著者 : 内田康夫
帝の名代として伊勢神宮に仕えた皇女たちの生涯は、儚い哀しみの歴史に包まれている。その斎王伝説を題材に、滋賀県土山町で映画のロケが行われていた。ところが現場付近のダムで、男性の水死体が発見され、容疑がロケ隊のメンバーにかかってしまう。監督の白井は高校時代の旧友、浅見光彦に嫌疑を晴らして欲しいと依頼するが、その直後に第二の殺人が発生した。真相を追う浅見は、やがて三十四年前の皇太子御成婚前夜に起きた惨劇に辿りつくー。
都内の一流ホテルで、不動産ブローカーを営む男が殺された。だが、現場に手がかりはなく、はやくも捜査は難航していた。ニュースで事件を知った浅見光彦は母・雪江に相談を持ちかけられる。旅行帰りに被害者を目撃したらしいのだ。その際に、男は携帯電話で「アサヒのことはよろしく」と大声で頼んでいたという。「アサヒ」とは何か!?浅見は事件解決のために、死者が遺したメッセージの真相を追うのだが…。名古屋、北陸、そして東北へー。名探偵浅見光彦の推理が冴える長編旅情ミステリー。
浅見家では正月にカルタ会が催される。その席で浅見光彦はカルタ界の女王朝倉理絵に辛勝した。勝敗を分けたのは理絵が執着した一枚の札。理由は彼女の父親が三年前に“末の松山”の松の下で殺されたからだった。しかも事件は未解決のままで、父の手帳に書き込まれた「白浪、松山を越ゆ」が唯一の手がかりだという。真相を追って浅見は宮城県へ赴くが、そこでは十二年前にも歌枕にまつわる殺人事件が発生していた。古歌に封印された謎を手操って名探偵浅見光彦がふたつの難事件に挑む。旅情ミステリー。
「警察は自殺だと言ってます。でも、私は自殺だなんて信じてません」福島県喜多方で排ガス自殺と断定された父の死因を承服できない清野翠。翠の父の友人であった「歴史と旅」藤田編集長の依頼をうけて浅見光彦は、彼女とともに残された“透明な遺書”をよりどころに、正々堂々、喜多方にむかうのだが。
父親の死をきっかけに、絵里は老舗の呉服店を畳み、軽井沢でペンションを始めた。幼い頃からの夢を散りばめた、「アリスの館」の経営は、画家である夫の力を借りなくても順風満帆だった。二年目の春。絵里は頼りない夫を後目に、地元の経理士と恋仲になった。ところが、逢瀬を終えた夜、経理士が殺害され、その日を境に気弱な夫の態度が豹変していくー。(アリスの騎士(ナイト))4人の女性が避暑地で体験する危健なロマネスク・ミステリー。
内田家の墓前に供えられた心当りのない花。不審に思うセンセだが、浅見は隣の財田家から移しかえられたものと推理した。ところが、その約1ヵ月後、財田家の当主であるゼット精工社長・財田啓伍氏が何者かに殺された。奇妙なことに現場のテーブルにあったコーヒーカップから検出されたのは、3年前に自殺した財田氏の長女・芙美子の指紋だったー。名探偵・浅見光彦と軽井沢のセンセが、殺人事件の謎を追う。
株式会社ユーキの宝石鑑定士・伊藤木綿子のところへ専属デザイナー・白木美奈子が相談を持ちかけてきた。彼女がデザインした宝飾品に粗悪な石が混在していたらしい。しかも美奈子は木綿子の恋人塩野満の素姓まで訊ねてきた。塩野と美奈子の関係は。木綿子の胸に一抹の不安が…。数日後、美奈子が死体となって発見され、塩野も事件発生の翌日、木綿子に連絡を残して、消息を絶った。日蓮聖人のルポを依頼され、山梨県を訪れていた浅見光彦はこの怪事件に深く関わることにー。
「日蓮の生まれ給いしこの御堂」木綿子の恋人塩野が残した謎の伝言。真相を追って浅見光彦は聖人ゆかりの地を訪れるが、重要な手がかりは得られない。ところが、その浅見に怪しげな人物がつきまとい、さらに木綿子の父親も「イトウのお寺には行ったのか」という言葉を遺して、突然の死を遂げた。果して犯人の目的は、消息を絶った塩野の行方は。そして日蓮聖人生誕に隠された秘密とは。名探偵浅見光彦さえも窮地に追いこむ驚愕の真相。伝説シリーズ超大作、待望の文庫化。
豪華フェリー「しーふらわー号」から転落行方不明になった男と現場にいた謎の男。二年後、その謎の男が自殺をとげた事が航海士・堀ノ内に不審をいだかせた。彼は親友で名探偵として活躍している浅見光彦にこの二つの事件を相談した。事件の鍵が高知の平家落人の里にあると突きとめ高知の「隠れ里」に向かった浅見の前に現われた美少女・佐和。彼女に魅せられ恋心を感じる浅見。だがその佐和にも恐怖の魔手が…。浅見の恋と名推理。
浅見光彦の遠縁の大学生・緒方聡が女子高生誘拐の嫌疑をかけられた。何でも一目惚れして、のこのこと家まで後をつけていたらしい。あきれる浅見ではあったが、聡の濡れ衣を晴らそうと、行方不明になった浜田文絵の家を訪れる。そこに届けられていた一通の脅迫状。文面には文絵の出生の秘密をばらすといった内容が…。文絵は人気俳優・三神洋と「宝塚」出身の女優・鳥越美春との十七年前の秘めやかな愛の結晶だったのだ。数日後、文絵が遺体で発見された。浅見は悲劇の真相を追って、乙女の都「宝塚」へと向かう。
信州毎朝新聞・牧田の絞殺死体が水内ダムで発見され、部下の中島が疑われた。だが恵那山トンネル、長楽寺、寝覚の床でも次々と絞殺死体が発見され、それが長野県歌「信濃の国」に歌われる名勝であることに、中島の妻・洋子は気が付いたが…。信濃のコロンボ、こと竹村警部登場の長編傑作旅情ミステリー。
浅見光彦は、ひょんなことから母・雪江の三州への旅のお供を命じられた。道中「殉国の七士の墓」に立ち寄ったふたりは、おかしなことをいう愛国老人に出会う。ところが、翌朝、その老人の死体が蒲郡の海岸で発見される。死亡状況からすると、何者かに断崖から突き落とされたらしい。が、そのあたりには人が転落しそうな場所はない。三河湾をはさんだ伊良湖岬から死体が流れ着いたのだろうか。警察から嫌疑をかけられた浅見母子は事件の解決に全力を注ぐが…。長編旅情ミステリー。
信濃追分で“かわいい魔女”を売る土産物店「ひいらぎ」。ある冬の夜、店の前で見知らぬ男が死んでいた。一人暮らしの女主人一枝にはまったく見覚えのない顔。信濃のコロンボこと竹村警部が捜査に乗り出した。一方そのころ、東京、本郷の「八百屋お七の墓」でも男の変死体が発見される。本郷はかつて本郷追分といわれたという。こちらでは、警視庁の切れ者岡部警部が捜査を開始した。二つの「追分」の事件に、二人の“名探偵”が挑む。そして、謎は北海道にまでおよぶ…。