著者 : 乃南アサ
あなたの近しい人が、ある日突然殺されたらどうするでしょうか。嘆き悲しみ、怒り憤るでしょうか。-高校生の真裕子は、母を殺された。犯人は逮捕されるが、苦しみは終わらない。現実を受け入れようとするのだが、それができない。必死に精神のバランスをとろうとする彼女の周囲には、重く張り詰めた空気だけがある。果たして真裕子は、安らぎを得ることができるのだろうか…。
一方で、あなたの近しい人が殺人を犯したとしたら、しかもそれが夫だったらどうでしょうか。-刑事が訪ねてきて、夫が人を殺めたと香織に告げる。捜査の過程で明らかになる夫の姿。裏切り。そんな言葉では済まされない状況におちいる香織だが、夫は裁判で無罪を主張した。いったい、何が本当なのだろうか…。“事件”に関わる“人間”をあますことなく描いた大作。
イケメンさるどんに遊びれた純情かにどん(「さるとかに」)じじとばばが始めた新商売とは?(「花咲かじじい」)一寸法師が姫君を手に入れた計略(「一寸法師」)六人の地蔵と、六人の息子たち(「笠地蔵」)ほか、大人も子どもも楽しめる直木賞作家・乃南アサが贈る、ユニークな昔話集。
“アメリカ淵”と呼ばれる渓谷で発見された女性の全裸死体。手がかりは仏が身につけていたネックレスただひとつ…。警視庁捜査一課の土門功太朗は、徹底的な地取り捜査で未知の犯人ににじり寄る。やがて浮かんだ容疑者。息詰まる取調室の攻防。懐かしの昭和を舞台に、男たちの渋い仕事っぷりを描いたノスタルジー刑事小説。
貸家だった木造民家の解体現場から、白骨死体が発見された。音道貴子は、家主の今川篤行から店子の話を聞こうとするが、認知症で要領を得ず、収穫のない日々が過ぎていく。そんな矢先、その今川が殺害される…。唯一の鍵が消えた。捜査本部が置かれ、刑事たちが召集される。音道の相棒は…、滝沢保だった。『凍える牙』の名コンビが再び、謎が謎を呼ぶ難事件に挑む傑作長篇ミステリー。
白骨死体、今川老人殺害事件、父娘惨殺事件。これらの事件に関連はあるのか。音道の立てたある仮説は、深く重く沈殿しつつあった捜査を大きく動かした。一方、刑事を騙る男が捜査を撹乱する。目的は何なのか。誰が情報を漏洩しているのか。深まる謎と謎が交錯し、溶け合っていくー。人間の欲望という業が生み落としていく悲しみをスリリングに描くシリーズ最高潮の人間ドラマ。
父が戦死し、戦後満州から引き揚げてきたどん底の生活の中で母まで亡くした南部次郎は、わずかな葬式費用の形に幼い妹を連れ去ろうとする男を撲殺してしまう。きょうだいは離散し服役中も渦巻く憤怒を抑える術すら知らない次郎は備前焼と出会い、ひたすら土を練ることで、ようやく心が鎮まっていくー。
アパレルメーカー新入社員の仲江翠は、入社後すぐにエリート課長との不倫が始まったが、しばらくして同期で課長の部下とも交際。きちんと仕事もこなしつつ、ゲーム感覚の恋愛を楽しんでいた。だが、同じように社内不倫をしていた女子社員に思わぬ事件が発生。それを機に翠の恋愛ゲームにも暗雲が立ち込める。
レイプ未遂事件発生。被害女性は通報者の男が犯人だと主張。被疑者は羽場昂一ー。レイプ事件の捜査に動いていた音道貴子に無線が飛び込んだ。貴子の恋人、昂一が連続レイプ犯?被害者は大手新聞社の女性記者。無実の通報者に罪を着せる彼女の目的とは?都市生活者の心の闇を暴く表題作など、隅田川東署へと異動となった貴子の活躍を描くシリーズ第三弾。傑作短篇四編収録。
東京・下町の解体工事現場から白骨死体が三つ。そして大家である徘徊老人の撲殺事件。真夏の下町を這いずり回ること二カ月あまり。中年の毒気を撤き散らす滝沢の奇妙な勘働きと、女刑事・音道貴子の大脳皮質は、「信じられない善意の第三者」でようやく焦点を結んだ。名コンビは狂気の源に一歩ずつ近づいてゆく…。
親からも見捨てられ、通り魔や強盗障害を繰り返す無軌道な若者・伊豆見翔人は、逃亡途中で宮崎の山村にたどり着く。成り行きから助けた老婆スマの家に滞在することになった翔人は、近所の老人シゲ爺の野良仕事を手伝ううちに村の暮らしに馴染んでいくが…。現代の若者の“絶望感”をこまやかな心理描写で描き出す傑作長篇サスペンス。
日本の銀行マンと結婚したフィリピン女性が、転勤で九州から新潟へ移った途端に経験した、雪国という未知の空間。ふさいだ気分が周囲への憎悪に変わる様子を描いた表題作「悪魔の羽根」。早春、恋愛中の女性が突然、姿を消した謎に季節特有の悩みを絡めた「はなの便り」など、四季の風景を織りまぜながら、男女の心模様、友人同士の心のズレを浮き彫りにする。ちょっぴり恐い7つの物語。
アパレルメーカーに勤める仲江翠は入社一年目。そつなく仕事をこなしていたが、彼女には秘密があった。仕入れ部の課長と不倫恋愛していたのだ。さらに同期の男性とも恋人として付き合い、ゲームのような恋愛を続けた。ところが、同僚女性が上司と無理心中する事件が発生。二人の一途さを理解できない翠だったが、やがて彼女にもつらい出来事が舞い込む。本当の愛に気付くまでの物語。
練習場で橋口に声をかけられた江本美和子は、その強引な誘い方に驚くが、結局デートに応じる。一方、阿久津らの捜査から松川と橋口が同一人物であることが判明した。だが被害者の中にかつての恋人、美和子がいるのを知り、阿久津は愕然とする。あのしっかり者の彼女がなぜ…。橋口と被害女性、そして阿久津の心模様を丹念に追い、現代の結婚観を浮き彫りにした傑作サスペンス。
東京都下、武蔵村山市で占い師夫婦と信者が惨殺された。音道貴子は警視庁の星野とコンビを組み、捜査にあたる。ところが、この星野はエリート意識の強い、鼻持ちならぬ刑事で、貴子と常に衝突。とうとう二人は別々で捜査する険悪な事態に。占い師には架空名義で多額の預金をしていた疑いが浮上、貴子は銀行関係者を調べ始める。が、ある退職者の家で意識を失い、何者かに連れ去られる。
小学生の時の仲良し三人組が偶然十数年ぶりに再会した。スケジュール帳を一杯にしたがるOL亜理子、頻繁に手を洗わないといられない梨紗、見栄っぱりで嘘ばかりつく恵美。三人の遠い過去が少しずつ掘り起こされ、あの夏の日の封印された事件が甦る。三人が交わした秘密の「約束」とは何なのか。衝撃の心理サスペンス長篇。
薬品会社のOL栗子は、30歳を目前にして落ち込んでいた。職場はお局扱い、結婚見合いも断られ、家族も勝手気まま。とうとう家を出る。落ち着いた先は、幼なじみでレズビアン(オナベ)の菜摘の部屋。そんな栗子はある日、菜摘が経営するバーの常連客、古窪伸を紹介され、彼に一目惚れ。二人はやがて深い仲に。プロポーズを待ち望む栗子だが、どうも伸の態度が煮え切らない…。
菜摘もまた、店の客の紘子に一目惚れして付き合っていた。が、進展せず悩んでいた時、紘子の家でたまたま見たビデオから、伸が性風俗の商売に関わっていることを知る。一方、栗子も所在不明の伸に会いたくて、周辺を調べ始めた。一途な二人に、とんでもない恋の結末が訪れようとは…。揺れ動く女心を巧みに織り込んで描く痛快ラブ・サスペンス。