出版社 : 小鳥遊書房
調査対象の女性、そして消えた死体の謎…。緻密な構造、巧みなプロットとさりげなく埋め込まれた伏線の数々。フィリップ・マーロウの生き方を確かめたい。チャンドラー最後の長編を新訳でお届けします。より具体的に作品を読んでもらうために、架空の町エスメラルダの地図やホテルの見取り図などの挿し絵、そして物語の時系列表が掲載されています。
幽幻の魔鏡が映し出す艶やかな怪美と畏怖。オリジナル・アンソロジーで再発見。幼少期からの幻惑と、初春から梅雨、夏を経て秋、そして冬へと至る四季の行事情景に沿いながら蒐められた作品群。
前編は「三世」で日系収容を知らない「失われた世代」である三世たちの姿を描き、後編の「多感」ではオースティンの七つの小説の構造を日系社会に落とし込みパロディにした二部構成のこの短編集。ヤマシタは、日系収容という「過去」を確かめつつ「三世」としての自分の立ち位置をどのように描いているのか?マジック・リアリズムの騎手による集団的記憶の軌跡!
文明が引き起こした“大破局”によって、海面が30メートルも上昇。人類間引きプログラムが作動!“日本”と呼ばれた国家は、消滅した。かつて存在した首都の半分を海没させてできた都市国家トキヨを舞台に“SFする思考”が紡ぎだす近未来。
1932年に雑誌Europ¨aische Revueに発表されたユングによる『ユリシーズ』論。訳者二人による解説もつき、ユングとジョイスの関係性が紐解かれる!
父親と二人だけの自由奔放な生活に割り込んできた母親代わりの女性を狡知な計画手段で死に追い遣る17歳の女性の物語は、複雑に揺れ動く途轍もない小説だった!刊行から70年経った今でも読み継がれるテクストを精読して、「悲しみよこんにちは」というタイトルの“ちぐはぐさ”の謎に迫る。
本を読めば、何かが変わるの?本は、どこでだって誰にだって読まれうる。120年前に書かれたコンラッドの“問題作”『闇の奥』を、いま、この日常の喧騒のなかで読んでみる。「ふつうの読書」と「批評」を行ったり来たりして、「読書」という営為について考えてみよう。
現代アイルランドの劇作家たちは、どのようなドラマツルギー(劇作術・演劇観)で歴史や風俗、イェイツ、オケイシーからベケット、マクドナーなど、現代アイルランドを代表する劇作家25人の40作品を紹介・分析する一冊。
私小説的悲愴と空想的跳躍の錬金術的混合物!大正時代から昭和初期にかけて、「小作家」と称された牧野。彼が生み出した結晶のような詩文は、ある種の人の心に深く残り、人生を歪めもすれば救いもした。悲しみと羞恥を引きずりながらも、精いっぱい夢想の中に遊んだ作品群に、耽溺したい!
日常という名の虚偽に人一倍敏感だった坂口安吾は常に自分の現実を物語に変容させた。そう、安吾のファルスは現実を一度完全に解体してナンセンス化し、再構成する知性の働きが秀逸なばかりでなく、不条理でありながら拒絶よりも許容する雅量が光っているのだ。急き立てられるように書き続け、陶酔と分析、あくまで解剖する視線を失わない孤独の深淵を描いた作品群に、耽溺したい!