著者 : 乗代雄介
「なりたい自分だって気がするんだよね、あんたといる時だけ」SNSで知り合ったパパイヤとママイヤは、木更津の小櫃川河口の干潟で待ち合わせをする。流木が折り重なる“木の墓場”で会うようになった二人は、心を通わせていくー奇跡のような一夏を瑞々しい筆致で描く新時代のガールミーツガール小説、誕生!
第166回芥川賞候補作。高校の歴史研究部に所属するぼくは、ある日皆川城址で中年男に出会う。男はぼくが入手した旧家の蔵書目録を奪い取ると、映画監督の縁戚にあたる小津久足の著作を指さし、『皆のあらばしり』などという本はこれまで全く記録されていないと言う。「まだ世に出てないものだってことか」「もしそうなら大発見やのー」男は満面の笑みでぼくの肩に手を置いた。うさん臭さに警戒しつつ、ぼくは男の博識に惹かれていく。幻の書の新発見か、それとも偽書かー。高校生のぼくと怪しい中年男は、「謎の本」の存在を追う。歴史謎解き+スリリングな会話劇+ラストの大逆転。本をめぐる知的愉楽に満ちた三島賞作家受賞第一作。第37回坪田譲治文学賞受賞
「この旅のおかげでわかったの。本当に大切なことを見つけて、それに自分を合わせて生きるのって、すっごく楽しい」サッカー少女と小説家の叔父。ふたりは、利根川沿いに、鹿島アントラーズの本拠地を目指す旅に出る。第164回芥川賞候補作。
現代文学の新星、乗代雄介が15年以上にわたり書き継いだブログを著者自選・全面改稿のうえ書籍化!書き下ろし小説、『虫麻呂雑記』(140枚)を併録。
「生き方の問題」僕は、2歳年上の従姉に長い手紙を送る。幼い頃からの思慕と、1年前の久しぶりの再会について…。「最高の責任」大学の卒業式を前にした私はあるきっかけで、小学生の頃、いまは亡き叔母にもらって書き始めた日記帳をひもとく。日記を通して語られていく、叔母との記憶。野間文芸新人賞受賞の気鋭による傑作青春小説集。
老人ホームに向かう独り身の大叔父に同行しての数時間の旅。大叔父には川端康成からの手紙を持っているという噂があった。同じ車両に乗り合わせた謎の男に、私の心は掻き乱されていく。大変な読書家らしい男にのせられ、大叔父が明かした驚くべき秘密とは。-「本物の読書家」。なりゆきで入った「先生」のゼミで、私は美少女・間村季那と知り合う。サリンジャー、フローベール、宮沢賢治らを巡る先生の文学講義、季那との関係、そして先生には奇妙な噂が…。たくらみに満ちた引用のコラージュとストーリーが交錯する傑作。-「未熟な同感者」。