小説むすび | 著者 : 伊集院静

著者 : 伊集院静

親方と神様親方と神様

鋼と火だけを相手に、人生の大半を過ごしてきた鍛冶職人の前に現れたのは、澄んだ瞳をした12歳の少年だった。 少年は、鍛冶屋になりたいから、仕事を見学させてほしいと言う。年老いた職人は少年のその純粋でひたむきな姿に心が動き見学を許した。 少年は、毎日訪れるようになり、職人も鍛冶のことを話してやり、二人は心を通わせていった。 職人は、少年が鍛冶屋になりたいというのは、子どもの気まぐれだと思っていた。 後日、少年の母親が訪れた。要件は、少年が中学校にいかずに鍛冶職人の修行をしたいと言い出したので断ってくれということだった。 しかたなく承諾した職人だったが、自分は口べたなので、少年に話して説得できる自信がなかった。話せば話すほど、少年は自分に裏切られたと思うに違いない。 職人は考えた末、自分が親方から聞いたことを、当時と同じように山へ出かけて、少年に話してみることにした。 山を歩きながら、彼は鍛冶がいかに素晴らしい仕事であるかを少年に話した。 それは、説得とはまったく逆の話だったが……。 年老いた鍛冶職人は少年を、いかに育てたのか? 子育てとは。人育てとは? 伊集院 静が贈る珠玉の短編小説!

ノボさん(下) 小説 正岡子規と夏目漱石ノボさん(下) 小説 正岡子規と夏目漱石

子規は、今も私たち日本人の青空を疾走している。 小説家・伊集院静がデビュー前から温めてきた、正岡子規の青春。 俳句、短歌、小説、随筆……日本の新たなる文芸は、子規と漱石の奇跡の出逢いから始まった! 偉大な二人の熱い友情を描いた感動作! <内容紹介> 心血を注いだ小説の道を断念した子規は帝大も退学し、陸羯南が経営する日本新聞社に入社する。母と妹の献身的な世話を受け、カリエスの痛みをおして俳句をはじめとする文芸の革新に取り組む子規を多くの友が訪れ、「ホトヽギス」も創刊されるが、漱石はイギリスへと旅立っていく……。司馬遼太郎賞受賞作。 「子規が語られるとき、どうしても近代文学史に刻まれたおびただしい業績を中心にスーパーマンのような偉人として描かれがちだが、本書を読むと、等身大の人間正岡子規としての「ノボさん」がくっきりと立ち上がって、読者に向かって微笑んでくるのだ。ページを手繰るうちにわれわれも、「ノボさん」の友人の一人のようになり、飾らぬ伊予弁の口調になごみながら、誠実でひたむきな人柄にほだされていく。」 ーー清水良典「解説」より

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