著者 : 乃南アサ
お臍の整形手術を娘にせがまれた母親。女性の膝に異常に興奮する中年サラリーマン。頭髪を気にして怪しい育毛剤に手を出した青年。「アヒルのようなお尻」と言われた女子高校生。顎を殴ることに魅入られたプータロー。日常が一瞬にして非日常に激変する「怖さ」を描いた新感覚ホラー小説集。
両親、弟妹、祖父母に曾祖母。今時珍しい大家族に嫁いだ法子を待っていたのは、何不自由ない暮らしと温かい家族の歓待だった。しかしある日、近所で起きた心中事件に彼らが関係しているという疑惑を抱いた法子は、一見理想的な家族を前に疑心の闇にはまっていく。やがて暴かれる、呪われた家族の真実とは。
「私は拳銃を構える。恐怖にひきつった顔を思い描くだけで、胸のもやもやが晴れていく」-。久しぶりの同窓会で、歌舞伎町に流れ、家出少女から受け取った包みの中身はなんと拳銃。なぜか主婦は警察に届けない。日常に倦んだ市井の人々を狂気に変えていくコルトの魔力。巧みな構成で魅了する連作短篇集。
「あいつから逃げなきゃ!」執拗に追ってくる男の影に脅えつつ、逃亡を続ける花屋の店員、三田村夏季。同じ頃、神奈川県下では不可解な連続女性殺人事件が起こり、刑事部長・小田垣の苦悩の日々が始まった…。追う者と追われる者の心理が複雑に絡み合い、やがて衝撃のクライマックスへ。傑作長篇ミステリー。
誰も描かなかったブラインド・スポット-孤絶の空間を舞台に、音道貴子の刑事人生は最大の危機に突入した。ここは一体どこなのか。犯人グループの次の一手は何なのか。たった一人で敵と対峙する彼女の脳裏を、期待と絶望が交錯する。このデッドロックをくぐり抜ける手段が果して存在するのか。『凍える牙』に続く久々の書下し大作。
深夜のファミリーレストランで突如、男の身体が炎上した!遺体には獣の咬傷が残されており、警視庁機動捜査隊の音道貴子は相棒の中年デカ・滝沢と捜査にあたる。やがて、同じ獣による咬殺事件が続発。この異常な事件を引き起こしている怨念は何なのか?野獣との対決の時が次第に近づいていたー。女性刑事の孤独な闘いが読者の圧倒的共感を集めた直木賞受賞の超ベストセラー。
夫婦と、息子ひとりの3人家族。どこにでもある、新興住宅地の平穏で幸福な一家だった。妻が妊娠したことで、新たなる喜びに一家は包まれる…はずだった。しかし、ある朝、夫が巻き込まれた小さな事件が思いもよらぬ展開を見せ、彼らの運命を大きく狂わせていくー。次第に追い詰められ、崩壊に向かう家族に、果して救いはあるのか?現代の不安を鋭くえぐった心理サスペンス。
なぜ自分にこの親、この兄弟姉妹なのか。いつもやたらとベタベタしているのに、実はバラバラだったりする。「家族」って、よくよく考えてみれば、ヘンなものだと思いませんか?この本には、なかでもきわめつけのヘンな家族が登場します。深夜、息子がいきなり彼女の死体を連れて帰ってきたり、夫婦の寝室に「ママ」がいたり…。これに比べれば、お宅はまだまだ大丈夫でしょう。
十月七日午後五時三十分。萩行きの夜行高速バスが品川のバスターミナルを出発した。乗客乗務員は十二人。約十四時間で目的地到着の予定だったのだが…。深夜に乗務員が殺害され、バスは殺人者とともに、何処とも知れぬ闇の中に放り出される。台風接近で風雨も激しさを増しー。それぞれの人生を背負って乗り合わせた登場人物たちの多視点から恐怖の一夜を描く、異色のサスペンス。
天使のような笑顔を浮かべると、出会う者はみな思わず「可愛い!」と声を上げてしまう。大人たちを自分の魅力のとりこにし、望むものを手にしてきた小学1年生の少年、拓馬には、ある秘密の「趣味」があった。場所はたそがれの競馬場ー。純真、残酷、妖艶、粗暴、嘘言…。正常と異常の狭間に立つ幼児たちの危うい心理を描きだした、現代の「恐るべき子供たち」ともいうべき7編。
郊外の一戸建てに住む城戸家は仲のよい夫婦と息子の三人家族。春、妻が妊娠した。後妻の絢子にとっては新婚の象徴ともいえる出来事だ。だが、十五も歳の離れた兄弟が出来ることになった息子は当惑し、夫は「まさか…」という言葉が出そうになる。やがて、絢子には思いもよらぬ事が次々と城戸家に起こって…。ガラスの家族が演じる偽りの“幸福物語”の終幕は-。書下ろし恐怖心理サスペンス。
俺は、完璧な逆玉に乗ったはずだった。この家の秘密を知るまでは…(ママは何でも知っている)清潔好きで、家中に規則を設けた家族たち。黴菌扱いされた父親は…(ルール)会社は大人の時間、家に帰れば子供の時間。楽しい二重生活が、ある日…。(僕のトんちゃん)家族さえもレンタルできる現代。やがて、本物と区別がつかなくなって…。(出前家族)ある晩、デートから帰った長男の車には、なぜか助手席に死体が…。(団欒)若手実力派が描く、五つの世紀末的家族の肖像。人ごとではない恐怖が迫る、シテイ・ホラー小説集!
先輩の夫である上司の新田と親友の貴世美が不倫。景子はそれを知らされた瞬間、奇妙な不安を覚えた。親友ながら貴世美には得体の知れない“恐さ”があったのだ。案の定、他ならぬ新田は離婚後、悲惨な事故で亡くなってしまい、景子も会社をやめざるを得なくなる。それから5年、景子は着実に自分の道を歩きながらも、未だに貴世美の記憶に捉われている。ケジメをつける為に彼女は貴世美の消息を調べ始めるが、あるとき、どこからともなく、3回鳴って切れる無言電話がかかりはじめる。それで景子は1つの歌を思い出した…。