著者 : 仁嶋いずる
ケイトはこれから2週間、地中海を巡る豪華ヨットに乗船し、アシスタントドクターとして働く予定だ。独りで育てる幼い娘を連れて。娘にあらゆるすばらしいものを見せ、体験させてやりたかった。楽しい旅になると期待に胸を膨らませていた矢先、急患が発生する。すばやく処置を施そうとしたケイトが周囲に協力を頼んだとき、聞き覚えのある声がし、思いも寄らぬ男性が現れたーデヴィッド!いいえ、それは偽名。彼の正体は、さる国の王子ダヴィアン・デ・ロロソ。私に一般人と信じこませたあげく、ある日忽然と姿を消した不実な元恋人。彼がいなくなった直後、身ごもったことに気づいたのだった…。そのことを、娘と同じ黒髪に空色の瞳の彼に秘密にしておけるだろうか?
苦学生の身で妊娠して実家を追い出されたジーナは、今は仕事に就き、太陽のように明るい3歳の息子と平凡ながら幸せに暮らしていた。息子の父親カル・マッケンドリックと出逢い、愛し合った4年前、ジーナは彼の叔母に身分をわきまえて身を引くよう諭され、別れを告げることもなく、彼の前からそっと姿を消した。それなのに今、突然カルが玄関前に現れ、ジーナは卒倒しそうになった。なぜカルがここに?もし親権争いになったりしたら、名門マッケンドリック一族の彼に太刀打ちできるはずがないわ!案の定、自分と同じエメラルド色の瞳の息子を見て、カルが冷たく言った。「どうやら話し合わなきゃいけないことがたくさんありそうだ」
出会ったばかりの男性にボディガードを頼むなんて。アニーは自身の思いがけない行動に驚いていた。悪党に絡まれているところを救ってくれた、ゲイブと名乗る謎めいた放浪者に、ひと目で強烈に惹かれてしまったのだ。その日以来、ゲイブは片時もアニーのそばを離れることなく、ときに厳しく見守り、またときに情熱の炎で包みこんでくれた。じつはアニーは不治の病を患っていた。残された時間はあと僅か。どうか1日でも長く、彼と一緒にいられますように。アニーはまだ知らなかったーゲイブの驚くべき正体も、彼がアニーを救うためにすべてを投げ打とうとしていることも。
「結婚式だけでなく、きみをめちゃくちゃにしに来たんだ」見知らぬ男性がリムジンの後部座席で邪悪な笑みを浮かべた。この世のものとは思えないほど美しい男性の正体は、いま祭壇の前でプリヤを待つ花婿の異母弟、エロースだった。エロースは父親の遺産を総取りしようともくろむ異母兄に対抗し、相続の条件である結婚を壊しに来たのだという。一方、愛する父が遺した会社と従業員を守るために泣く泣く契約結婚をしようとしていたプリヤは、エーゲ海の別荘へと連れ去られてもなお、心のどこかで安堵していた。罪深いほど魅惑的なエロースに、愛なき結婚を迫られるまでは。
ギリシア、イタリア、スペインが生んだ美形ヒーローとの、もどかしい恋物語3選!美しきギリシア人のアレックスと仕事をして2年。美人の恋人がいると噂の世慣れた彼を愛してしまったリースは、大きな決断をしなければならなかった。職を辞し、彼にさよならを告げるのだ。振り向いてくれないのにそばにいるのはつらすぎるから。夜ごと涙で枕を濡らし、いよいよ決心したリースは、最後の仕事へと向かうが…(「愛のシナリオ」(レベッカ・ウインターズ))。失恋旅行でローマへ来たシャーロットがホテルのバーで嘆息していると、魅力的な長身男性が隣に座った。「君、大丈夫?」優しい言葉をかけてきた裕福なイタリア人のルチオに惹かれ、身も心もゆだねるが、眠っている間に彼は忽然と姿を消したー“すてきな夜をありがとう”と書き残して。数週間後、彼女は妊娠に気づき…(「トレヴィの泉に願いを」(ルーシー・ゴードン))。弟が作った借金に頭を抱えるリアの前に、半年だけ恋人だったスペイン人実業家のアレハンドロが現れた。1人の女性と長続きする関係を持てない彼を本気で愛するようになってしまったリアは、ぼろぼろになる前に自ら身を引いたのだった。しかし今、彼は借金を肩代わりする見返りに、またベッドを共にするよう要求してきた!(「情熱の取り引き」(トリッシュ・モーリ))
ミアは仕事の依頼があると言われて、指示された店へ行った。現れたのは見たこともないほど魅力的な億万長者ダミアンだった。彼は安っぽいバッグを抱えたミアを座らせ、いきなり切り出した。「ぼくの恋人として、家族の家へいっしょに行ってほしい」報酬はわたしの年収の10倍?本気なのかしら?けれど同じ部屋に泊まり、同じベッドを使うと聞くと、男性経験のないミアにはとてもできるとは思えなかった。どうしてダミアンは初対面のわたしに恋人のふりをさせたがるの?「ほかの誰かじゃない、きみがほしい」と情熱的な目で。-ヒロインに“恋人”という仕事を依頼するヒーロー。人目に触れるようにおしゃれしてデートしたり、彼の家に泊まったりするうち、ヒロインは偽りの恋に夢中になってしまい。週末が終われば、魔法が解けたシンデレラみたいに貧しい自分に戻ると知りつつも。
なんて美しく、なんて悲しげなたたずまいだろう。雪が降りしきる中、ウエイトレスのオーレリーは、琥珀色の瞳をした長身のたくましい男性に目を引かれた。寒夜をしのぐ宿もないらしい彼を放っておけず、家に招く。出逢ったばかりなのに、たちまち彼に惹かれ、一夜で終わると知りながら、情熱の夜を過ごした翌朝、彼は姿を消していたー彼女のおなかに命を宿して。ルシアンという名を頼りに調べると、素性はすぐに判明、なんと隣国バロルトの王だった!オーレリーが宮殿に赴くと、ルシアンは結婚式のリハーサルの真っ最中だった…。
15歳のその日まで、アルティは城に住む幸せな少女だった。だが悲劇的な事故で母を亡くしたことがトラウマとなって以来、人に会うことも、城の外に出ることもできなくなってしまった。10年後ー。城は朽ちかけ、財産も底をついたが、美しい女性に成長したアルティは、世界を知らないままだった。そんなとき、若きイタリア人富豪ルカ・フェランテッリが現れ、城を買い上げたから出ていくように、とアルティに告げたのだ。そんな…わたしはこの城を、出たくても出られないのに。青ざめる彼女にルカは続けた。「いやなら、僕の妻になるんだ」
亡き友人の遺児を迫りくる危険から守るため、ミネルバはとっさの思いつきを口に出した。赤ん坊の父親は兄の親友ダンテ、大富豪のイタリア人だと。優秀な美男美女ぞろいの家族の中で唯一冴えないわたしを、ダンテは何かと気にかけてくれたーたとえ哀れみゆえにしても。今は彼の誇る財力と権力にすがるしかないわ…。身に何の覚えもないダンテはミネルバの爆弾発言に激怒したが、彼女の事情を知るやいなや即座に驚くべきことを言い放った。「選択肢は一つしかない。ぼくと結婚するんだ!」
フラックストーン伯爵の下で不動産管理の仕事をしているトリは、伯爵が新たに入手した地所の下見に赴いた。あろうことか、伯爵の息子であるジャスパーと共に。5年前、プレイボーイの子爵として名をはせていた彼に誘惑され、トリはなすすべもなく一夜を共にしてしまった。そのあとすぐジャスパーはトリを捨ててアメリカに渡ったが、伯爵家の跡継ぎとなるべく先日イギリスに戻ってきたのだ。たとえ彼がまた甘い言葉をささやいても、二度と心を動かされないわ!そう決意していたトリだったが、下見の帰り道、激しい雪に襲われ、やむなく最寄りのホテルに泊まらざるを得なくなり…。
十代の頃から病弱な母の介護に明け暮れたウエイトレスのメリリー。気づけば同世代の皆が恋に結婚にと忙しい中、いまだ男性経験すらない。メリリーは意を決し、前から気になっていたセクシーな客ブリックに“初めての相手”を頼む。すると彼は一晩考えた末…(『ヴァージン卒業宣言』)。アンジェリーナは天涯孤独の身となり、寄宿学校へと送られて教育を受けた。アレクサンダー・セントクレアー第9代スタワーブリッジ公爵の計らいのおかげだ。3年後、彼女はロンドン随一の高級住宅街にある公爵の屋敷を訪れた。恩に報いて身を捧げるために(『身も心も』)。ガートルードは修道院から海賊船へ差し出された。船長の求める役目を果たすために。湯浴み中の船長に裸を誇示され、彼女は叫んだ。「ああ、神様!」船長が不敵に告げる。「海賊は奪う。持ち腐れの宝を狙う。優秀な海賊は、何一つ返さないーおまえを帰さない」(『海賊に贈られた花嫁』)。古代ローマ時代ー奴隷小屋で競りに出された私は、堂々たる体躯の裕福な商人に買われ、彼の屋敷で働くことになった。夜、ご主人様が私の粗末な寝床に現れ、容赦ない歓びを与えてくださった。そこから、奴隷としての“お勤め”を待ちわびる日々が始まったー(『過激な寵愛』)。
「赤ちゃんができたみたい。3カ月よ。病院でそう言われたわ」ビッキーは2カ月前から別居している夫ケイレブに、そう告げた。もちろん子どもが生まれるのは喜ばしいけれど、心は晴れなかった。厳しい祖母の影響で、彼女は結婚後も寝室で思うままにふるまえず、それが原因で夫は出張中に秘書と浮気をしたと思っているのだ。離婚も考えているさなか、まさかこんなことになるなんて。妊娠を機にひさびさに帰宅したケイレブと過ごす夜ー私の彼を愛する気持ちにうそ偽りはない。それが今夜、伝われば…。緊張しつつ彼の腕に包まれたビッキーはそう願ったが、思わず身をこわばらせた瞬間、夫は寝室を出ていってしまった!
テキサスの名家に生まれながらも内気で、息をひそめるように生きてきたベス。ある日父が投資に失敗し、すべてを失ってしまう。打ちのめされる彼女を支えたのは、年上の牧場経営者ケイドだった。3年前、彼に想いを告げたものの“きみを女として見ることはない”と拒絶され、初恋は苦い終わりを迎えていた。断ち切ることができない想いを抱えたまま彼との距離は縮まるも、運命は残酷で…。幻の未邦訳作品。
ふわふわの新雪、輝くショーウインドウー美しい冬のNYで、恋人もいないエヴァは仕事づけの毎日。イベント企画に携わる彼女への今日の依頼は、著名作家である大富豪の自宅にサプライズを仕掛けるというものだ。豪奢なペントハウスにエヴァが圧倒されていると、突然後ろから羽交い締めにされる。不在のはずの家主ルーカスに、泥棒と間違われたのだ。ハンサムな顔を不機嫌そうにゆがめる彼にエヴァはひるむが、一方のルーカスは、彼女を見て創作意欲がわき、しばらくそばに置こうと思い立つ。1カ月限りの同居生活の行方は…?
アイルランドの懐かしい古城で、キアラはトムと再会した。十代のころ、夏の休暇のたびにこの城に仕える祖父母のもとを訪れ、キアラは当主である公爵の子息トムと愛し合うようになった。だが、互いにまだ18歳、主従の子同士の恋が祝福されるはずもなく、妊娠、流産と数々の誤解を経て、二人は引き裂かれたのだった。今、城の庭師として働くキアラは、近ごろ公爵位を継いだトムから、城と庭を売却すると聞かされる。あの日以来この地に寄りつかず、実業家としても大成功している彼には、思い入れなどないのだろう。そして、キアラが思い出に胸を震わせようと、身分違いは昔のままーところが翌日、大雪が城を襲う。二人きりで閉じこめられて…。
手元の食料はしわしわのじゃがいもだけ。赤ん坊のミルクもあと少し。クレアは妹の遺児を引き取って育てていたが、限界が近づいていた。仕事も辞めている今、もう赤ん坊の父親にすがるしかない。しかし、最後の頼みの綱だった富豪パトリックは、妹との関係を否定した。クレアはタクシー代を渡され、けんもほろろに追い払われてしまう。万策尽きて途方にくれていると、今度はパトリックが彼女を訪ねてきた。「赤ん坊は亡き兄の子だと思うから、いっしょに育てたい」と言って。ほほえむ彼を、クレアは出会った中でいちばんすてきな男性だと思った。でも子どもを育てるなら、パトリックに恋をして関係を複雑にはできない。裕福な彼は貧しいわたしを哀れんでいるだけ。誤解してはだめよ…。
冷たい親に育てられた18歳のヘイリーにとって、恋人マックが心の支え。だがドライブ中に不幸な事故が起き、マックだけが重傷を負ってしまう。彼の家族から面会すら拒絶され、失意のヘイリーは彼に別れを告げることなく故郷を去った。それから10年後ー(『初恋を取り戻して』)。18歳のシルヴィは、外国から帰国中の伯爵クリスチャンと出会って恋に落ち、身も心も捧げた。遠方へ戻っていった彼からの連絡を待ったが、手紙1通届かない。気づけば、お腹の中で彼の子が育っていた…。月日は流れ、いま再び、目の前にクリスチャンが現れる(『伯爵との消えない初恋』)。女手一つで育ててくれた母を病で亡くしたセイディ。数カ月前に引っ越してきた彼女は、隣に住む魅力的な独身貴族のバックに想いを寄せているが、彼にパーティへ誘われても、内気なためにいつも断っていた。だがあるとき、とうとうバックと二人きりになり…(『セクシーな隣人』)。天涯孤独のベアトリスは手紙で弁護士事務所に呼びだされた。そこにいたのは、さる国の次期君主タリク。弟と別れてほしいと多額の手切れ金を提示され、寝耳に水の話に驚く。人違いよ、彼の弟なんて知らないもの。ベアトリスは小切手を拒んだが…(『シークと乙女』)。
テキサスに暮らすケイトは、隣に住む牧場主ジェイソンに憧れていた。ジェイソンはケイトより10歳も年上で、気性の荒さから誰もに恐れられる男。そのうえ根っからの女嫌いだが、なぜかケイトにだけは兄のように親しく接してくれるのだった。そんなある嵐の日、二人はふとしたきっかけでキスを交わしてしまう。もしかしたら彼も、妹以上に見てくれているのだろうか…ほのかな期待に夢見心地のケイトだったが、やがて突きつけられたジェイソンの冷たい言葉に打ちのめされたー君と真剣な関係を結ぶつもりはない、この先ずっと。
出逢ったばかりなのに、どうしてこんなに目が離せないのかしら。アニーは、唇を噛みしめ、こらえきれず胸をかき抱いた。不良少年に絡まれているところを助けてくれたとはいえ、ゲイブという名以外、素性もわからぬ謎の放浪者だというのに。その日以来、彼もまた片時すらアニーから離れようとしないのだ。誰にも打ち明けていないが、アニーは不治の病を患っていた。人知れず命の幕を閉じるつもりでいたが、ある日気づいてしまう。彼は私の魂の片割れだと。人生が終わる間際に出逢うなんてー運命の皮肉さに、胸の奥の、さらに奥深いところで心が痛んだ。
アイヴォリーは貧しい家庭で、身勝手な母に虐げられて育った。二十歳になったのを機に、母を振り切って都会へ出てきて以来、デサイナーを夢見て下積みしながら、母の要求で仕送りもしている。仕事が地味なうえに、なかなか認めてもらえずにいたある日、アイヴォリーは自作のドレスをまとって会社のパーティに出席した。すると、それが富豪社長カリーの目にとまり、彼女は胸を高鳴らせた。凄腕と名高い彼に認められるなんて、まるで夢みたい…。そしてカリーもまた、些細なことにも感激して涙する姿に惹かれ、彼女の純潔を奪った。だが、アイヴォリーの幸せは長くは続かなかった。カリーに存在をひた隠しにしてきた、母という名の悪夢のせいでー大スター作家が、1990年代にダイアナ・ブレイン名義で発表した物語の初邦訳。とても優しい心根の苦労人アイヴォリーが、思わぬ展開により、カリーからの寵愛はやがて、猛烈な怒りとなって彼女の心を突き刺し…。