著者 : 久生十蘭
しがない画学生の小田孝吉、アメリカでフランス語の講師になることを夢見て貧しい生活に耐えている高松ユキ子、計理士の勉強をしている大学生・佐竹潔、ユキ子を陰で支えている富豪の鹿島与兵衛。なんの落ち度もない4人の日本人が、フランスで疑獄事件や左翼・右翼の権力闘争に巻き込まれ、命の危機にさらされるー。小田が深夜の地下鉄で、怪しい男たちが死体を運ぶところを見てしまったところから、物語は息をもつかせないスピードで疾走していく。実際にあった“スタヴィスキー事件”を題材に、鬼才・久生十蘭が繰り広げるアドベンチャーストーリー。
『日比谷公園の鶴の噴水が歌を唄うということですが一体それは真実でしょうか』-昭和九年の大晦日、銀座のバーで交わされた奇妙な噂話が端緒となって、帝都・東京を震撼せしめる一大事件の幕が開く。絢爛と狂騒に彩られた帝都の三十時間を闊達自在な筆致で活写した、小説の魔術師・久生十蘭の長篇探偵小説。初出誌“新青年”の連載を書籍化、新たに校訂を施して贈る決定版。
湖の畔に建つ不可思議な別荘…その美しい奴隷たちが主人の奇妙な生活を語り出す「天鵞絨の夢」。メデューズ号の残酷悲惨な事件を描いたノンフィクション・ノベル「海難記」。美貌の兄弟の心中を主題にした耽美的物語「過去世」。宙に浮かぶ三島由紀夫の首と著者が対話を交わす「冬の旅」。他全34編。
現世では死者となって社会から身を隠し純愛を貫く物語「墓地展望亭」「湖畔」、人間心理の深奥に迫る名作「ハムレット」、巧みな語りにサスペンスが湛えられた掌篇「骨仏」など、“小説の魔術師”久生十蘭(1902-57)の、彫琢につぐ彫琢によって磨きぬかれた掌篇、短篇あるいは中篇を精選。「生霊」「雲の小径」「虹の橋」「妖婦アリス芸談」を併収。
太平洋戦争末期、海軍報道班員として南洋にやってきた画家松久三十郎は、アラフラ海を枕に活躍する補給船員の山吉船長、カムロー、どん助と出会う。彼らと、軍人、兵隊との交情。そして、故国へ帰り、慰問の便りの縁で若い女性と会う。やがて、再び戦地へ。報道班員を経験した十蘭だから書けた、最高の“戦争小説”が初めて文庫に。
江戸始まって以来の大奇人にして博識無双の平賀源内先生。謎に包まれた事件に手も足も出ない神田の御用聞・出っ尻伝兵衛のたっての頼みで、おもむろに解決に乗り出すが、さて結末やいかに。オランダ渡りの知識や奇想天外の推理で、事件の核心に迫る源内先生の痛快無類の捕物帳、初の文庫化。
1934年大晦日、深夜の帝都・東京。滞日中の安南国皇帝が失踪し、その愛人が墜落死。警視庁切っての名警視が真相究明に乗り出したが、デマ・誤報・密告が錯綜し、元旦の首都は大混乱に陥る。秘宝「帝王」の行方と、動機不明の連続殺人事件の謎ーすべての探偵小説を超えたスーパー都市迷宮小説。