との葛藤を描いたミステリ連作集。書評サイトで話題を集めた『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』に連なる、感動の第二弾。
仕事と結婚に失敗した中年男・荒井尚人。今の恋人にも半ば心を閉ざしているが、やがて唯一つの技能を活かして手話通訳士となる。ろう者の法廷通訳を務めていたら若いボランティア女性が接近してきた。現在と過去、二つの事件の謎が交錯を始め…。マイノリティーの静かな叫びが胸を打つ。衝撃のラスト!
時を隔てた二つの殺人。謎は解け、愛だけがそこに残ったー。生活のため手話通訳士になった荒井は、刑事事件に問われたろう者の法廷通訳を引き受け、そこで運命の女性・手塚瑠美に出会う。第十八回松本清張賞最終候補作に加筆修正。感動の社会派ミステリー。